同胞だからと油断禁物。「日本人を狙う日本人詐欺師」がタイで増加
HARBOR BUSINESS Online 3月4日(金)9時21分配信
同胞だからと油断禁物。「日本人を狙う日本人詐欺師」がタイで増加
長期刑専門といわれるバンコク郊外の刑務所バンクワンには主に麻薬や殺人で逮捕された日本人受刑者が何人か収容されている
ここ数回に渡り、この数年で3倍近くに増えた在タイ邦人社会の中で生じているさまざまな「軋轢」についてリポートしてきた。
◆変貌する南の楽園。在タイ「ママ友」社会で増す軋轢
◆在タイ邦人社会に増える「日本人同士の足の引っ張り合い」
そして、日本人増加で日本人相手に商売が成り立つようになったのは何も「表社会」の人だけではないのが現状だ。
日本でもともと裏稼業に手を染めていた者、タイに来てから裏の稼業に手を染める者。それぞれいるが、いずれにしろ在タイ邦人社会では「裏」の人間も台頭しているのだ。『変貌する南の楽園。在タイ「ママ友」社会で増す軋轢』の冒頭で触れたように、タイでは自殺する日本人も増えているが、そうした人の中には暴力団関係者もいる。日本でなにかやったのか、タイでなにか不祥事をしでかしたのか、潜伏生活をしているうちに逃げ場がなくなり、自ら死に走ることがあるようだ。
◆在タイの日本人を狙う日本人詐欺師
また、日本人詐欺師も増えている。ある飲食店経営者は数年前に起業支援をするという人物に騙された。
「今の店は態勢を立て直して再出発したもので、以前、飲食店を開きたいとある日本人に相談したところ、顧問料や通訳料などを取られ、ことあるごとに追加料金を巻き上げられた挙げ句、実際には約束していた店舗の確保や許可証の申請などなにもしてくれませんでした」
こういったケースは枚挙に暇がない。ほかにはありもしない架空の企業や、実際には存在するがまったく本人とは関係のない企業もしくは飲食店の権利売却を持ち込んできて多額の金を巻き上げることもある。
◆詐欺業者のせいで不法就労!?
近年であった大きな日本人の詐欺事件では、会社や飲食店経営者のビザや労働許可証、月々の会計報告まで引き受けていた会計事務所を経営する男が、実はなにもしていなかったために何百人という日本人が被害に遭った。正式に働いていると思っていたら不法就労だったのだからたまらない。彼は最終的にタイの大手銀行からも金を騙し取ったとして、さすがに警察も動いて逮捕となった。
高額の詐欺はそう頻繁に起こるものではない。しかし、せいぜい数万円から数十万円程度の少額の詐欺はそれこそ掃いて捨てるほど発生している。
日本においても詐欺事件は証拠固めが困難で、立件するためにときには数年もかかる。タイでも少額であると立証しづらい上、どうせ外国人同士の揉めごとなのだからと警察もなかなか動いてくれない。そのため、日本人の少額詐欺事件は毎日たくさん起こっているにも関わらず、ほとんどは表に出てこないし、詐欺師も堂々と暮らしているほどである。
筆者もそれと知らずにつき合いのあったタイ在住者の中で3人も詐欺をしていた人がいたし、別にいるもう1人は限りなく黒に近い。この4人のうち2人はいまだタイ国内で暮らしていることが確認できている。
◆「海外で暮らす同胞だから」では足を掬われる
タイは住みやすい国だ。年々近代化すると共に、幸運にも和食ブームで、親日家も多い。この数年でクーデターが起きたり、洪水が発生してきたにも関わらず在留邦人は増加の一途を辿る。タイは殺人事件の発生件数が人口比では日本の数十倍にもなるというが、一般的な生活圏内で普通に暮らしている分には危ない目にも遭うことはない。タイ人もこちらから刺激しない限りは悪人だっておおらかなほどである。
しかし、気をつけたいのは本来なら信頼し合っていくべき日本人となっている。日本社会の縮図がバンコクの日本人社会であり、海外に暮らす同胞だから助けあうのは当然、という至極普通の考え方は逆に足をすくわれてしまう。これがバンコクの現実なのだ。
<取材・文・撮影/高田胤臣(Twitter ID:@NaturalNENEAM)>
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