広島への原爆投下から6日で76年を迎える。広島市中区の平和記念公園では平和記念式典が開かれる。あらゆる核兵器の開発、実験、生産、保有、使用を許さず、核で威嚇することも禁じる初めての国際条約「核兵器禁止条約」が1月に発効して初めて迎える「原爆の日」。長年、核兵器廃絶を訴えてきた被爆者たちの活動が一定の実を結ぶ一方で、被爆者の平均年齢は84歳に近づき、高齢化はいっそう進んでいる。

 式典は午前8時から、昨年に続いて新型コロナウイルス感染拡大防止のため、参加者を制限して開かれる。広島市の松井一実市長は式典で読み上げる平和宣言で、被爆者の思いを受け止めて条約に参加するよう日本政府に求めるとともに、核を持つ国と持たない国との「橋渡し役」となるよう訴える。被爆から3年後に広島を訪れたヘレン・ケラー氏の言葉を引用し、市民の力の結集が政策転換を促すと呼びかける。

 菅義偉首相は昨年の就任以来、初めての参列となる。核兵器を保有する米英ロ仏、インド、パキスタン、イスラエルを含む86カ国が参列予定。中でも核禁条約を批准している55の国・地域のうち、ニュージーランドやジャマイカなど20カ国の駐日大使らが参列を予定している。米国の「核の傘」に頼る日本政府や核保有国は条約に参加していない。

 直前の7月29日には、原爆投下後の「黒い雨」をめぐり、原告84人全員を被爆者と認めた広島高裁判決が確定した。原告以外で同じ状況にあった人たちを救済する枠組み作りが今後の焦点となる。

 その一方で、被爆者健康手帳を持つ人は12万7755人と、前年より8927人減った(3月末)。平均年齢は83・94歳。式典では、この1年に死亡が確認された広島の被爆者ら4800人の名前を加えた原爆死没者名簿が奉納される。死没者の総数は計32万8929人となる。(岡田将平)