法律の周辺

核心ではなく, あくまでも物事の周辺を気楽に散策するブログです。

取締役会非設置会社における代表取締役の選定について

2006-06-10 18:48:05 | Weblog
 設立時代表取締役の選定方法については,取締役会設置会社に関する会社法第47条第1項はあるが,取締役会非設置会社に関するものはない。
設立時代表取締役は,第39条第3項の括弧書きを見ての通り,「設立時役員等」には含まれない。よって,会社法第40条第1項を根拠に,その選定を発起人の権限とするのは無理がある。
また,会社法第349条第3項は,会社が成立していることを前提とした規定であるから,これを選定方法の根拠とするのも難しい。

 さて,取締役会非設置会社における設立時代表取締役の選定方法やいかにということになるが,ここは,設立時代表取締役の選定を会社の設立を目的とした発起人組合の業務執行の1つとみて,発起人の過半数の一致によっておこなう,とするのが無理のない解釈のように思われる(民法第670条第1項参照)。
発起人の全員の一致を要する事項については,会社法第32条第1項が限定列挙している。本論点に関し全員一致を要求しなければならない理由はないように思われる。

 なお,この取締役会非設置会社の設立時代表取締役の選定については,従来から,定款で選定すべき,などと言われていた(会社法第29条参照)。
定款は,ご存じのとおり,発起人が作成し,全員が署名又は記名押印する(会社法第26条第1項)。その定款で直接設立時代表取締役を定めた場合,その実質は,「発起人の全員一致による選定」ということになる。葵の御紋よろしく,「定款だから可」というわけではないように思われる。この事情,選定方法を定めるにとどまる場合でも,選定の源泉に発起人の意思があるという意味で,変わるところはない。

 実は,最近,知り合いから,冒頭の論点に関し,発起人による選定を可能とする解説が当局(?)からされているとの話しを聞いた。詳細は分からないが,結論自体はもっともだと思う。

なになに,「後出しジャンケン」? 何と失礼な。まぁ,今日のところは,そのご批判,甘んじて受けておきましょう ^^; 。


会社法の関連条文

第三十九条 設立しようとする株式会社が取締役会設置会社である場合には,設立時取締役は,三人以上でなければならない。
2 設立しようとする株式会社が監査役会設置会社である場合には,設立時監査役は,三人以上でなければならない。
3 第三百三十一条第一項(第三百三十五条第一項において準用する場合を含む。),第三百三十三条第一項若しくは第三項又は第三百三十七条第一項若しくは第三項の規定により成立後の株式会社の取締役,会計参与,監査役又は会計監査人となることができない者は,それぞれ設立時取締役,設立時会計参与,設立時監査役又は設立時会計監査人(以下この節において「設立時役員等」という。)となることができない。

(設立時役員等の選任の方法)
第四十条 設立時役員等の選任は,発起人の議決権の過半数をもって決定する。
2 前項の場合には,発起人は,出資の履行をした設立時発行株式一株につき一個の議決権を有する。ただし,単元株式数を定款で定めている場合には,一単元の設立時発行株式につき一個の議決権を有する。
3 前項の規定にかかわらず,設立しようとする株式会社が種類株式発行会社である場合において,取締役の全部又は一部の選任について議決権を行使することができないものと定められた種類の設立時発行株式を発行するときは,当該種類の設立時発行株式については,発起人は,当該取締役となる設立時取締役の選任についての議決権を行使することができない。
4 前項の規定は,設立時会計参与,設立時監査役及び設立時会計監査人の選任について準用する。

(設立時代表取締役の選定等)
第四十七条 設立時取締役は,設立しようとする株式会社が取締役会設置会社(委員会設置会社を除く。)である場合には,設立時取締役の中から株式会社の設立に際して代表取締役(株式会社を代表する取締役をいう。以下同じ。)となる者(以下「設立時代表取締役」という。)を選定しなければならない。
2 設立時取締役は,株式会社の成立の時までの間,設立時代表取締役を解職することができる。
3 前二項の規定による設立時代表取締役の選定及び解職は,設立時取締役の過半数をもって決定する。

(株式会社の代表)
第三百四十九条 取締役は,株式会社を代表する。ただし,他に代表取締役その他株式会社を代表する者を定めた場合は,この限りでない。
2 前項本文の取締役が二人以上ある場合には,取締役は,各自,株式会社を代表する。
3 株式会社(取締役会設置会社を除く。)は,定款,定款の定めに基づく取締役の互選又は株主総会の決議によって,取締役の中から代表取締役を定めることができる。
4 代表取締役は,株式会社の業務に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する。
5 前項の権限に加えた制限は,善意の第三者に対抗することができない。

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会計監査人の不再任について

2006-06-10 12:24:21 | Weblog
中央青山監査法人:契約打ち切り61社 イメージ悪化で MSN毎日インタラクティブ

 新旧いずれの規律にしたがうにせよ(整備法第90条参照),会計監査人を再任しない場合,当該議案の株主総会提出には,実質的に,監査役の過半数の同意が必要になる(会社法第344条第1項,商特法第5条の2第3項,同第3条第2項)。
監査役には,直接経営に携わる取締役,執行役等のイメージ戦略とは別の観点からの独自の判断が求められているように思われる。端に「お墨付き」を与える機関にとどまっていては,存在価値が疑われる。

それにしても,「中央青山を残しながら,新たに会計監査人を選任」という選択,いかにも煮え切らないという印象。「共同監査」の意味するところも,はっきりしない。


「株式会社の監査等に関する商法の特例に関する法律」の関連条文

(会計監査人の選任)
第三条  会計監査人は,株主総会において選任する。
2  取締役は,会計監査人の選任に関する議案を株主総会に提出するには,監査役会の同意を得なければならない。
3  監査役会は,その決議をもつて,取締役に対し,会計監査人の選任を株主総会の会議の目的とすることを請求することができる。会計監査人の選任に関する議案の提出についても,同様とする。
4  大会社の設立の場合(第六項から第八項までに規定する場合を除く。)においては,会計監査人は,発起人が大会社の設立に際して発行する株式の総数を引き受けたときは発起人が,その他のときは創立総会において,選任する。
5  商法第百七十条第三項 の規定は,前項の規定により発起人が会計監査人を選任する場合について準用する。
6  合併によつて大会社を設立する場合においては,合併契約書に合併によつて設立する大会社の会計監査人の氏名又は名称を記載しなければならない。
7  株式移転によつて大会社を設立する場合においては,設立する完全親会社の会計監査人の氏名又は名称について商法第三百六十五条第一項 の株主総会の承認を受けなければならない。
8  新設分割によつて大会社を設立する場合においては,分割計画書に分割によつて設立する大会社の会計監査人の氏名又は名称を記載しなければならない。

(会計監査人の任期)
第五条の二  会計監査人の任期は,就任後一年以内の最終の決算期に関する定時総会の終結の時までとする。
2  会計監査人は,前項の定時総会において別段の決議がされなかつたときは,その総会において再任されたものとみなす。
3  第三条第二項及び第三項前段の規定は,会計監査人を再任しないことを株主総会の会議の目的とする場合について準用する。

(監査役会の決議方法等)
第十八条の三  監査役会の決議は,監査役の過半数をもつて行う。ただし,第六条の二第一項の決議及び第十九条第一項の規定により読み替えて適用する商法第二百六十六条第九項 (同条第十三項 及び第二十一項 並びに第二百六十八条第八項 において準用する場合を含む。)の同意に係る決議は,監査役の全員一致をもつて行う。
2  商法第二百五十九条第一項 本文,第二百五十九条ノ二,第二百五十九条ノ三及び第二百六十条ノ四の規定は,監査役会について準用する。この場合において,同法第二百五十九条第一項 本文中「各取締役」とあるのは「各監査役」と,同法第二百五十九条ノ二 中「各取締役及各監査役」とあるのは「各監査役」と,同法第二百五十九条ノ三 及び第二百六十条ノ四第三項 中「取締役及監査役」とあるのは「監査役」と読み替えるものとする。

会社法の関連条文

(会計監査人の選任に関する監査役の同意等)
第三百四十四条 監査役設置会社においては,取締役は,次に掲げる行為をするには,監査役(監査役が二人以上ある場合にあっては,その過半数)の同意を得なければならない。
一 会計監査人の選任に関する議案を株主総会に提出すること。
二 会計監査人の解任を株主総会の目的とすること。
三 会計監査人を再任しないことを株主総会の目的とすること。
2 監査役は,取締役に対し,次に掲げる行為をすることを請求することができる。
一 会計監査人の選任に関する議案を株主総会に提出すること。
二 会計監査人の選任又は解任を株主総会の目的とすること。
三 会計監査人を再任しないことを株主総会の目的とすること。
3 監査役会設置会社における前二項の規定の適用については,第一項中「監査役(監査役が二人以上ある場合にあっては,その過半数)」とあり,及び前項中「監査役」とあるのは,「監査役会」とする。

(監査役会の決議)
第三百九十三条 監査役会の決議は,監査役の過半数をもって行う。
2 監査役会の議事については,法務省令で定めるところにより,議事録を作成し,議事録が書面をもって作成されているときは,出席した監査役は,これに署名し,又は記名押印しなければならない。
3 前項の議事録が電磁的記録をもって作成されている場合における当該電磁的記録に記録された事項については,法務省令で定める署名又は記名押印に代わる措置をとらなければならない。
4 監査役会の決議に参加した監査役であって第二項の議事録に異議をとどめないものは,その決議に賛成したものと推定する。

(会計監査人の権限等)
第三百九十六条 会計監査人は,次章の定めるところにより,株式会社の計算書類及びその附属明細書,臨時計算書類並びに連結計算書類を監査する。この場合において,会計監査人は,法務省令で定めるところにより,会計監査報告を作成しなければならない。
2 会計監査人は,いつでも,次に掲げるものの閲覧及び謄写をし,又は取締役及び会計参与並びに支配人その他の使用人に対し,会計に関する報告を求めることができる。
一 会計帳簿又はこれに関する資料が書面をもって作成されているときは,当該書面
二 会計帳簿又はこれに関する資料が電磁的記録をもって作成されているときは,当該電磁的記録に記録された事項を法務省令で定める方法により表示したもの
3 会計監査人は,その職務を行うため必要があるときは,会計監査人設置会社の子会社に対して会計に関する報告を求め,又は会計監査人設置会社若しくはその子会社の業務及び財産の状況の調査をすることができる。
4 前項の子会社は,正当な理由があるときは,同項の報告又は調査を拒むことができる。
5 会計監査人は,その職務を行うに当たっては,次のいずれかに該当する者を使用してはならない。
一 第三百三十七条第三項第一号又は第二号に掲げる者
二 会計監査人設置会社又はその子会社の取締役,会計参与,監査役若しくは執行役又は支配人その他の使用人である者
三 会計監査人設置会社又はその子会社から公認会計士又は監査法人の業務以外の業務により継続的な報酬を受けている者
6 委員会設置会社における第二項の規定の適用については,同項中「取締役」とあるのは,「執行役,取締役」とする。

会社法施行規則の関連条文

第百十条  法第三百九十六条第一項後段の規定により法務省令で定める事項については,この条の定めるところによる。
2  会計監査人は,その職務を適切に遂行するため,次に掲げる者との意思疎通を図り,情報の収集及び監査の環境の整備に努めなければならない。ただし,会計監査人が公正不偏の態度及び独立の立場を保持することができなくなるおそれのある関係の創設及び維持を認めるものと解してはならない。
一  当該株式会社の取締役,会計参与及び使用人
二  当該株式会社の子会社の取締役,会計参与,執行役,業務を執行する社員,法第五百九十八条第一項の職務を行うべき者その他これらの者に相当する者及び使用人
三  その他会計監査人が適切に職務を遂行するに当たり意思疎通を図るべき者

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