まなびの途中

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「所有と国家のゆくえ」 でこういうことを考えました

2006年10月03日 | 本・映画
考えてみると、世の中で、大きく論議されていること。
どっちが合っているか、間違っているか、そういう報道が目に付くことがある。
確かに、決まっていることがあって、「違反」した場合においては、
そうあるべきだし、異論はない。

最近、国旗・国歌の強制問題が論議されているが、
よく読むと、「国家」に対しての「認識」が、どうも違っている。

一方では、国家とは、権力システムであって、市民を「抑圧」しかねない、
そういう「主体」をもったもの、というのが背景にある。

一方では、国家とは、我々が参加して作り上げていくものだ、そのための
入れ物、道具にすぎない、という論理もある。

議論をするときに、注意しなければならないことは、言葉一つとっても、
きっちりと「確認」をとっていないと、いつまでたっても、「不毛」な議論になる。

昔から、社会の成り立ちについて、民衆のあり方について、そりゃもう、大変な
冊数の本が、世に出ている。
ある時期キーワードになったのは、「搾取される民衆」であった。
国家は、権力そのものであったり、民衆は搾取・強奪される、単なる道具。

そういうところから、「所有」というキーワードが、盛んに使用された時期があった。
でもね、こと、現代に至って、我々は「何を所有」しているのか、
何を「切り売り」しているのか、何を「消費」しているのか。

だって、このパソコンだって、あらゆる国、あらゆる人間が組み合わさって、
完成されたもので、どこまでが、自分の「切り売り」で、できたものか、
全然、わからない。

言ってみれば、昔、社会主義とか言うマジックで、共同体を目指した時期があったが、
現在、何を均等化したらいいのか、何をもって平等なのか、
実は、誰も、細かい具体的なことは言えても、大きな理論を出すことができない。

生産された物があって、平等に分配する。
そうはいっても、生産されたものって、誰が、どういう風に、どのくらい関係したか
「公平」に測ることが、誰も出来ない。
であれば、その次に来る、「平等」って、何だ?ということになる。

そもそも、そういうことって、それぞれが、それぞれで主張したって、
何の解決にもならない。
すでに、世界丸ごと、「流通」システムが出来上がっている以上、
それぞれの、まとまりの中で、解決していくほかない。

そこで、どうやら、今、「国家」という、入れ物について、考えられている
考え方が、これ。

  「なぜ国家があるのか」
  「別にあなたを生まれさせて生きさせるために国家が出てきたわけじゃないけど
   事実問題として、今あなたが生きているということを可能にせしめる条件の中に
   ほとんど必要不可欠の条件の一つとして国家の存在という契機が含まれています」

ぶっちゃけ、こんな感じらしい。
というか、今は、ここまで、「解体」というか「無力的」になっている。

ところがだ。
ところが、結構、多くの人間が、案外、この入れ物の「国家」について、
無責任に、寄りかかったり、妙に、怖がったり、むきになったり、
俺がこうあるのは、国が悪いんだ、みたいになったり、
国がやっていることは、まったくもって、「いい加減で信用がならない」。
といっては、「俺が事故で怪我したのは、その曲がり角に、充分な標識を
立てずにいた、行政の不備だ」といって、賠償を求めたりもする。

本来、国が期待されている「機能」の一つに、「分配」というものがある。
格差社会、経済政策など、今、非常に熱く議論されている件だが、

 「不幸な人たちが大勢いる社会はよくないよって思っているからこそ、国家は
  こういうスキーム(社会福祉含めて)を作っているはずなんです。
  あんまり不幸な人がたくさんいるんだったら、責任はやっぱり国家、あるいは
  国家を作ったみんなに、その限りでは個別に自分の不幸には、責任がない
  その人でさえも、自分をも含めた、たくさんの人が不幸に陥っている社会に
  ほんのちょっとの連帯責任の一端を負っている」

この意識を、どのように、我々が共有することが、できるか。
とっくに、誰それが、どこで、何をやっているのか、わからない。
でもこの国で、厳然と、共同体の構成員の一人として、関係がある。

どうでしょうか、こういう「国家」についての考え方。
「愛国」とか、そういう議論もありますが、こういう考え方もあります。

「所有と国家のゆくえ」 立岩真也 稲葉振一郎 共著 NHKBOOKS
2度3度読まなければ、とてもじゃないけど、語れません。
輪に入ることができません。
まさに目を通しただけですが、非常に、参考になりました。