動物介在療法の一環として、高齢者や障害を持つ方々にとってセラピー・ドッグとの触れ合いが心身に良い影響を及ぼすことは、良く知られている。が、犬がもたらす良い影響が、精神面だけではなく肉体面でどのような影響を及ぼしているのかについての科学的な研究は、進展の途上にある。そうした研究は、日本を含め世界的に進められているが、このたび、サービス・ドッグとの暮らしが自閉症の子どもたちの肉体面に及ぼす影響に関して、初めて生理学的なアプローチから研究され、科学専門誌『Psychoneuroendocrinology』に発表された。
カナダのモントリオール大学が中心となって進められたその研究では、自閉症の子どもたちの唾液中に含まれるコルチゾールと呼ばれるホルモン濃度を測定することで、サービス・ドッグから受ける生理学的影響を調査したという事である。コルチゾールは副腎皮質ホルモンのひとつで、ストレス反応と大きく関係していると言われおり、一般に、ストレスを強く感じるとコルチゾールが多く分泌されることが知られている。
研究者らは、ストレスレベルを評価するために、起床後30分程度でコルチゾールの分泌量が急上昇する、起床時コルチゾール反応(Cortisol Awakening Response: CAR)を指標とし、42人の自閉症児を対象として CAR を測定した。CAR の測定は、サービス・ドッグの家庭への導入前、導入中、そしてサービス・ドッグを家庭から取り去った後の3つの状況で行われた。
結果、サービス・ドッグの導入前には、CAR の値が58%上昇していたのに対し、導入中にはそれが10%にまで減少したと言う事だ。さらに、一時的にサービス・ドッグを取り去った後の値は、再び48%の上昇を見せ、サービス・ドッグの存在が自閉症児のストレスの軽減に役立っていることが明示された。