櫻井よしこ氏「韓国諜報機関工作員」説の真偽
『アクセスジャーナル』読者の皆さん、初めまして! コラムニストの中井仲蔵と申します。普段は某中小企業に務めつつ、ちょこちょこ変名で雑誌やウエブ媒体に駄文を寄せているケチな野郎ですが、以後、お見知りおきをお願いいたします。さて、見切り発車で始めたこの連載では、あまり話題にならなかったニュースを拾い起こし、当事者の発言をあげつらってみようかと思います。一応、月2回を目処にしています。
櫻井よしこさん(75)といえば、ゴリゴリの右派で鳴らすジャーナリストとして知られており、時には歴史改竄も辞さない強い姿勢で韓国・朝鮮の人々に対峙するさまが、日本で「保守」と呼ばれている人々に支持されているのは周知の通り。あの安倍晋三前首相の「思想的支柱」ともいわれる、保守界隈ではかなりの大物です。
過去には、従軍慰安婦について書いた元朝日新聞記者による記事を、何の根拠もなく「捏造だ!」と断定し、名誉毀損で訴えられましたが、最高裁では「確かに櫻井氏がいうような捏造はなかったが、でもまぁ、櫻井さんが信じちゃってたんだから仕方がない」という、普通の人が聞いたら「裏で誰かが糸を引いてんじゃないか」とついつい思ってしまいそうな判決内容で勝訴したという、メークミラクルの人でもあります。
そんな櫻井さんが、韓国の諜報機関工作員説? いったい、どういうことなのでしょうか。
東京五輪の閉会式の2日後、2021年の8月10日に、韓国を代表するTV局「MBCテレビ」のそれも看板番組『PD手帳』において、「韓国の国家情報院が日本の極右団体を影でこっそり支援している」と報じました。支援している団体として、差別煽動行動で知られる『在特会』の名前などが挙がりましたが、そうした彼ら日本の右翼をまとめ上げているのが、櫻井よしこさんが理事長を務める『国家基本問題研究所』だというのです。
韓国の国家情報院といえば、韓国版CIAというべきKCIA(韓国中央情報部)から発展した組織です。そんな諜報機関が、日本で嫌韓を声高に叫ぶ連中を援助している――。そこには複雑な構造があるのでした。
安倍内閣以降、日本の与党は「嫌韓」「反共」を党是にしているためにピンと来ないかもしれませんが、思い起こせば軍事政権時代の韓国と自民党は、非常に仲が良かったのです。両者を結びつけていたのは冷戦――対北朝鮮、対共産国の軍事同盟として、お互いの利害が一致したからでした。KCIAがいちばん活躍したのもその時代かもしれません。
ところが、その冷戦構造が崩壊してから30余年、文在寅政権下の韓国では、「反共」どころか、北朝鮮との融和が図られています。そうなると面白くないのが、いまやすっかり肩身が狭くなった韓国の軍事政権派。「敵の敵は味方」とばかりに、個人情報や資金を、公安を通じて日本の極右団体に提供し、自国の「親・北朝鮮派」やリベラルにえげつない嫌がらせをさせた――という構図があるというのです。
そういや櫻井さんは、かねてより新聞に意見広告をガンガン出してますが、どうやって広告費を捻出してるのか、不思議に思う声も多かったんですよね。慰安婦問題を取り扱ったドキュメンタリー映画『主戦場』でも、インタビューで「資金はどっから出てるんですか」と尋ねられてましたが、「とても複雑で……」と語ったあとは口ごもり、目が泳ぎまくっているさまが撮られていました。いったい、どんなヤバいタニマチがいるのか……まさかとは思うが、官房機密費から出た資金だったりして……などとゲスの勘ぐりをしたものですが、まさか韓国の情報機関から支援を受けていた!? にわかには信じがたい話ですが。
もし、これが事実なら、右派界隈にとっては大ダメージとなることでしょう。誰かが早々に火消しに走ったのか、韓国での放送から1週間近く経っても、Googleのニュース検索ではこの件に関して右派メディアの反論記事ぐらいしか見つかりませんでした。
なお、櫻井さんご自身はSNSで「韓国MBCテレビによる名誉毀損行為に抗議します」と記されています。
大きなお世話ですが、どうせだったら「抗議」なんて生ぬるいこと言わずに、告訴しちゃってもいいんじゃないですかね。櫻井さんが韓国のスパイなんかじゃないってことを、世間にバシッと見せつけてほしいもんです。
(※メルマガ『アクセスジャーナル・メルマガ版』2021年8月23日号より一部抜粋)
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