教育落書き帳

教育とは何か…子どもの視点を尊重し、親、伴走者、市民の立場から語ります。子どもを語ることは未来への信頼と希望を語ること。

「想定」した人と「想定外」の人と「フリースクール」の活動と

2011年04月05日 | 日本社会


▼今回、未曾有の大地震と大津波で命を失ったり、被災された方々に相応しい言葉が思い浮かばない。その事実の前にただ頭を垂れ、合掌するのみである。そして人知を超えた自然の非情さを思う。助かった人たちには、何はともあれ「助かってよかったね」と素直に喜びたい。
 しかし他方で、その大津波から辛くも逃れた人たちの話も幾つも聞こえてくる。それで、より一層複雑な気持ちにさせられる。これは本当に天災だったのだろうかと。そんな素朴な疑問がわいて来る。

▼大津波や福島原発事故にしろ、大勢の人だけでなく行政の人間や専門家までもが「想定外」と言えば、一部の反対派勢力が声を荒げて「想定していたこと」と批判したとしても、「誰もが避けようがなかった」「仕方のないこと」だったのだと納得させられてしまう、そんな風潮がないわけではない。「想定外」と言ったら聞こえはいいが、そもそも対策の不備があったということであって、本当はみな「人災」というべきもなのではないのか。

▼最初に読売新聞が報じたことだと思うが、「生存した人たちのエピソードが多く報道されるにしたがい、津波に対する意識の高い人が、生存確率に明らかな差があることが、分かってきた」というのである。「たとえば岩手県宮古市の姉吉地区では、明治と昭和の三陸津波の経験から、先人が『此処(ここ)より下に家を建てるな』と、標高60メートルの地点に石碑を建てていた。住民たちはその警告を守ってきたため、今回の津波でもすべての住宅が被害を受けなかった」。(読売新聞3/30報道)

▼これに類することは、翌日の朝日新聞でも報じられた。東松島市の野蒜(のびる)地区の「佐藤山」の話である。この地震が起きるまで佐藤さんが私財を投げ打って私設の避難所を設けたことを、誰もが笑っていた。だが、結局はこの「バカな行為」が70人もの人々の命を救うこととなった。「周辺では(行政の)指定(した)避難場所も津波に襲われ、多くの人が犠牲になった」という。だが、「佐藤山」は指定されなかった。他にも、市議の遺言となった非常用避難通路設置が小学生たちの命を救ったという例もある。

▼ここに、どういうわけか、私はあの「ノアの箱舟」や「炭鉱のカナリヤ」の話などを脈絡なく重ね合わせてイメージしてしまう。そして、自分たちがやってきた不登校生支援のフリースクールの活動も
 おそらく、これらの活動は「常人」にとっては、かなり「奇妙」な「馬鹿げた」行為にしか見えなかったことだろう。それらを「想定」して活動する人間に、「常人」の誰がまともに相手しただろうか。非難はしなくても「理解不能」の眼差しで眺めていたのではなかろうか。不幸にも「想定」が現実化した結果から見ることでスポットライトが当てらることになったが、でなければ酔狂の戯れ事として一笑に付されたに違いない。だから、思いは複雑なのだ。

▼今この辺りは、市議選、県議選のための選挙カーが行き交っている。この時とばかりに様々な公約を掲げて市民に媚びている。日本の危機的状況さえも選挙運動の餌にして。だが、我々の活動にさえどの政党も何の寄与も支援もて来なかったという事実がある。今、どの政党も掲げる「わが党の成果」の一つに駅のエレベーター設置工事がある。私たちのところに車椅子の子どもが通ってきていた時は聞く耳を持たなかったのに。「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」というが、「前例のないこと」には想定外どころか想定そのものが出来ないのだ。
 大津波という想定外の災難にじっと堪える日本人の姿を海外で《我慢》と称えられたが、福島原発事故のような人災さえも天災のように受け入れるだけだと分かったら、やがてその賞賛は「怒りを忘れた日本人」として国際的に激しい批判と揶揄に変わるのではないか。それでも「従順な国民」と持ち上げるのはたぶん一党独裁の全体主義国家くらいのものだろう。ふとそんなことを思ってしまう。
 唯一の嬉しい「想定外」の出来事は、行政が戸惑うほどのボランティアの若者たちが生まれているということである。縮み志向の日本社会の中で若者が指弾されることが多いが、決して捨てたものではない、そんな希望を持たせてくれる。

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