極東極楽 ごくとうごくらく

豊饒なセカンドライフを求め大還暦までの旅日記

資本主義と自由⑦

2021年12月10日 | 時事書評



彦根藩二代当主である井伊直孝公をお寺の門前で手招き雷雨から救っ
たと伝えられる "招き猫と、井伊軍団のシンボルとも言える赤備え。
(戦国時代の軍団編成の一種で、あらゆる武具を朱塗りにした部隊編
のこと)の兜(かぶと)を合体させて生まれたキャラクタ。愛称「
こにゃん」


「ひこにゃん」あて年賀状の送り先
〒522-0061
滋賀県彦根市金亀町1番1号 彦根城
「ひこにゃん」宛

1.ブナノキ 2.ミズナラ 3.コナラ 4.カシワ 5.クヌギ
6.アベマキ

   
Source; Wikipedia 口大屋の大アベマキ 


【樹木×短歌トレッキング:アバマキ】

   つるはみの衣は人皆事なしと言ひし時より欲しくおもほゆ

                万葉集 vol.7 1311 作者不詳

日本最大級の巨木アベマキは、樹齢推定500年、幹周り5.4m、樹高28m
で種別日本最大級の巨木といわれている。丹波焼の窯元軒を連ねる上
立杭集落のシンボルとして大切にされ、おみの木と呼ばれて親しまれ
ているという(上写真クリック)。近江は、武奈ヶ岳がありブナ科コ
ナラ属の宝庫でもあり、度々ブログしている。しかし、コーヒーとア
ベマキなどの木屑を焙煎しブレンドしていることをはじめてしる。

 since 2020.12.15

商品名:アベマキ入りレギュラーコーヒー(粉)、原材料名:コーヒ
ー豆(生豆生産国コロンビア)、アベマキ(美濃加茂市産)


 
Source; 全日本コーヒー協会
【参考】
1、コナラの樹液の成分
樹液は樹木の茎に傷がついたときに傷口からしみ出る液体。樹液の成
分は殆どが導管液ですのでほぼ少量のミネラルや糖類を含む水。これ
に篩管液も多少混じって樹液としてしみ出るもの。新葉が出る前の樹
液には糖類が多く含まれ、口に含んでも甘いと感じられる濃度。それ
でも1%未満のはず。その他に、アミノ酸やミネラル等の生きるため
の必須成分が入っています。しみ出た樹液は乾燥して糖濃度も高まり
クワガタやカブトムシなどが好んで集まってくる。

2、コナラの土壌環境
コナラはクヌギなどとともに里山の典型的な植生です。日本の里山の
7割近くには褐色森林土が分布していますので、コナラは褐色森林土
と考えてもよいでしょう。褐色森林土とは表土が黒褐色でその下には
褐色の土層が続いている土壌です。また関東から東北にかけては、黒
色の表土が30cm以上の深さをもつ黒ボク土(黒色土)が、傾斜の緩や
かな斜面にみられることもある。斜面下部のやや湿った土壌ではコナ
ラは良く成長する。

3、コナラのどんぐりの成分
ドングリとはブナ科樹木の果実の総称、特にコナラ属、シイ属、マテ
バシイ属樹木の実のこと。主な成分はデンプンですが、ドングリに特
徴的な成分はタンニンです。タンニンはタンパク質と結合する性質を
有する水溶性ポリフェノール成分の総称で、苦み、渋み成分として知
られています。緑茶にも多く含まれています。タンニンは化学構造の
観点から大きく二つのグループ(加水分解型タンニンと縮合型タンニ
ン)に分類されますが、ドングリに含まれるタンニンは主に加水分解
型タンニン。コナラ属樹木のドングリからはカスタラジン(castalag-
in)、ベスカラジン(vescalagin)などのエラグタンニン(加水分解
型タンニンの一種)が単離同定される。
デンプンを多く含みますが多くのドングリは強い苦みのために、タン
ニンを除かなければ食べることができない。例えばコナラのドングリ
からタンニンを除く(アク抜き)には水で12時間以上も煮沸がが必要。
一方、マテバシイ、スダジイのドングリはタンニン含有量がそれほ
ど高くなく、苦みもたいして強くはないので煎ったものは食用になる。
タンニンは植物にとっては防御物質であり、動物の摂食を防ぐ役割を
果たしていると考えられている。秋の味覚として食用にされるクリの
果実はタンニンをほとんど含まず容易に虫に食われる。

  木屑の焙煎、ドングリの焙煎を120℃➲500℃昇温させ、熱質量
成変化を連続的にガスクロマトグラフ分析し、コ-ヒ-豆焙煎の分析
結果と比較し、化合物物質収支の差異解析すれば。その実態が検証で
きる、その後、種々の木屑焙煎質量分析データーベースから、食品・
医薬品・建築材への利用販路推定樹形図を構築し、大規模な "持続可
能な
木屑適応プラットフォーム" が新たに誕生するかも。これは面白
い。

 




【ポストエネルギー革命序論 381: アフターコロナ時代 191】
現代社会のリスク、エネルギー以外も「分散時代」
環境リスク本位制時代を切り開く


先回の會澤高圧コンクリート株式会社から「構造物構築用の3Dプリ
ンタ」の特許が申請されていたので面白いので記載しておく。読者諸
氏は周知のことだが、「3Dプリンタ」は日本の発明なのだが特許申
請(「和牛」の商標登録のように)を忘れていたためなのだが、その
話し置いておいて、安全設計を前提の広大な敷地に工場・都市住宅な
どを建設向けに便利そうなので掲載しておく。
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❏ 特開2021-028159 會澤高圧コンクリート株式会社 構造物構築用の
   3Dプリンタ
【要約】構造物構築用の3Dプリンタ(1)は、軌陸車からなる第1
車両(5)と、該第1の車両に設けられている多関節ロボットアーム
(10)と、該多関節ロボットアーム(10)の先端に設けられてい
るノズル部(11)とから構成される。ノズル部(11)は多関節ロ
ボット(10)により駆動され、水硬化性硬化体が押し出されて構造
物を構築するようになっている。本発明は、第1の車両(5)が地面
に敷設されている軌道(3)上を走行するようになっている。さらに、
軌道(3)上には第1の車両(5)に付随して走行する第2の車両(
6)が設けられ、この第2の車両(6)には水硬化性硬化体を混練す
るミキサ(14)と、該水硬化性硬化体の材料を貯蔵するサイロ(1
3)とが設けた、構築可能な構造物の大きさ、つまり上面形状の大き
さに実質的に制約がなく、低コストかつ比較的短時間で構造物を構築
できる構造物構築用の3Dプリンタを提供する。

【選択図】  図1

 
【符号の説明】 1 構造物構築用の3Dプリンタ 3 軌道  5 第1
の車両 5a  無限軌道 5b   軌道用車輪 6 第2の車両  6a
無限軌道   6b 軌道用車輪  7 第3の車両  7a 無限軌道  7b    
軌道用車輪 10 多関節ロボットアーム 11 ノズル部 13 サイ
ロ  14 ミキサ  15 供給管 17 発電機
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安全を第一条件として担保に電力送給電が無線で、分散や集中が廉価
で安定で損失が小さく、堅牢で省力で保全可能なシステムが従来の有
線より優れているシステムの構築は喫緊の課題----従来型あるいは改
良された大電力の送給電システムは残すとしても----であることに間
違いないだろう。ここで、最近の技術動向事例(特表2020-519082)を
覗いてみよう。
WO2020/519082 ミリ波アンテナ ソニー株式会社
【要約】少なくとも1つのミリ波共振周波数を有する平衡平面アンテ
ナは、接地面、第1および第2のアンテナ素子、第2のアンテナ素子
を接地面に接続するアーム、第1のアンテナ素子に接続されて第1の
アンテナ素子に無線周波数を供給するための給電線、および第1のア
ンテナ素子を接地面に接続するバランを具備する。接地面、第1のア
ンテナ素子、第2アンテナ素子、アーム、給電線、およびバランは、
各々が基板上に配置され、且つ同一平面上にある。
【図の説明】
図1.従来のアンテナ構成
図2.図1の誘導表面電流を図示
図3.それらの放射パターン
図4.アンテナを含む電子デバイスの概略図
図5.本件のアンテナ配置図


図6.図5アンテナの別表現
図7.図5.6のアンテナの放射パターン
図8.図5.6のアンテナの動作パターン
図9.別のアンテナ配置図
図10.図9の動作特性のプロット図
図11.図9の共振周波数と表面電流表示.
図12.図9の共振周波数と表面電流表示
図13.図9の共振周波数での放射パターン


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特開2021-164259 送電装置および無線電力伝送システム TDK株
   式会社
【概要】下図1のごとく、第1交流電力が供給される第1交流電力供
給部に接続される第1導体と、前記第1交流電力と位相が異なる第2
交流電力が供給される第2交流電力供給部に接続される第2導体と、
を備え、前記第1導体および前記第2導体は長手方向を有し、前記第
1導体の長手方向と前記第2導体の長手方向とは直交せず、前記第1
導体と前記第2導体のうちの一方の長手方向の導体部分を通る長手方
向に対する垂直線が他方の長手方向の導体部分と交差し、基準の電位に
保たれる導体経路以外で、前記第1導体と前記第2導体とを接続する
導体経路が存在しない、または、基準の電位に保たれる導体経路も含
めて、前記第1導体と前記第2導体とを接続する導体経路が存在しな
い、無線電力伝送を効率的に行うことができる送電装置の提供。


【図の説明】
図1.第1実施形態の無線電力電送装置送電の一例
図2.同形態のA-A’切断端面の第1、第2導体の磁界分布の例示
図3.第1実施形態のB-B’線状の第1、第2導体の磁界様子の例示
図4.第2実施形態に係る送電装置の構成の例示


【図の説明】
図10.実施形態に係るYZ平面における放射パターン図例
図11.実施形態と比較例のXY平面における水平成分の図示
図12.実施形態のアンテナについて所定の起点・線分の図示
図13.実施形態と比較例について磁界強度の特性の図示
✔ 詳細検討は残件扱い(後日、再記載)。
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□ 5Gでは「ミッドバンド+ミリ波」のコスト効率が高い
▶2021.1.26 GSMAがレポートを公開、EE Times Japan
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なぜ欧米よりコロナ重症者・死者少ない?
“ファクターX”は日本人の免疫細胞か
▶ 2021.12.10 20:17日本テレビ系(NNN)
アメリカ・イタリアなどより低い日本の“死亡率”なぜ日本人が欧米
人と比べ新型コロナウイルスによる重症者や死者数が少ないのか――
これまで大きな謎とされてきまたが、ついに、その「ファクターX」の
解明につながるかもしれない研究結果が発表され。



最新の感染状況についてですが、厚生労働省によると9日時点の全国
の重症者数は、前の日から1人増えて27人。 最も多かった9月は2000
人台でしたので、3か月でおよそ100分の1まで減ったということにな
る、続いて、8日時点の各国のコロナによる累計死者数と死亡率につ
いて、アメリカは世界で最も多く、およそ79万人が亡くなっていて、
死亡率は1.6%です。 ほかの国の死亡率も、イタリアは2.61%、フラン
スは1.48%、ドイツは1.64%、カナダは1.64%などかなり高い数値となっ
ているが、日本は死者がおよそ1万8000人で、死亡率は1.06%。数値
上では、欧米諸国と比較すると少ないということがわかる。日本の死
亡率は低いのか。「理由があるはず」として、京都大学iPS細胞研究
所の山中伸弥教授が、この謎を「ファクターX」と名付けて、これま
で諸説がささやかれてきた。 こうした中、理化学研究所(理研)から
ファクターXにつながるかもしれないと発表。一言でまとめると、「
日本人の多くが持っている免疫タイプが、重症化を防ぐのに有効な可
能性がある」という。私たちがウイルスと闘うための武器は、大きく
分けて「抗体」と「免疫細胞」の2つある。いま、私たちが手にして
いる武器のワクチンは、この「抗体」を作り出すもの。ウイルスとい
うのは、体内に入って細胞に感染すると、どんどん増殖して、その結
果、重症化してしまいる。ワクチンは、ウイルスが細胞に感染しない
ようにブロックする抗体を事前に作っておく。



今回の研究結果は、もう1つの武器の「免疫細胞」に関するもの。誰
でも、ウイルスなどから身体を守ってくれる免疫細胞の一種「キラー
T細胞」を体内に持っている。例えば、普段ひく風邪も、ウイルスが
引き起こす。この風邪ウイルスが体内に入ってきて細胞に感染すると、
キラーT細胞がそれを察知して、感染した細胞ごと攻撃し、やっつけ
てくれます。感染した細胞が無力化されて、風邪が治る。 実は、こ
のキラーT細胞は、一度、風邪のウイルスが体内に入ると、それを記
憶していて、次にまた同じ風邪のウイルスが入ってくると記憶が呼び
覚まされて、また感染した細胞をやっつけてくれるという仕組み。



コロナに反応しやすい「型」日本人“6割”に
今回、理研の研究チームが注目したのが、細胞の表面にあるタンパク
質の「型」。細胞の表面には、たくさんタンパク質があり、その型は
数万種類にのぼります。人によって、持っている型の組み合わせが違
う。細胞はウイルスに感染すると、この型から感染したというサイン
となる物質を出します。このサインを手がかりに、キラーT細胞が感染
した細胞を見分けて、攻撃しやっつける。だから、このサインはとて
も重要です。 今回、研究チームが、数ある型の中から「HLA-A24」と
いう特定の型に注目して研究したところ、この型は新型コロナウイル
スに反応しやすいことがわかった。 実はこの型は、日本人の6割の人
が持っているが、欧米人では1~2割の人しか持っていないというもの。
"ウイルスに感染した細胞が目印を出す"とうが、この物質が新型コロ
ナに感染した時と、季節性の風邪に感染した時の物質がとても似てい
るということも新たにわかった。 普通の風邪は、人生で1回や2回ひい
たことがある。そのため、風邪をやっつけてくれるキラーT細胞は、皆、
体内に持っていて、眠っている。サインとなる物質が眠っているとい
うことは、新型コロナの場合でも季節性の風邪をやっつけるキラーT細
胞が呼び覚まされ、感染した細胞をやっつけてくれる。 キラーT細胞
が、風邪とコロナの両方をやっつけてくれると期待できる。  



今回、こうした特徴が日本人に多いということがわかったが、日本人
にだけ朗報というわけではない。この仕組みを詳しく研究すれば、ワ
クチンが打てない人や抗体ができにくい人、最近問題となっているブ
レークスルー感染やオミクロン株のような新たな変異株など、抗体と
いう武器が使えない、効かない場合にも有効な治療方法の開発につな
がる可能性がある注目されている。


図5 QYIペプチド反応性キラーT細胞受容体レベルでの交差反応性 
理化学研究所
【関連論文】
 新型コロナウイルスに殺傷効果を持つ記憶免疫キラーT細胞、理化
学研究所 ;
"Identification of TCR repertoires in functionally
competent cytotoxic T cells cross-reactive to SARS-CoV-2", Comm-
unications Biology
, 10.1038/s42003-021-02885-6新規タブで開きます
▶ 動画:https://youtu.be/OuBG3JySa-0

【ウイルス解体新書 93】


序 章 ウイルスとは何か
第1章 ウイルス現象学
第7節 新型コロナウイルス
7-1 新型コロナウイルスのライフサイクル
7-2 変異ウイルス
7-2-1 感染・伝播性の増加や抗原性の変化が懸念される新型
コロナウイルス(SARS-CoV-2)の新規変異株について (第9報)

 

第5章 税金とユダヤ教、キリスト教、イスラム教

               ユダヤ人の経済および政治について論じるならば、
               それは法外な税制との格闘の連続である。
                 チャールズ・アダムス、『税金の西洋史』

古代メソポタミアが文明のゆりかごだったならば、古代エジプトはも
う一つの文明のゆりかごであった。
紀元前一三〇〇年、ヘブライ人はすでに四五〇年前からエジプトに定
住していたが、富を増やし、人目を増やしたことで脅威と見なされる
ようになった。紀元一世紀に活躍したローマのユダヤ人学者のティト
ゥス・フラウィウス・ヨセフスによれば、ヘブライ人を「よく思わな
く」なったエジプト人は、「羨望のあまり、彼らの繁栄に手をつけた」。
「見よ、イスラエルの子らはわれわれよりも数を増やし、力をつけて
いる」と、聖書に引用されたファラオ(おそらくラムセスニ世)の言
葉にもある。「彼らを抜け目なく取り扱おう。今後さらに増えないよ
うに」
ヘブライ入を抜け目なく取り扱うとは、彼らに税を課すということだ
った。ハインリヒ・グレーツの『ユダヤ人の歴史』によれば、当時奴
隷にされることがあったのは、戦争捕虜か、犯罪者か、借金の返済や
納税を怠った者にかぎられた。歴史上よくあることだったが、これは
課税による弾圧であった。過酷な重税が諜されるようになった。エジ
プト人は「彼ら【ヘブライ人】の上に監督官を置き、重い負担をもっ
て彼らを苫しめた」。やがて、状況は悪化していった。「エジプト人
はイスラエルの子らをこき使った」と、出エジプト記に書かれている。
「漆喰仕事、煉瓦仕事、あらゆる畑仕事に従事させ、それらの重労働
をもって彼らの生活を苦しくした」モーセに率いられてエジプトを脱
出するころ、かつて自由市民だったヘブライ人はすでに奴隷と化して
いた。さまざまな意味で、奴隷制----自分の労働も、自分の身体さえ
も他人に支配される----は究極の課税形態なのである。モーセに率い
られたヘブライ人は、つらい労役から逃れるためにエジプトからシナ
イ半島に入った。つまり、史上初の税金亡命者になったわけである。
このあと、ユダヤHキリスト教の土台となる信念体系、モーセの十戒
が生まれた。ユダヤ教の根底には税にかかわる事情があった。

イエスと徴税人
税にかかわる事情をその根底に抱えている宗教は、ユダヤ教だけでは
ない。
ルカによる福音書によれば、「そのころ、皇帝アウグストゥスが勅令
を発し、すべての人から根を取り立てなければならないので、それぞ
れ自分の町に帰って根を納めるようにと命じた。ヨセフもガリラヤの
町ナザレを出て、ダビデの家系の町ベツレヘムに帰り……妻にめとる
はずのマリアとともに納税を済ませた。このときマリアは身ごもって
いた」

イエス・キリスト誕生のときにマリアとヨセフがベツレヘムにいたの
は納税のためだった。別のバーンョンでは、彼らがベツレヘムに行っ
たのは人口調査(大規模な税制改革のために皇帝アウグストゥスが実
施を命じた)のためだったされうが、徴税を目的とする人口調査だっ
たのだから同じことだろう。いずれにせよ。マリアとヨセフは納税の
ためにベッレヘムにやってきたといえる。そのとき徴税が行われてい
なければ、キリスト教が今日のように発展することはなかった。イエ
スの生涯においては、視にまつわる問題が何度か持ち上がっている。
それも当然である。彼は革命家だった。彼はローマの税制の不公平さ
を憂い、さかんに苦情を申し立てていた。とりわけ、ローマの神々を
まつった神殿以外の神殿に課されていた神殿税である。彼は、一部の
宗教から税を取り立て、自分の宗教からは税を取り立てないローマの
「地の王たち」について不平を訴えた。とはいえ、人びとにはきちん
と納税することを勧めている。「彼らを怒らせないようにしなければ」
どれほど不公平な税制であっても、納付を怠れば殺されるか、奴隷に
されるかだったので、支払うほうがましたった。

それから、イエスとファリサイ人の有名なエピソードがある。エルサ
レムの神殿にやってきたイエスは、境内で人びとが商売しているのを
見てぞっとした。そして、「そこで売り買いしている人びとを追い出
しはしめた」。境内から商人がいなくなると、イエスは説教を始めた。
驚くにあたらないが、ファリサイ人と律法学者はこれをたいへん不快
に思った。彼らにしてみれば、商売ができなくなれば、ローマ帝国の
ユダヤ属州総督として徴税の責任を負うポンティウス・ピラトに納め
るはずの金が入らなくなり、総督との友好関係が損なわれるのだった。
そこで彼らはイエスを厄介払いしようと考えた。だがイエスの民衆人
気は高かった。だから、彼を罪におとしいれることをもくろんだ。「
彼を言葉の罠にかけよう」としたのである。まずは彼をおだて、真実
に忠実で、人柄が立派で、分け隔てをしないといって褒めそやした。
それから、ユダヤ人が皇帝から要求されている税金を納付するのは正
しいことかと質問した。彼らは、間違っているという返事を期待して
いた。それにより、ポンティウス・ピラトに彼の身柄を引き渡す口実
ができるのだった。ルカによる福音書によれば、「彼らは手先を送り
こみ、義人のふりをさせ、彼の言葉尻をとらえようとした。そうして、
総督の権力および権威のもとに彼を引き渡そうとしたのだ」。

しかし、イエスはこのだくらみを見抜いていたようだ。「偽善者ども
よ、なぜ私を試すのですか」と彼はいった。「税金として納める金を
見せなさい」一人がデナリウス銀貨を見せると、イエスは「これは誰
の肖像ですか。誰の銘刻ですか」と試ねた。「皇帝のものです」とい
う答えに対し、彼はたいへん有名なこの言葉を返した。「それならば、
皇帝のものは皇帝に、神のものは神に納めなさい」偽善者どもは黙っ
てしまった。
このときは処罰されずにすんだイエスだったが、のちに税法を用いた
罠にはまってしまう。
ローマ帝国には「公認宗教」があった。ユダヤ教もその一つだった。
たとえば、ケルト人のドルイル教や、季節ごとに狂乱の祭典をくりひ
ろげるバッカス崇拝などの信者の揚合、たんなる迷信に過ぎないとさ
れ、残酷なやり方で弾圧されたり排斥されたりしたが、ユダヤ教は保
護されていた。だが、ローマ人ではない王の存在が許容されることは
なかった。ローマ帝国の権威に対しても、その税収に対しても脅威に
なったからである。ローマ法に定められていたところでは、誰であれ
王を自称する者は扇動の罪に問われた。
さらに、ローマ淑民ならば傑刑になることはなく、非ローマ淑民のみ
が傑朋になった。そして、この刑に処されるのは三つの罪のうちのい
ずれかを犯した者たった。奴隷による逃亡未遂、略奪もしくは海賊行
為、そして扇動行為である。イエスをポンティウス・ピラトの前に連
れてきた群衆はこう叫んだ。
「この男は国民を惑わし、皇帝への献貨「すなわち納税」禁じ、自分
ことこそ王なるキリストだといいした。イエスは、税金を納めないよ
う呼びかけたとされ、扇動の罪によって磔刑に処された。キリストの
誕生にも、死にも、人生そのものにも税にかかわる事情が絡んでいた
のである。

税とイスラム教の台頭
           民の貧困は、田家の没落と破滅の内接の原囚
           である。民の貧困のおも々原囚は支配者およ
           び役人の、富や財産をたくわえたいという欲
           望である。
                 アリ・イブン・アビ・タリブ、
                    第四代正統カリフ(656~661年)

イスラム教の創始者は預言者ムハンマドである。六三二年ににLくな
るまでに、戦いで勝利したこと抜け目なく交易路を専有したこと、万
民に平等な待遇を約束したことにより、アラブの譜部族の統一を成し
遂げていた。彼の死から三〇年足らずのうちに、イスラム国家は世界
屈指の人帝国の一つになった。そして、その後もさらに拡大しつづけ
た。この国家がこれほど速やかに、滞りなく成長した理由や経緯につ
いて、歴史家たちは議論を戦わせている。ムスリムの税務政策はその
すべてを解き明かしてくれる。
おそらく世界史上で用いられたどの布教ツールよりも、この税務政策
は多くの人びとを改京させている。
アブ・バクルはムハンマドの親友で、義理の父親で、後継者----初代
正続カリフだった。口ーマ帝国初期の、たいへん強い忠誠心を持ち、
きわめて組織的であった口-マ車と同じく、バクルの軍隊も志願兵の
みで構成されていた。彼の率いるムスリム共同体から北東方向には、
政治的、社会的、経済的、車事的に力を弱めつつあったササン朝ペル
シャがあった。がっては世界面指の大国だったササン朝ペルシャは、
ビサンツ帝国との数十年におよぶ戦争のせいで疲弊しきっていた。ム
スリム共回体から北西方向に位置するビサンツにしても、ほぼ同じく
らいに消耗していた。ペルシャ、ビサンツ、ローマの民はいずれも重
税に苫しんでいた。その負担を軽くしてやれば、多くの人がイスラム
の大義を支持するようになるに違いないとバクルは考えた。そこで、
「ムハンマドの宗教を受け入れ、彼の祈りを唱える者」には納税義務
を免除すると宣言した。
                        この項つづく



【概説】
貨幣、帳簿、市場……資本主義の基幹エンジンたる仕組みの歴史を紐
解く。そしてケインズ、ハイエク、フリードマンの思想へ。ほころび
始めたグローバル資本主義の未来を見据えながら、その本質に迫る。
【目次】
第1章 マネーの力(ハンス・クリストフ・ビンスヴァンガー『金と
魔術』一三七四夜;ニーアル・ファーガソン『マネーの進化史』一
六七夜 ほか)
第2章 資本主義の歯車(ジェイコブ・ソール『帳簿の世界史』一六
七六夜;ブライアン・リアマウント『オークションの社会史』七二九
夜 ほか)
第3章 君臨する経済学(間宮陽介『市場社会の思想史』一三三六
夜ジョン・メイナード・ケインズ『貨幣論』一三七二夜 ほか)
第4章 グローバル資本主義の蛇行(マンフレッド・スティーガー『
グローバリゼーション』一三五八夜;スーザン・ストレンジ『マッド
・マネー』一三五二夜 ほか)
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資本主義と自由⑦
 松岡正剛の千夜千冊 ⑭ 1676(2018.5.26)

さて、松岡は、ジョゼフ・コンラッド(1070夜)の『闇の奥』で、会
計こそが人間の罪と懊悩を隠すと書き、バルザック(1568夜)は『禁
治産』のなかで「会計は人間の心の惨めさを測るのに一番適している」
と登場人物に語らせる。さすがコンラッド、やっぱりバルザックだと
感嘆し、会計士は善意によって不運をもたらすか、あからさまな詐欺
師になるか、非常な官僚として登場するかそのいずれかになると書い
たのはチャールズ・ディケンズ(407夜)。『クリスマス・キャロル』
のスクルージとマーレイは共同経営者だが守銭奴でもあって、そのぶ
ん忠実に帳簿をつけている書記のボブ・クラチットは善意ゆえの薄給
に甘んじなければならない。善意か詐欺かは紙一重だというのである。
そういうディケンズは、自身、歴史上最初に著者印税を手にした作家
だったアイロニックに語る。けれどもいわゆる「会計」は、生活者の
知恵から生まれたしくみではなかった。イギリスやオランダの東イン
ド会社の登場や、その前のジェノヴァやヴェネティアやフィレンツェ
の交易コンパニアや商業ソキエタスとともに確立した。それも1300年
ごろに登場した複式簿記とともに、近世ヨーロッパで確立した紛れも
ない新機軸のシステムであったが、いま、経理や会計や財務処理や税
理についての用語は国際会計基準(IFRS=アイファース)にもとづい
ていて、かなり面倒なものになっている。監査も厳しく、担当者たち
も訳知りになりすぎる。しかし、もともとは日々や月々のさまざまな
増減現象を記録しておくための言葉が会計化していったはずなのだ。
けれどもどんな帳簿を見ても、勘定項目は記載されているもののほと
んどの言葉(一般用語、語句、フレーズ)はなくなっている。

本書は歴史学と会計学を修めた研究者が、充分な調査と考察のうえ、
2014年に書き上げた一冊。アメリカではすぐ話題になってベストセラ
ーに、日本でもこのあと似たような本が出回る。著者のジェイコブ・
ソールは南カリフォルニア大学で、学生とともにルイ14世の会計顧
問コルベールの会計改革がその後のフランス絶対王政のなかで蝕まれ、
私物化されていったことを調べているうちに、なぜ会計作業には「記
帳の欺瞞」と「財務の陥穽」があるのかに興味をもつようになり、帳
簿ノーテーションの一から十までの歴史に取り組もうと決意する経過
を挿入し彼自身読書歴----チャット・フィールドの『会計思想史』(
文眞堂)、ベルナルド・コラスの『世界の会計学者』(中央経済社)、
平林喜博の『近代会計成立史』(同文舘出版)、ジョナサン・バスキ
ンの『ファイナンス発達史』(文眞堂)、慶応の友岡賛の『会計の歴
史』(税務経理協会)や『会計学』(有斐閣)、渡邉泉の『歴史から
学ぶ会計』(同文舘出版)や、ごく最近になって刊行されたばかりの
『会計学の誕生』(岩波新書)などを披露する。

古代社会においてもすでにプリミティブな会計記録をしていた。在庫
管理のためだったが、メソポタミアには契約・倉庫・取引の記録があ
り、穀物の余剰計算をちゃんとしていたことがわかっている。のみな
らずシュメール人たちは会計のための粘土コインを作って、出荷した
物品や受け取った資材を数えるのに使った。トークンである。そのう
ち粘土コインに代わって粘土板そのものを工夫して、在庫を記録した。
この粘土板がノートの始まりだ。考古学者のデニス・シュマント=ベ
ッセラの『文字はこうして生まれた』(岩波書店)に興味深いヒント
が詰まっている。古代の会計はルールにもなった。バビロニアのハン
ムラビ法典第105条は、現金を受け取ったときにその場で確認し、
領収をサインしなかったばあいは、帳簿(粘土板)にその取引を記入
してはならないと定めていた。「目には目を、歯には歯を」はハンム
ラビ法典の有名な戒律でもあったけれど、実は在庫管理のスローガン
でもあったという(そうなのか)。人類がどのように「記譜の基礎」
を発見したのは、ひとつは神の言葉を刻もうとしたときに始まったは
ずだが、もうひとつは会計を発明した時に何かが始まったのであり、
シュメール人は楔形文字をつくるとすぐに、エジプト人はヒエログリ
フ(神聖文字)をつくってまもなく、それぞれの会計を始める。作業
記録として記帳したわけだ。文字やイデオグラムや数字の発明は「も
ともと会計のためだった」「会計記録が文字を誕生させた」という説
もあるくらいだ。工藤栄一郎の『会計記録の研究』(中央経済社)を
読むと、おもしろい。古代代ギリシアになると国庫が出現し、監督官
が登場し、何人もの記帳係が雇われ、都市国家や帝国や領国が会計と
監査をするようになったが、縷々その概歴を記載する。そして、1202
年に、歴史を画する一冊の本が刊行され、
ピサの商人レオナルド・フ
ィボナッチの『算術の書』(Liber Abaci)。フィボナッチはイスラム
文化が発明した代数術(アラビア数学)を学んで、「位取り」による
計算法を明示すると、加減乗除、分数、平方根、連立方程式の解法を
説き画期的な算術法ガイドとなった。

今日の複式簿記の基本は、かんたんにいえば一つの取引を、資産・負
債・純資産(資本)・費用・収益という5本立てにして仕訳する。そ
の5つの分野にわたる仕訳伝票で、資産の増加および費用の発生を計
上する左側を「借方」といい、負債・純資産の増加および収益の発生
を計上する右側を「貸方」とするのだが(ダブルページにするのだが
)、そのように整理できるまでには、帳簿の世界史としてはさまざま
な紆余曲折があり、古代このかた、簿記のしくみは「単式簿記」(sin-
gle-entry)によっておこなわれていた。それが、ここにおいて借方と
貸方による二重同時記録のアイディアが芽生え、ついに「複式簿記」
(double-entry)へと軌道転回しつつあった。継続計算するフローか
ら見る損益判定と、有高計算によるストックから見る損益判定が、両
面から突き合わされる可能性があった。これはインタースコアの歴史
にとっても、きわめて画期的だ。ちなみに、英語の“debit”を「借方
」と、英語の“credit”を「貸方」と日本語で名付けたのは、近代日
本のシステム改革の先頭を切った福沢諭吉。

さて、松岡は複式簿記が広がった理由のひとつとして、この記帳性に
は一種の哲学が伴っていて、それがメディチ家重視の人文主義や新プ
ラトン主義の実践とみなされたからではなかったかと考える。記帳が
「聖なる行為」とみなされたと。しかし本書は、そう見ない。コジモ
の長男ピエロ、次男ジョヴァンニまではまだしも、孫のロレンツォの
時期になるとあまりにもパトロネージュの度が過ぎて、さしものメデ
ィチ家にも翳りが見えていった事情を分析し、「新プラトン主義がメ
ディチ家を富から離れさせた」と書き批判する。乗馬・弓・ダンス・
歌・楽器演奏のいずれもこなした鳶色のロレンツォのような素封家が
(20代で当主た)、さまざまな芸術家たちのパトロンに買って出たか
らルネサンスがあれほど開花し、今日にいたる美術・芸術・音楽業界
の「ありかた」が生まれ、今日、世界各地にのこる夥しい宮殿や寺院
や公園を、われわれは「世界遺産」とか「観光資源」と呼んで利用し
ているが、その大半は君主や富裕家たちの豊饒で放漫な投資感覚によ
って培われた。メディチ家は消えたが、複式簿記は残る。1494年、つ
いにルカ・パチョーリが『スンマ』の中に複式簿記のあらましを記述。
中世イタリア語で書かれた『スンマ』の簿記論は、その後ヴェネツィ
ア式複式簿記の指南書として換骨奪胎され、ドメニコ・マンツォーニ
の『複式簿記と仕訳帳』(1540)に転用されると、多くの交易商人が
「借方/貸方」で取引と損益のなりゆきを考えるようになった。その
後、イエズス会も帳簿をつけ会計を学び、神聖ローマ皇帝カール5世
時代のハプスブルク帝国スペインが北イタリアの銀行家とともに複式
簿記を採用した。これによってスペインはアルカバラという5~14
パーセントの売上税を巧みに吸い上げた。
                        この項つづく 



【概説】未来の資産価値を現在に置きかえる帳簿が生まれたとき、世
界が変わった。アダム・スミス、カール・マルクス、マックス・ウェ
ーバー…。彼らが口を揃えて主張していた「彫簿」の力とは、一体何
なのか。これまでの歴史家たちが見逃してきた「帳簿の世界史」を、
会計と歴史のプロフェッショナルが、初めて紐解く。
【目次】ルイ一六世はなぜ断頭台へ送られたのか/帳簿はいかにして
生まれたのか/イタリア商人の「富と罰」/新プラトン主義に敗れた
メディチ家/「太陽の沈まぬ国」が沈むとき/オランダ黄金時代を作
った複式簿記/ブルボン朝最盛期を築いた冷酷な会計顧問/英国首相
ウォルポールの裏金工作/名門ウェッジウッドを生んだ帳簿分析/フ
ランス絶対王政を丸裸にした財務長官/会計の力を駆使したアメリカ
建国の父たち/鉄道が生んだ公認会計士/『クリスマス・キャロル』
に描かれた会計の二面性/大恐慌とリーマン・ショックはなぜ防げな
かったのか
【著者】ソール,ジェイコブ:1968年ウィスコンシン州マディソ
ン生まれ。南カリフォルニア大学教授。歴史学と会計学を専門とし、
これまでの政治歴史学者たちが見落としてきた重要な要素に注目して、
近代政治や近代国家の起源を探る研究を行う。

風蕭々と碧い時代
曲名: イマジン(1971年)   唄: ジョン・レノン
作詞&作曲: ジョン・レノン 

● 今夜の寸評:沸騰する欲望と対峙する知恵
ロシアも中国も赤色専制を引きずる民族国家主義国。世界にはこのよ
うな発展途上の開発独裁国家が多く存在する。その多くの政治手法は
野蛮である。ジョン・レノンはそうのように唄っている。


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