教育落書き帳

教育とは何か…子どもの視点を尊重し、親、伴走者、市民の立場から語ります。子どもを語ることは未来への信頼と希望を語ること。

今更に「命の大切さ」を説く学校とは…

2009年07月05日 | 教育全般

高3、同級生を刺殺 「約束守らず腹立った」 殺人容疑捜査(産経新聞) - goo ニュース

◆今更に「命の大切さ」を説く学校とは…

▼「命の大切さ」を説く校長
この場に及んで取って付けたように校長や教職員が「命の大切さ」を生徒に説くということは、つまりは「今までは命の大切さを教育の基本とはして来なかった学校である」ということを自ら告白したことではないか。

▼その学校の「教育」とは何か
何か事件があると、その学校の校長や教職員は「学校は勉強をするところである」「学校は社会性を身に付けるところである」と鸚鵡の物真似のようにこの言葉を連発するが、そんなことを報道陣に口にすることは本来は恥ずかしいことであるそれはまるで「はい、私どもでは今までそういうような教育をやってきませんでした」ということを、世間に向かって告白しているに等しいからである。ここにも、学校関係者の社会性の乏しさが丸出しである。その下で子ども達は「教育」を受けてきたのである。とすると、その学校で称されていた「教育」というものの中身も問題である。

▼私立学校の生徒は動く広告塔
いつも感じることだが、こういう事件が起きる学校というのにはある特徴があることが多い。そしてそれは生徒の問題というよりは「その学校に所属することによって生じてきた生徒の問題」といった方がいいかもしれない。例えば、「私立学校の生徒は一人ひとりが動く広告塔・動く看板である」とはよく言われるが、「さすが私立○○学校の生徒だな」という評価をされるための行動を生徒一人ひとりに要求される。

▼学校の目標と生徒の実情
学校もその生徒もそういう世間の評判に適合する私立学校であれば、何の問題もない。伝統や歴史のある名門校と呼ばれる学校にはそういう学校が多いように思われる(中には、合わない生徒が間違って入ってしまうこともあるが。そういう場合は学校を換えた方がいい場合もある)。ところが、学校が目指すところと生徒の実情が合わなかったときや学校が世間の評価のランクアップのために生徒に無理な発破をかけるようになったらどうなるか。そこに様々な「生徒の問題」が生じることになる。そしてそれが生徒固有の問題に還元されてしまうことも多い。はたしてそうなのか。

▼生徒の問題行動の陰に学校の問題がある
組織の矛盾は弱いところに出てくる」というのは概ね正しい。学校の場合にはそれが生徒である。学校が生徒の実情に合わない建前や虚飾を強行すると、その矛盾は生徒に現れてくる。例えば、その学校ではいじめが横行しているのに「わが校にはいじめはありません」などと取り澄まして公言すると、その建前を維持するための重圧が生徒達にのしかかり、逆に誰の眼にも明らかな「生徒の問題行動という形」となって具現化することにもなる。

▼「もし」本当の「教育的配慮」がそこにあったなら
一つ注意しておきたいことは、一見生徒本人の問題から発現したように見える問題が実はその生徒が逃げ場や選択肢を失ったとか思い付かなかった結果であることが多いということ。つまり、学齢期の子ども達の問題や事件はほとんどが学校との連関の中で生まれているということ。一言でいえば、生徒達の問題や事件は学校の中で生み出されるということである。だから、もし学校の教職員に「もし」本当の教育的配慮が行き届いていたならば、そういう事件は生まれなかったかもしれない。
今回の事件の場合はどうなのか。それまでは仲の良かった二人が、その私立高校に入ってから仲違いするようになったというが、そこに何があったのか。具体的なことは、その生徒の口から語らせるしかない。

▼「教育」に関するマスコミ報道のあり方
それにしても、(調べる気になれば容易に分かることだが)マスコミの情報で刺殺された被害者の高校生は実名なのに、加害者の生徒や学校名が伏せられているのはどういうことか。未成年の加害者の高校生の名は伏せられるとしても、学校名を伏せるのはなぜ?これも「教育的配慮慮」という奴か?非教育的配慮としか私には見えない。まるで集団準強姦事件のあったあの京都教育大の学長が嘯いた「教育的配慮」という言葉のように。

▼「人権」の考え方・守り方
見方を変えれば、マスコミの報道では「死者には人権はない?」かのようにも見える。「当然の報い」という形の死も絶対あってはならないことだが、もし被害者が全く事実無根の理不尽な形での死を遂げたのだとしたら、衆人に晒されたこの高校生の人権はどのように守られるのか。そこまで考えてマスコミは報道しているのだろうか。守り方が逆ではないか、と私には思える。

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