まなびの途中

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自宅で最期を看取ってください、という国の方針

2006年10月25日 | 社会的全般
未だに、頭の回転がもどりません。
まとまりの無い文章になるのが、辛い。

「週刊 東洋経済」が、医療について特集を組む。
特別価格。670円だ。
現在の医療の問題、病巣に目を当てる、というのが主眼だが、
「稼ぐ病院ランキング ベスト100法人」というキャッチも踊っていて、
何を特集しているのか、問題意識を疑うが、
売らなくてはならない雑誌の使命なんだろうな、と思うことにした。

それぞれのテーマに沿った記事が組まれているが、
サブキャッチをあげただけでも、深刻さがうかがわれる。
「深刻な医師不足 手術室は鉄火場」
「急性期、慢性期とも在院日数短縮の狂想曲」
「働き詰めでヘトヘト 勤務医の過半は危険水域」
「看護婦 引抜が横行 支度金100万円の噂も」
「看護婦 激務と責任の板ばさみ 新人の離職率は2ケタ目前」
「夜勤加算の廃止の落とし穴 小規模病院はいらない?」
「厚労省の削減方針で2000病院が淘汰も」
「膨らむ赤字、医師不足 八方塞がりの自治体病院」

「医療から介護へ民族大移動 待つのは天国か地獄か」

1961年にスタートした「国民皆保険制度」。
73年に老人医療費が無料になった時点で、国民所得に対する割合は、
4.12% 約4兆円であった。

現在は、所得に対して、8.89% 32兆1111億円。
2025年には、その額、56兆円に膨れると見ている。

まず大鉈を振るわれたのは、患者の「在院日数」。
国としては、病後初期に集中的な看護を施すことで、「入院日数」を減らす。
ために、患者1.4人に対して看護師1人に、最大限の「点数」をつけた。
(算出ルールの変更により、今は「7対1」と呼び、患者7人に対して1人)。
現在、看護師に対する需要131.4万人に対して、供給は127.2万人。
4.2万人が不足。

何が問題化というと、この改正によって、病床を持つ病院の経営が、
破綻に追い込まれる可能性が出てきた。ということである。
看護師の獲得が間に合わない場合、同じ治療でも1.5倍の格差がつく。

開設主体別医療機関。
総数は、107.419機関。
そのうち、病院(20床以上が病院)は、9014。
有床診療所は、13.719。
入院が可能な「施設」は、2割。

繰り返すが、「医師会」側の「圧力」も歴史的にある。
病床を持たない「診療所」は、同じ病気で通院した場合、
病院に比べて、約3.5倍もの「医療費格差」を享受している。
200床以上の病院では、患者負担が(再診の場合)420円に対し、
診療所では(再診の場合)1450円。
これを推し進めたのは、医師会だ。

医療職が隅々まで機能分化しているアメリカと違い、日本の医師は
診察し、注射し、手術し、呼ばれれば救急医療もする。さらに回診もする。
バーンアウトした「勤務医」は、開業に向かう。
町の診療所が年に「900ヶ所」も増えているのは、このせいだ。

そして安倍首相の「美しい国へ」や「厚生労働白書2006年版」に書かれている
昭和30年代に下町の暮らし。
「温かな近所付き合いが息づく古きよき時代」を解説。
どうやら、政府は本気で、
「公的医療・介護費・生活保護費を削減しつつ、福祉サービスを地域コミュニティー
 に肩代わりしてもらおう」
と考えているらしい。

現に、長期リハビリ、生命の危機が去った患者を、直ちに「退院」させ、
自宅療養させなければ、病院の収入が減じる。
介護型療養病床は2012年の廃止。
全38万床を2012年には15万床にすることが決まっている。
さらに、「在宅で最期を看取った医療機関に、破格の1万点」を与える!

現行の国民健康保険は、「相互扶助」の助け合いの制度ではなく、
「社会保障」として、国がすべての国民に医療を保証するための制度である。
それを「自立支援」とか「相互扶助」とか、きれいな文言で言うこと自体、
社会保障の「放棄」ととられても、不思議ではない。

最近、保険証を取り上げられる方が多くなってきた。
いわゆる「資格証明書」の交付を持って、保険未払い者を排除するシステム。
厚労省は資格証明書の交付に当たり、保険証を取り上げてはいけない
「特別の事情」を自ら規定している。

「世帯主またはその者と生計を一にする親族が病気にかかり、または負傷したこと」
「世帯主がその事業を廃止し、または休止したこと」

年齢別1人当たりの医療費をみても、
「世帯がある家族」が、国に高負担をかけているとは思わない。
この層を、機械的に見捨てる意味が、よくわからない。
たとえ、滞納していたとしても、「元気」になることを、なって、支払いが
再開できることのほうが、本来の国にとって、望ましい姿のではないか。

最期にGDPに占める医療費全体の割合は(2003年)
アメリカ 15.3%
ドイツ  10.9%
フランス 10.4%
日本    8.0%
イギリス  7.9%

人口1000人当たりの医師数(2004年)
フランス 3.4人
ドイツ  3.4人
アメリカ 2.4人
イギリス 2.3人
日本   2.0人