五反田発リスボン行き急行列車

五反田駅からリスボン行き急行列車に乗ることを夢想する前期高齢者の徒然

2018・10・16

2018-10-17 09:11:56 | 日記
一通の封書が届いた。宛て名がはっきりプロの方が書いたと分かる、パーティや結婚式の招待状などと同じ書体なもんだからチラッと浮かれた気持ちになったのに、差出人を見て一瞬私の表情は強張ったに違いない。それは予てから闘病中だったSちゃん(若しくはSさん)の奥様だったのだ。嫌な予感は的中する。封書に入っていたご挨拶の中にある「永眠」と云う文字が飛び込んで来る。テレビの演出家だったSちゃんこと、中山史郎さんが八年間の闘病生活の後に九月八日に亡くなったことを知らせていた。私と同じ22年生まれ。確か七月生まれだったから享年は71歳。私は22年の11月だったことを知って自分の方が四カ月は兄貴分なんだら尊敬語で話せと冗談を言っていたS。初めて会ったのは日本テレビの「池中玄太」の時だからもう40年近く前、私はシリーズの内一本だけしか書いてなかったのに作家顔しているのが気に入らなかったのか、当時SはまだADだったのに「自分のシリーズを持ってから作家面しろ」と喧嘩を売ってきたS。それなのに彼が演出家になってからは、私の拙い台本を精一杯フォローしてくれて「お前の脚本には心がある」と誉めてくれていたS。「婦警候補生やるっきゃないもん」「花王愛の劇場・花を下さい」…他にもあるかも知れないけど、思い出さない。Sちゃんとの共同作業は私が50歳でプロの脚本家を廃業するまでずっと続いた。でも、それ以上に密な時間を過ごしたのは私が広尾でお店を開業してからだ。作品と作品の合間には毎日の様に通ってくれたばかりか、撮影中にも俳優やスタッフを引き連れて店の売り上げに貢献してくれた。それは私に対する配慮と云うだけではない。その肩書とは似合わない愛くるしい顔と風体のせいか、店のスタッフや女性客にもてたもんだから心地よかったのだろう。焼酎のマイグラスまで置いてウチの店に親しんでくれたS。最後に会ったのは、2013年。その前年に脳梗塞で倒れたSだったが、リハビリに励んだ結果漸く日常会話が交わせる様になったと聞いて柏市にあるご自宅に見舞いに出向いた時だ。本当は飲んだりしてはいけないのに遠方から来た私を歓待しようと、ビールを一口二口と口に含むと「またお前と飲める様にリハビリを頑張らなくちゃな」と笑っていたS。それからは、乃木坂から恵比寿に移った時に開店祝いの花を送ってくれたのがSからのメッセージの最後になってしまった。今度の「誰がルルを殺したのか」で14作目になるテアトロジャージャンの案内もずっと送り続けてきたけど、全くの反応のなさに10作を区切りに送るのを中止した。同い年の私がいかにも作品を作り続けていることを誇示する様で、Sに焦りを与えてはいけないと思ったからだ。でも、こんなに早く旅立つと知っていたら、送り続けておけばよかった。嫉妬とか焦りも生き続ける力になったかも知れない。
Sのご冥福を祈ります。★テアトロジャージャン第14回公演は「M家の人々Ⅳ・誰がルルを殺したのか」(作演出・桃井章、出演・大塚みどり、棟里佳、荒木真樹彦、茂木英治)・会場はテアトロジャージャン(東京都渋谷区恵比寿2ー31ー3オーオカビル四階 電話03ー5422ー7407)・料金三千円・開演時間 10月31日(水)は19時のみ、11月1日(木)2日(金)3日(土)は14時&19時、11月4日(日)は14時のみ、開場は開演の三十分前です。・予約お問い合わせ 090ー9964ー2231(予約専用電話)ご来場をお待ちしております★テアトロジャージャンのホームページが開設されました。過去の作品や今後の上演予定作品の情報が掲載。、