海上保安庁は、尖閣諸島(沖縄県石垣市)周辺の領海警備強化に向け、同庁最大のヘリ搭載6500トン型の巡視船1隻を新造する方針を決め、29日発表した平成30年度予算の概算要求に整備費46億円を盛り込んだ。同型の巡視船は現在、全国で「しきしま」「あきつしま」の2隻を運用。尖閣対応では3隻目の新造になる。

 要求総額は29年度予算比9%増の2303億円で過去最高となり、定員増の要求は493人だった。

 海保は28年2月、ヘリ搭載3800トン型2隻と1千トン型10隻からなる「尖閣領海警備専従体制」を整備。同12月には政府が「海上保安体制強化に関する方針」を関係閣僚会議で決定していた。

 概算要求では、強化方針を受けて、尖閣領海警備体制の強化と大規模事案の同時発生への対応に230億円を盛り込んだ。全長約150メートルのヘリ搭載6500トン型は33年度に就役する予定。尖閣警備のほか、原発でのテロなどにも対処する1千トン型の大型巡視船も新造する。

 また、日本海排他的経済水域(EEZ)の北朝鮮漁船など外国船違法操業の監視を強化するため、新型ジェット機1機の整備費29億円を計上。巡視船側が撮影した映像を海上保安庁本庁で即時視聴するための映像伝送装置の設置を尖閣専従部隊以外にも拡充する。伝送装置はこれらの巡視船が尖閣に派遣された場合にも活用するという。

 ヘリ搭載6500トン型は28年度補正予算と29年度予算で1隻ずつ新造が決定し、28年度補正予算のヘリ搭載6千トン型とともに順次、建造。31年度以降に就役する予定で、海保は専従体制と組み合わせて運用する方針だ。担当者は「全国からの巡視船派遣を減らし、余力を生むことができる」と話した。