エベレストで横行する「不必要な救助」、ヘリ利用で保険金搾取
7/14(土) 9:06配信 AFP=時事
エベレストで横行する「不必要な救助」、ヘリ利用で保険金搾取
ネパール・ルクラの空港を飛び立つヘリコプター(2018年4月13日撮影)。【翻訳編集】 AFPBB News
【AFP=時事】ネパールのヒマラヤ山脈で働く登山ガイドらは、訪れる登山客らに「問題の兆し」があるのを見つけると、すぐにヘリコプターを利用して下山するよう強く勧める──。その背景にあるのは、高額となるヘリコプターでの「不必要な救助」によって大金を手にすることを狙った関係業者とガイドたちとの癒着がある。内情に詳しい関係者らが話した。
【関連写真】エベレストで負傷者を運ぶ人々
今回、AFPの取材で分かったのは、1回のヘリコプターの利用に対して複数回分の請求が行われていたり、若干の体調不良でも登山客らにヘリコプターを利用するよう半ば強制したりする業者が複数存在していることだ。このような手口を通じて、数万ドル(数百万円)が保険会社から不正に支払われているという。
こうした行為に加担するガイドらには、登山客がヘリコプターを使って下山するたびにリベートが支払われる。疲れの見える登山客らにヘリコプターの利用を勧め、その一方で保険会社に対しては、それが救助目的であったと申請するという。
こうしたケースは数多く見られ、たとえ登山客に何ら問題がない様子でも、ヘリコプターのパイロットはそれが「救助」であると報告するのだ。
英国に本拠を置く「トラベラー・アシスト(Traveller Assist)」は、世界の旅行保険会社の代理で医療救助を行っている。同社ののジョナサン・バンクロフト(Jonathan Bancroft)氏は、「これは詐欺に等しい金儲けで、ネパール全体で大規模に行われている」と語る。
トレッキング関連のサービスを提供する旅行会社は、トレッキングそのものよりも、登山客をヘリコプターで下山させることによって発生する見返りを通じて、より多くの金銭を得ている。こうした現状は、同国最大の観光の目玉であるヒマラヤ山脈での救助要請の急激な増加にも影響を与えている。
トラベラー・アシストによると、ネパールへの旅行者をカバーする旅行保険会社は2017年、ヘリコプター救助が驚異的な件数に上ったことから過去最大の支払額を計上した。さらに今年は、それをさらに上回るペースとなっているという。
ネパールではヘリコプターの運用を監視する中央管理センターが存在しないため、このような「下山」目的の利用がどれだけあるのかを正確に把握することは難しい。
しかし過去6年間、エベレスト周辺の上空はヘリコプターの航路と化しており、業界のデータによると、その数は約6倍に増えたという。各機体の年間飛行時間は1000時間を超えるとされる。
地域の小さな診療所で働いているタニシュワル・バンダリさんは、「以前はだいたい2、3日に1機しかヘリコプターを見かけなかったが、今は1日に10機ほど見る」と話す。
他方で、匿名を条件にAFPの取材に応じたある外国人操縦士は、登山シーズンがピークを迎える4月と5月、今年はほぼ毎日登山客を救助したと述べたが、「シーズン全体を通して本当に体調が悪そうだったのは3人くらいだと思う」と明かした。
■「嘘をつくよう言われた」
オーストラリアからネパールを訪れた登山客のジェシカ・リーブスさんは、2017年10月にエベレストのベースキャンプ近くで風邪の一般的な症状を訴えた。すると、付き添いのガイドからヘリコプターで下山するよう強く勧められたという。
AFPの取材に応じたリーブスさんは、「もしこのまま続けると非常に危険なことになりかねない。リスクを負うよりもすぐに下山した方がいい」と言われ、ガイドから「ヘリコプターに乗るよう何度も勧められた」ことを明らかにした。
リーブスさんによると、同じグループの登山客9~10人は、最終的にヘリコプター3機に分乗してカトマンズに戻ったという。しかしこの時、各自が別々のヘリコプターで下山したと言うよう指示されたという。
この下山をめぐり、現地旅行会社「ヒマラヤン・ソーシャル・ジャーニー(Himalayan Social Journey)」は、各登山客が契約していた保険会社に費用を全額請求し、その過程で3万5000ドル(約390万円)を着服したとリーブスさんは主張する。
「彼らは私たち全員に、保険会社に嘘をつくよう求めた。それぞれのヘリコプターには3~4人乗っていたのに、1人ずつしか乗っていなかったと話すよう言われた」
ただ、リーブスさんの保険契約はすでに失効していたため、この件で保険金の請求は受理されなかった。
これに対して、ヒマラヤン・ソーシャル・ジャーニーの経営者、ラム・サプコタ(Ram Sapkota)氏は、各保険会社に全額を請求していないと反論する。同氏は、「(彼らが)同乗した計算で保険金を請求し、われわれは(それにのっとって)保険会社から支払いを受けた」とし、そうした主張は「偽り」だと一蹴した。
さらにサプコタ氏は、ヒマラヤ山脈でのヘリコプター救助が増加しているのは、怠惰で心配性の登山客らのせいだと指摘する。「一人の具合が悪くなると、グループ全体が『不安だ。早く帰りたい』」と言い出すのだ」と話した。
この「仲介料を搾取する仕組み」の中にいる関係者らへの取材を通じ、ガイド、ツアー会社、ロッジのオーナー、チャーター会社がブローカーとしての役割を果たしていることが分かった。救助費用のおこぼれにあやかろうと、それぞれがヘリコプター運航会社とかかわりを持っていた。
カトマンズを拠点とするヘリコプター運航会社のマネジャーによると、救助のための飛行1回に付き、ブローカーには500ドル(約5万5000円)を支払っているという。匿名を希望するこの男性は「仲介料を払わなければ、仕事をもらえない」と述べた。
■セーフティーネット
ネパールのトレッキング業界は、2015年の地震で打撃を受けたが、近年は観光客も戻り始めている。
外国からの登山客に付き添いのガイドを提供する旅行業者は2000社以上あると考えられており、その多くは、カトマンズのほこりっぽい裏通りに、狭くみすぼらしい事務所を構えている。
エベレストのベースキャンプを目指す14日間のトレッキングツアーの料金は会社により幅がある。だが、複数の業界関係者によると、多くはコストを下回る1000ドル(約11万円)以下で提供されているという。
低価格ツアーを提供する会社では、登山客をヘリコプターで「救助」することで原価割れの分を補うようガイドらに指示しているとされる。ある匿名希望のガイドはAFPの取材に対し、「救助」しなければいけない登山客数のノルマが課せられていると打ち明けた。
その一方で、エベレストの高地で働く医師たちにとっては、重篤患者をより設備が整った病院に確実に搬送できるため、ヘリコプターの利用機会が増えたことは、より大きな安心感につながっているという。
英国人医師のヘレン・ランドフィールド(Helen Randfield)氏は、「医師としては、ヘリコプターというセーフティーネットが出来て良かったと考えている」と話す。ランドフィールド氏が働く小さな診療所では、天候がおだやかな春と秋に数多くの登山客に対応するという。
だが、誰をヘリコプターで搬送するのかを最終的に判断するのは医療関係者ではない。米国人医師のソニア・マリアーノ(Sonia Mariano)氏は、「ガイドもしくは登山客らの間で、救助が必要かどうかを判断している」と語る。マリアーノ氏は昨年、ランドフィールド氏と同じ診療所で働いていた。
救助の大部分は、事前に保険会社の承認なしに行われる。保険会社の連合会であるインターナショナル・アシスタンス・グループ(International Assistance Group)に救助サービスを提供するアルパイン・レスキュー(Alpine Rescue)によると、その割合は80%に上っており、搾取がされやすい仕組みになっているという。
■利害関係
カトマンズの一部病院も、救助ビジネスとのつながりが指摘されている。AFPが企業登録書類を調べたところ、旅行会社の多くは、病院やヘリコプター運航会社と財政面で結びついており、そこには利害関係が見て取れる。
ヒマラヤン・ソーシャル・ジャーニーでは、登山客を病院に連れて行ったガイドに病院から仲介料が手渡されることになっているが、これは医療機関との「関係を維持する」ために必要不可欠なものだと、サプコタ氏は説明する。
また、同社は昨年、ヘリコプター運航会社、アルティチュード・エア(Altitude Air)に10%出資したことも明らかにしている。
4月にエベレストの周辺地域を訪れた匿名希望のドイツ人登山客は、ブローカーからカトマンズまでヘリコプターで戻ることを提案されたとAFPの取材に話した。この時、費用は保険会社に請求すると言われたという。「これを救助として認める医師を知っているとブローカーは言っていた」
ヒマラヤでの救助の大多数は、高地での低酸素が原因で起きる高山病に関連したものだ。頭痛、吐き気、食欲不振などの症状が現れる。唯一の治療法は下山することとされているが、低地に戻ると症状は治まり、医療救助が本当に必要だったのかが分からなくなる。
「(登山客は)下山する頃には元気になっている」と、カトマンズのトラベルクリニック「シベック(Ciwec)」の医師、プラティバ・パンディ(Prativa Pandey)氏は言う。そして、それでも医師には闇のビジネスを排除する権限はなく、「(われわれは)疑わしい患者でも治療せざるを得ない」と続けた。
しかし、保険会社も、まん延する詐欺行為に気付き始めている。業界関係者によると、英大手保険引受人と取引する保険会社のいくつかは、ネパール向けの海外旅行保険の提供取りやめについても検討しているという。これについては保険会社が顧客を警戒させることを嫌っているとして、関係者は匿名を条件に取材に応じた。
ネパールの文化・観光・民間航空省は複数の情報源からの苦情を受け、6月初めに保険金詐欺疑惑で調査を開始した。担当高官がAFPに明らかにした。同高官は「調査は(さらに)1か月かかるかもしれない。調査開始当時は、問題の大きさを認識していなかった」と述べた。詳細については語らなかった。
だが、地元メディアの報道によると、旅行会社やヘリコプター運航会社など約500社が調査の対象となっており、その中にはサプコタ氏の経営するヒマラヤン・ソーシャル・ジャーニーも含まれているという。サプコタ氏は観光省から連絡はなく、いかなる不正行為もしていないと主張している。【翻訳編集】 AFPBB News
7/14(土) 9:06配信 AFP=時事
エベレストで横行する「不必要な救助」、ヘリ利用で保険金搾取
ネパール・ルクラの空港を飛び立つヘリコプター(2018年4月13日撮影)。【翻訳編集】 AFPBB News
【AFP=時事】ネパールのヒマラヤ山脈で働く登山ガイドらは、訪れる登山客らに「問題の兆し」があるのを見つけると、すぐにヘリコプターを利用して下山するよう強く勧める──。その背景にあるのは、高額となるヘリコプターでの「不必要な救助」によって大金を手にすることを狙った関係業者とガイドたちとの癒着がある。内情に詳しい関係者らが話した。
【関連写真】エベレストで負傷者を運ぶ人々
今回、AFPの取材で分かったのは、1回のヘリコプターの利用に対して複数回分の請求が行われていたり、若干の体調不良でも登山客らにヘリコプターを利用するよう半ば強制したりする業者が複数存在していることだ。このような手口を通じて、数万ドル(数百万円)が保険会社から不正に支払われているという。
こうした行為に加担するガイドらには、登山客がヘリコプターを使って下山するたびにリベートが支払われる。疲れの見える登山客らにヘリコプターの利用を勧め、その一方で保険会社に対しては、それが救助目的であったと申請するという。
こうしたケースは数多く見られ、たとえ登山客に何ら問題がない様子でも、ヘリコプターのパイロットはそれが「救助」であると報告するのだ。
英国に本拠を置く「トラベラー・アシスト(Traveller Assist)」は、世界の旅行保険会社の代理で医療救助を行っている。同社ののジョナサン・バンクロフト(Jonathan Bancroft)氏は、「これは詐欺に等しい金儲けで、ネパール全体で大規模に行われている」と語る。
トレッキング関連のサービスを提供する旅行会社は、トレッキングそのものよりも、登山客をヘリコプターで下山させることによって発生する見返りを通じて、より多くの金銭を得ている。こうした現状は、同国最大の観光の目玉であるヒマラヤ山脈での救助要請の急激な増加にも影響を与えている。
トラベラー・アシストによると、ネパールへの旅行者をカバーする旅行保険会社は2017年、ヘリコプター救助が驚異的な件数に上ったことから過去最大の支払額を計上した。さらに今年は、それをさらに上回るペースとなっているという。
ネパールではヘリコプターの運用を監視する中央管理センターが存在しないため、このような「下山」目的の利用がどれだけあるのかを正確に把握することは難しい。
しかし過去6年間、エベレスト周辺の上空はヘリコプターの航路と化しており、業界のデータによると、その数は約6倍に増えたという。各機体の年間飛行時間は1000時間を超えるとされる。
地域の小さな診療所で働いているタニシュワル・バンダリさんは、「以前はだいたい2、3日に1機しかヘリコプターを見かけなかったが、今は1日に10機ほど見る」と話す。
他方で、匿名を条件にAFPの取材に応じたある外国人操縦士は、登山シーズンがピークを迎える4月と5月、今年はほぼ毎日登山客を救助したと述べたが、「シーズン全体を通して本当に体調が悪そうだったのは3人くらいだと思う」と明かした。
■「嘘をつくよう言われた」
オーストラリアからネパールを訪れた登山客のジェシカ・リーブスさんは、2017年10月にエベレストのベースキャンプ近くで風邪の一般的な症状を訴えた。すると、付き添いのガイドからヘリコプターで下山するよう強く勧められたという。
AFPの取材に応じたリーブスさんは、「もしこのまま続けると非常に危険なことになりかねない。リスクを負うよりもすぐに下山した方がいい」と言われ、ガイドから「ヘリコプターに乗るよう何度も勧められた」ことを明らかにした。
リーブスさんによると、同じグループの登山客9~10人は、最終的にヘリコプター3機に分乗してカトマンズに戻ったという。しかしこの時、各自が別々のヘリコプターで下山したと言うよう指示されたという。
この下山をめぐり、現地旅行会社「ヒマラヤン・ソーシャル・ジャーニー(Himalayan Social Journey)」は、各登山客が契約していた保険会社に費用を全額請求し、その過程で3万5000ドル(約390万円)を着服したとリーブスさんは主張する。
「彼らは私たち全員に、保険会社に嘘をつくよう求めた。それぞれのヘリコプターには3~4人乗っていたのに、1人ずつしか乗っていなかったと話すよう言われた」
ただ、リーブスさんの保険契約はすでに失効していたため、この件で保険金の請求は受理されなかった。
これに対して、ヒマラヤン・ソーシャル・ジャーニーの経営者、ラム・サプコタ(Ram Sapkota)氏は、各保険会社に全額を請求していないと反論する。同氏は、「(彼らが)同乗した計算で保険金を請求し、われわれは(それにのっとって)保険会社から支払いを受けた」とし、そうした主張は「偽り」だと一蹴した。
さらにサプコタ氏は、ヒマラヤ山脈でのヘリコプター救助が増加しているのは、怠惰で心配性の登山客らのせいだと指摘する。「一人の具合が悪くなると、グループ全体が『不安だ。早く帰りたい』」と言い出すのだ」と話した。
この「仲介料を搾取する仕組み」の中にいる関係者らへの取材を通じ、ガイド、ツアー会社、ロッジのオーナー、チャーター会社がブローカーとしての役割を果たしていることが分かった。救助費用のおこぼれにあやかろうと、それぞれがヘリコプター運航会社とかかわりを持っていた。
カトマンズを拠点とするヘリコプター運航会社のマネジャーによると、救助のための飛行1回に付き、ブローカーには500ドル(約5万5000円)を支払っているという。匿名を希望するこの男性は「仲介料を払わなければ、仕事をもらえない」と述べた。
■セーフティーネット
ネパールのトレッキング業界は、2015年の地震で打撃を受けたが、近年は観光客も戻り始めている。
外国からの登山客に付き添いのガイドを提供する旅行業者は2000社以上あると考えられており、その多くは、カトマンズのほこりっぽい裏通りに、狭くみすぼらしい事務所を構えている。
エベレストのベースキャンプを目指す14日間のトレッキングツアーの料金は会社により幅がある。だが、複数の業界関係者によると、多くはコストを下回る1000ドル(約11万円)以下で提供されているという。
低価格ツアーを提供する会社では、登山客をヘリコプターで「救助」することで原価割れの分を補うようガイドらに指示しているとされる。ある匿名希望のガイドはAFPの取材に対し、「救助」しなければいけない登山客数のノルマが課せられていると打ち明けた。
その一方で、エベレストの高地で働く医師たちにとっては、重篤患者をより設備が整った病院に確実に搬送できるため、ヘリコプターの利用機会が増えたことは、より大きな安心感につながっているという。
英国人医師のヘレン・ランドフィールド(Helen Randfield)氏は、「医師としては、ヘリコプターというセーフティーネットが出来て良かったと考えている」と話す。ランドフィールド氏が働く小さな診療所では、天候がおだやかな春と秋に数多くの登山客に対応するという。
だが、誰をヘリコプターで搬送するのかを最終的に判断するのは医療関係者ではない。米国人医師のソニア・マリアーノ(Sonia Mariano)氏は、「ガイドもしくは登山客らの間で、救助が必要かどうかを判断している」と語る。マリアーノ氏は昨年、ランドフィールド氏と同じ診療所で働いていた。
救助の大部分は、事前に保険会社の承認なしに行われる。保険会社の連合会であるインターナショナル・アシスタンス・グループ(International Assistance Group)に救助サービスを提供するアルパイン・レスキュー(Alpine Rescue)によると、その割合は80%に上っており、搾取がされやすい仕組みになっているという。
■利害関係
カトマンズの一部病院も、救助ビジネスとのつながりが指摘されている。AFPが企業登録書類を調べたところ、旅行会社の多くは、病院やヘリコプター運航会社と財政面で結びついており、そこには利害関係が見て取れる。
ヒマラヤン・ソーシャル・ジャーニーでは、登山客を病院に連れて行ったガイドに病院から仲介料が手渡されることになっているが、これは医療機関との「関係を維持する」ために必要不可欠なものだと、サプコタ氏は説明する。
また、同社は昨年、ヘリコプター運航会社、アルティチュード・エア(Altitude Air)に10%出資したことも明らかにしている。
4月にエベレストの周辺地域を訪れた匿名希望のドイツ人登山客は、ブローカーからカトマンズまでヘリコプターで戻ることを提案されたとAFPの取材に話した。この時、費用は保険会社に請求すると言われたという。「これを救助として認める医師を知っているとブローカーは言っていた」
ヒマラヤでの救助の大多数は、高地での低酸素が原因で起きる高山病に関連したものだ。頭痛、吐き気、食欲不振などの症状が現れる。唯一の治療法は下山することとされているが、低地に戻ると症状は治まり、医療救助が本当に必要だったのかが分からなくなる。
「(登山客は)下山する頃には元気になっている」と、カトマンズのトラベルクリニック「シベック(Ciwec)」の医師、プラティバ・パンディ(Prativa Pandey)氏は言う。そして、それでも医師には闇のビジネスを排除する権限はなく、「(われわれは)疑わしい患者でも治療せざるを得ない」と続けた。
しかし、保険会社も、まん延する詐欺行為に気付き始めている。業界関係者によると、英大手保険引受人と取引する保険会社のいくつかは、ネパール向けの海外旅行保険の提供取りやめについても検討しているという。これについては保険会社が顧客を警戒させることを嫌っているとして、関係者は匿名を条件に取材に応じた。
ネパールの文化・観光・民間航空省は複数の情報源からの苦情を受け、6月初めに保険金詐欺疑惑で調査を開始した。担当高官がAFPに明らかにした。同高官は「調査は(さらに)1か月かかるかもしれない。調査開始当時は、問題の大きさを認識していなかった」と述べた。詳細については語らなかった。
だが、地元メディアの報道によると、旅行会社やヘリコプター運航会社など約500社が調査の対象となっており、その中にはサプコタ氏の経営するヒマラヤン・ソーシャル・ジャーニーも含まれているという。サプコタ氏は観光省から連絡はなく、いかなる不正行為もしていないと主張している。【翻訳編集】 AFPBB News
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