読書など徒然に

歴史、宗教、言語などの随筆を読み、そのなかで発見した事を書き留めておく自分流の読書メモ。

清張の川中島の感想

2007-03-12 20:42:16 | Weblog

清張は歴史家になりたかったと言ったようだが川中島の決戦は歴史家によっては雌雄を決するようなものではなく、小競り合い程度だったと言う人もいる。しかし、武田側では多くの有能な武士を失っている。51歳の初老で信玄に仕えた勘助も作戦が裏面に出て信玄と謙信のあの有名な一対一の直接対決と言う結果を生じさせており、4度目の川中島の戦で死んでいる。謙信は戦を一種の芸術のように考えていると司馬遼太郎は言っているが上杉側もまた多くの損失が有った。信玄の旗印は孫子の兵法から「疾き事風の如く・・・」、謙信のそれは毘沙門天の「毘」で勝敗が決する事はなかった。現在NHKの大河ドラマ「風林火山」は井上靖の原作でこの小説は清張の「決戦川中島」と同じ時期に書かれたと言う事だ。ある日、その毎日新聞記者出身の作家井上靖が朝日新聞記者の清張に朝日新聞社玄関で偶然会い、清張に「もう辞めてもいい頃では?」と言った。それを機会に清張は朝日を辞し作家専業になったと言う。これも歴史の不思議さと言うべきか。