大手広告代理店の電通は6日、「アマビエ」の商標登録出願を取り下げた。同社への取材で分かった。出願をめぐっては、ネット上などで「権利を独占するつもりか」等の批判が寄せられていた。同社は「独占的かつ排他的な使用は全く想定しておりませんでした」と釈明している。

 アマビエは京都大附属図書館所蔵の史料「肥後国海中の怪」に描かれた妖怪。コロナ禍の中「疫病退散」のシンボルとして、多くのクリエーターや企業が原画をアレンジした作品や商品を製作している。電通は6月30日に特許庁に雑貨だけでなく電子出版物など広告マーケティングに関する188項目の商標登録を出願。Twitter上で「#電通のアマビエ商標登録に抗議します」のハッシュタグが広がるなど、“炎上”騒ぎになっていた。

 これについて電通は「当社取引先において『アマビエ』という名称を使うキャンペーンを検討していました。現時点では商標登録されていなかったものの、今後、第三者が商標登録をする可能性を考慮した結果、キャンペーン中に権利侵害が発生する可能性があるため登録を試みました」と説明。その後、取引先等との協議の結果、名称について再検討することになり、6日に出願取り下げ手続きを行ったという。

 商標権をめぐっては、6月に、北海道のアイヌ文化施設「民族共生象徴空間(ウポポイ)」の開業を前に、中国広東省の個人が日本の特許庁に「AINU」を商標登録出願していたことが判明するなど、近年、各地でトラブルが相次いでいる。

 特許庁のホームページによると、アマビエに関する商標は、本日時点で12社から出願(うち「アマビエ」は2社)され、いずれも審査待ちとなっている。

(まいどなニュース・広畑 千春)