極東極楽 ごくとうごくらく

豊饒なセカンドライフを求め大還暦までの旅日記

資本主義と自由⑥

2021年12月09日 | 時事書評



彦根藩二代当主である井伊直孝公をお寺の門前で手招き雷雨から救っ
たと伝えられる "招き猫と、井伊軍団のシンボルとも言える赤備え。
(戦国時代の軍団編成の一種で、あらゆる武具を朱塗りにした部隊編
のこと)の兜(かぶと)を合体させて生まれたキャラクタ。愛称「
こにゃん」


1.ヨグソモネバリ
2.ヤマハンノキ
3.ヒメヤシャブシ
4.オオバヤシャブシ
5.ハンノキ

【樹木×短歌トレッキング:ハンノキ】



  綜麻形の林のさきのさ野榛の衣に付くなす目につく吾が背

                 井戸王 (万葉集1-19)

【訳】三輪山の麓の林の先に立つハンノキの真っ赤な木の葉があなた
   の着物に染まったようにあざやかに目に付きます。



井戸王: 天智天皇6年(667)の近江遷都のとき,額田王(ぬかたのおお
きみ)に 唱和した短歌1首が「万葉集」にある。この歌から,額田王
と接触し,宮廷につかえていた女性と推定されている。


新撰字鏡に、万葉集中に「榛」はハリと訓まれてハンノキのこと。染
色の材料に有用な植物である。ヤマトコトバに漢字を当てた。榛の実、
樹皮、葉を用い、アルミナ媒染では黄茶色に、銅媒染では黒味のある
金茶色に、鉄媒染では緑味を帯びた鼠色に染められた。また幹材を用
いるとアルカリ媒染では赤茶色、鉄媒染では紫味のある鼠色に染まる。
いろいろな色に化ける染料のため重宝されたという。

 




【ポストエネルギー革命序論 380: アフターコロナ時代 190】
現代社会のリスク、エネルギー以外も「分散時代」
環境リスク本位制時代を切り開く



自己修復するコンクリートとは
工事の環境負荷・費用・時間が大幅カット「インフラ長寿命化」
▶2020.4.24 EMIRA
最新の自律移動ロボットが導入されるなど、建設現場で活躍する「機
械」は今、自動化・最適化が進められているが、コンクリートやアス
ファルトといった道路に用いられる「素材」そのものにイノベーショ
ンは起きていないか。実は21世紀初頭から盛んに研究開発が行われて
きた。

北海道に拠点を構える會澤高圧コンクリートは、高耐久なコンクリー
ト配合設計技術で知られる。その技術力を生かし、道路などインフラ
の主要素材の課題を解決するためのプロダクトやソリューションを数
多く研究・開発してきた。中でも非常に興味深いのが、「自己治癒す
るコンクリート」。道路の舗装とひとくくりに言っても、構成する割
合はアスファルト約95%、コンクリート約5%。それに高架部の舗装
下部にはコンクリートや鋼材が用いられいるが、それぞれに課題を抱
えている。そこで、同社が取り組んだのが、主力製品であるコンクリ
ートの課題解決。自己修復コンクリート。『自己治癒するコンクリー
ト』を開発しようとした背景には、環境問題への懸念がある。コンク
リートの原料となるセメントを1t生産しようとすると、およそ0.8t
の二酸化炭素が排出される。日本のセメント消費量は年間で約4300万t。
そこから計算すると、約3400万tもの二酸化炭素が大気中に放出され
ていることになる。日本の場合、これは全産業の放出量のうち5~7%
に相当する。コンクリートはその頑強さから安全性に対して高い信頼
があり、道路などには欠かせない素材だが、ただ、その生産によって
地球環境に負荷をかけることは、今の時代に許容されるものではない。
そこで、コンクリートを長持ちさせ、二酸化炭素の排出を削減しよう
という目標を會澤高圧コンクリートは掲げ。加えて、日本ではこれか
ら道路などの補修工事が増加し、国や地方自治体の財政を圧迫するこ
とが確実視されている。仮に自己治癒するメンテナンスフリーのコン
クリートを生み出せれば、「サステイナブルなインフラ整備も可能」
となるだろうと考えた。



「自己治癒するコンクリート」の試験サンプル。中央の白い亀裂が
修復した部分➲ 画像提供:會澤高圧コンクリート

同社の担当責任者は、実は、そもそもコンクリートには自己治癒する
性質があるが、年数が経過するとその能力が低下して直りが悪くなる。
施工状況にもよりますが、基本的に5年から10年たてば、一度は補修が
必要になることが多い。そして、その原因の大半は『収縮』です。コ
ンクリートは、硬化の過程で20mの長さに対して0.5~1mm程度の収縮
が避けられない。結果、建造物全体にストレスがかかってマイクロク
ラックなどのひびが入り、そこから水と酸素が侵入して、骨格となっ
ている鉄筋部分を腐食させてしまう。鉄筋が腐食すると、さびの膨張
圧によってコンクリートがさらに壊れていく悪循環が起こってしまう。
會澤高圧コンクリートは、生物が持つ自己修復能力をコンクリートに
組み込むことで実現できるのではないかと考え、コンクリートの原料
となる石灰石(炭酸カルシウム)はサンゴなどのバクテリア(細菌)
などが起源だが、コンクリートの主成分であるセメントはアルカリ性
のために、日本国内でアルカリに強い耐性を持ったバクテリアを探す
ことが難しく、いずれのケースもアルカリにバクテリアが全て殺され
てしまう。情報収集の末にたどり着いたのが、オランダ・デルフト工
科大学のHendrik marius Jonkers博士の研究。博士は長らくバイオ技
術によるコンクリート自己修復を研究していたので、2017年に契約し
、共同開発をすることになった。研究により生み出されたバクテリア
「Basilisk HA」(以下、バジリスクHA)は、普段、胞子に包まれコ
ンクリートの中で休眠している。しかし、コンクリートにひびが入る
と目を覚まし、周辺にある乳酸カルシウムを分解して石灰石を生成し
ていく(下記、US8460458B2 セメントベースの材料と構造の治癒剤、
およびその
調製プロセス参照)

コンクリートの中にバジリスクHAを点在させると、ひびから侵入する
水と酸素が引き金となって生物活動を開始し、石灰石を排出してひび
割れを徐々に埋めていってくれる。バクテリア自体は自己複製を繰り
返しながら増殖し、ひび割れが修復して、水と酸素がなくなれば再度
休眠に入ります。そして、再びひびが入れば、同じように活動を再開
する。これが、自己治癒能力が高いコンクリートになるという仕組み。
実は、コンクリートのクオリティーは国によって異なる。特に日本の
コンクリートは世界的に高い水準にある、會澤高圧コンクリートは品
質基準を日本市場に合わせた上で、2020年内の実用化を目指している。
また、補修用で言えば、既に販売を開始している製品もある。水で溶
いたバクテリアを散布して既存コンクリートの自己治癒能力を補う液
状タイプ「Basilisk ER7」と、ひび割れた隙間に充てんするモルタル
タイプ「Basilisk MR3」の2種だ。「ER7は、コンクリートの小さなひ
び割れや傷に吹き付けて使用する。また、大きめのひび割れを補修す
るためにMR3も用意。この2つの製品は、既存のインフラの維持補修
や修復後の自己治癒化の実現で貢献できると考えている。そもそも日
本のコンクリート生産技術は非常に高く、20~50年は耐えられる性能
を持っています。しかし、多くのコンクリートインフラは建設から50
年以上が経過している。それをどうやってさらに10~20年伸ばすか。
研究や製品化を通じて、日本のコンクリートの長寿命化を実現してい
きたいと話す(細菌の寿命は百年とのこと)。

 
写真.バクテリア「バジリスクHA」のサンプル


写真.バクテリアは“餌”となる乳酸を取り込むと、“排せつ物”と
して石灰石を放出する(画像:會澤高圧コンクリート)。



図像.実際に自己治癒を行ったコンクリートの様子。バジリスクHAに
よる炭酸カルシウムの沈積によってひび割れが自動修復された。
(Before=図A、After=図B)➲會澤高圧コンクリート提供

アスファルトも自己治癒
コンクリートだけでなく、道路のもう一つの主要素材であるアスファ
ルトのイノベーションにも取り組んでいる。こちらは「自己治癒する
アスファルト」と名付けられている。車の走行、停止や始動、紫外線、
温度変化などが要因となり、アスファルトは劣化する。よって、定期
的な補修が必須となり、そこには多くのコストがかかる。日本では、
年間でおよそ6000~7000億円が投じられている。また、補修工事には
通行規制がつきもの。交通渋滞による社会損失は、時間的損失のみな
らず排気ガスによる環境汚染も大きな社会問題となっている。その課
題解決のために、自己治癒するアスファルトも研究しているとのこと。

まず、新たに道路を敷設する際に、アスファルト混合物(舗装用材料
の総称)の中にアスファルト(接着剤の役割)を再活性させるカプセ
ルとスチールファイバーを混ぜる。再活性カプセルの中には、アスフ
ァルトを柔軟にするオイルが入っており、小さなひび割れなど初期の
劣化は、このカプセルによって修復される。 本格的な補修が必要と
なったら、路面をIH(誘導加熱)機器搭載の電磁誘導用車両で走行す
る。中に含まれたスチールファイバーが加熱され、およそ80℃に達す
ると、接着材の役割を担うアスファルトが柔らかくなる。そうなれば、
舗装材料の大部分を占める骨材(砕石)との活着を取り戻し、路面が
復活するというもの。



【関連特許事例】
❏ 特開2018-080075 セメント混和材、セメント混和材の製造方法、セ
メント組成物およびセメント組成物の製造方法
【概要】モルタルやコンクリートのようなセメント硬化物には、乾燥
収縮や自己収縮のような体積変化、温度応力の作用や外力の作用など
によって、ひび割れが生じることがある。ひび割れは、セメント硬化
物の美観を損なうだけでなく、ひび割れからの水や酸素の侵入により
セメント硬化物の耐久性や耐力の低下(鉄筋腐食や漏水など)を招く
原因となる。近年、セメント硬化物にひび割れが生じた場合にセメント
硬化物自らがひび割れを閉塞するひび割れ自己治癒性能を有するセメ
ント硬化物が検討されている。セメント硬化物にひび割れ自己治癒性
能を付与するためには、セメント硬化物となるセメント組成物にセメ
ント混和材としてひび割れ自己治癒材料を含有させる。このようなひ
び割れ自己治癒材料としては、水酸化カルシウム、アルミノシリケー
ト、マグネシウムシリケート、炭酸塩、炭酸ジアミドなどが知られて
おり、その化学的作用などを利用して、セメント硬化物にひび割れ自
己治癒性能を付与しているが、しかし、ひび割れ自己治癒材料は、一
般に、吸水性、膨潤性あるいは水との反応活性が高いものである。し
たがって、このような材料をそのままセメント組成物に混和した場合、
フレッシュ状態のセメント組成物の流動性を低下させることになる
セメント混和材は、非イオン界面活性剤および多価アルコールの少な
くとも一方を主成分として含む第1の材料と、ひび割れ自己治癒材料
を含む第2の材料と、を含有することでセメント混和材は、非イオン
界面活性剤および多価アルコールの少なくとも一方を主成分として含
む第1の材料と、ひび割れ自己治癒材料を含む第2の材料と、を含有
する。の混合を必須としなくても製造することができ、セメント組成
物に混和した場合にもフレッシュ状態のセメント組成物の流動性への
影響が少なく、セメント硬化物にひび割れ自己治癒性能を十分に付与
できるセメント混和材およびそれを含むセメント組成物の提供する。

❏ 特開2014-114182 セメント系水和混合物の製造法、セメント系水
混合物、及びセメント系硬化物
【概要】下図1のごとく、本発明のセメント系水和混合物の製造法は、
セメント混合物が形成する高いアルカリ条件で粘度が高まり、ゲル状
態になるシュードモナス属細菌を培養した培養物から採取される多糖
体を、セメント練り混ぜ時に混合することを特徴とし、セメント系水
硬物の代表であるコンクリート、モルタルが打設された以降に自然環
境に曝されて生じる乾燥収縮あるいは自己収縮によって発生するひび
割れを防止でき、さらにはひび割れ後のひび割れを修復する自己修復
性を有するセメント系水和混合物の製造法、セメント系水和混合物、
及びセメント系硬化物を提供する。


図1.実施例におけるセメントと細骨材、水、流動化剤等を含む配合
に本多糖体を混合したセメント系水和物の自己収縮ひずみと混練後の
硬化材齢との関係

□ 特許請求範囲
【請求項1】セメント混合物が形成する高いアルカリ条件で粘度が高
まり、ゲル状態になるシュードモナス属細菌を培養した培養物から採
取される多糖体を、セメント練り混ぜ時に混合することを特徴とする
セメント系水和混合物の製造法。
【請求項2】請求項1に記載の製造法によって得られるセメント系水
和混合物であって、シュードモナス属細菌を培養した培養物から採取
される多糖体をセメント練り混ぜ時に混合することによって粘度が高
まりゲル化を促進させることができること特徴とするセメント系水和
混合物。
【請求項3】請求項1に記載の製造法によって得られるセメント系水
和混合物を硬化させたものであることを特徴とするセメント系硬化物。

US8460458B2 セメントベースの材料と構造の治癒剤、およびその
調製プロセス 
【概要】生化学的化合物(バクテリアおよび/または有機化合物)を
充填した多孔質骨材(膨張粘土または焼結フライアッシュ)は、材料
マトリックスに組み込まれた場合、セメントベースの構造の耐久性を
向上させることができる。さまざまな種類の発泡粘土(ブランド名、
LiaporR、ArgexRなど)やフライアッシュ(粉砕された微粉炭灰)(
LytagRなど)などの多孔質材料は、セメントベースの材料、特に軽量
コンクリートの製造用。しかしながら、これまでのところ、化合物ま
たは細菌などの治癒剤または修復剤のためのこれらの多孔質材料の潜
在的な貯蔵容量は、まだ提案または適用されていない。近年、セメン
トベースの材料、特にコンクリートの改良および/または修復のため
のバクテリアの適用がいくつかの研究で調査されている(Bangetal。
2001; Ramachandranetal。2001; DeMuyncketal。2005および2007;
Jonkers&Schlangen 2007a + b; Jonkers 2007)。これらの研究のい
くつかでは、バクテリアまたは派生酵素が外部から、つまり表面処理
システムとして、代謝または酵素によるバイオミネラル形成によって
コンクリートのひび割れを塞いだり、密封したり、修復したりた。報
告されたわずかな研究で、バクテリアがコンクリートマトリックスに
真に組み込まれ(たとえば、まだ流動性のあるセメントペーストと混
合することにより)、コンクリートの特性を自律的に改善する可能性
を調査。たとえば、コンクリート固定化自己修復剤として機能する
(Jonkers& Schlangen 2007a + b; Jonkers 2007)。バクテリアまた
はその胞子をセメントペーストに直接添加することの主な欠点は、こ
の手順がそれらの生存率を大幅に低下させる可能性がある[Jonkers&
Schlangen2007b]。裸のコンクリート固定化細菌の寿命が限られてい
る理由は、コンクリートマトリックスのアルカリ度が高い(pH> 12
)ことと、セメントの水和を継続している間、マトリックスの細孔径
(<1μm)が継続的に減少していることの組み合わせである可能性が
ある。治癒剤が有機化合物および/または細菌負荷多孔質粒子を含み、
その多孔質粒子が発泡粘土または焼結フライアッシュを含む、セメン
トベースの材料および構造における治癒剤の調製のためのプロセス。
さらに、前記多孔質粒子は無傷の球体であり、前記無傷の球体に由来
する破壊または粉砕された粒子であり、比重は0.4から2gcm-3である。


夜間駐機場で補修材を塗布する會澤高圧コンクリートの社員
▶2021.9.25 苫小牧民報

✔ 特許事例でもあるようにアプローチ方法は生物工学的方法だけで
なく硬化材料の最適化、硬化方式などあるが、免震・制震・耐震など
同じく、ロング・タームに耐えるものでなければならないので(百年
仕事)大変だが、開発当事者に感謝。また、木質材も同様に耐火・耐
震・防腐・意匠など課題があるが、會澤高圧コンクリートのように生
物工学的アプローチも共通するするところあり、面白い!


尚、現在新千歳空港を管理・運営する北海道エアポート(HAP)は、
コンクリートのひび割れ補修に関する実証実験を同空港で行っている。
會澤高圧コンクリート(本社、苫小牧市)が生産、販売する自己治癒
型コンクリート補修材を活用し、安全・安心な空港運営を目指すため、
関係者が試行錯誤を続けている。




 

【ウイルス解体新書 93】


序 章 ウイルスとは何か
第1章 ウイルス現象学
第7節 新型コロナウイルス
7-1 新型コロナウイルスのライフサイクル
7-2 変異ウイルス
7-2-1 感染・伝播性の増加や抗原性の変化が懸念される新型
コロナウイルス(SARS-CoV-2)の新規変異株について (第9報)




第5章 税金とユダヤ教、キリスト教、イスラム教





【概要】「金持ち」だって幸せになれない。息苦しいすべての人へ。
全英ベストセラー『平等社会』の著者、待望の続編。500超の文献
と国際比較データを駆使した渾身の研究。
【目次】
プロローグ―格差の大きな国で起こること
格差は私たちを不安にさせる
第1部 格差はこうして私たちの心を蝕む(格差は私たちの自信を打
ち砕く;格差で私たちは誇大妄想狂になる;格差は私たちを中毒に追
いやる)
第2部 社会階級にまつわる神話を壊そう(人は根っから利己的にで
きているという誤解;生まれつきの能力差が格差を生むという誤解;
上流の文化はすべて一流であるという誤解)
第3部 新しい社会の創出に取り組もう(なぜ格差と環境問題の解消
を同時に考えるのか;人類と地球のために、生産活動を見直そう)

【著者】
ウィルキンソン,リチャード :Wilkinson, Richard]
経済学者、公衆衛生学者。ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス
で経済史を学び、後に疫学を学ぶ。ノッティンガム大学メディカルス
クール名誉教授、ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン名誉教授。著
書『平等社会』はベストセラーとなり、『ニュー・ステイツマン』誌
の「この10年に読むべき本トップ10」に選出され、20を超える
言語に翻訳された。
ピケット,ケイト;Pickett, Kate
疫学者。ヨーク大学健康科学学部教授、同大学未来の健康センター副
所長。リチャード・ウィルキンソンとともに、イギリスの不平等を解
決するための組織イクオリティ・トラストを設立する(本データはこ
の書籍が刊行された当時に掲載されていたもの)



【概説】
貨幣、帳簿、市場……資本主義の基幹エンジンたる仕組みの歴史を紐
解く。そしてケインズ、ハイエク、フリードマンの思想へ。ほころび
始めたグローバル資本主義の未来を見据えながら、その本質に迫る。
【目次】
第1章 マネーの力(ハンス・クリストフ・ビンスヴァンガー『金と
魔術』一三七四夜;ニーアル・ファーガソン『マネーの進化史』一三
六七夜 ほか)
第2章 資本主義の歯車(ジェイコブ・ソール『帳簿の世界史』一六
七六夜;ブライアン・リアマウント『オークションの社会史』七二九
夜 ほか)
第3章 君臨する経済学(間宮陽介『市場社会の思想史』一三三六夜;
ジョン・メイナード・ケインズ『貨幣論』一三七二夜 ほか)
第4章 グローバル資本主義の蛇行(マンフレッド・スティーガー『
グローバリゼーション』一三五八夜;スーザン・ストレンジ『マッド
・マネー』一三五二夜 ほか)
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資本主義と自由⑥
 松岡正剛の千夜千冊 ⑬ 1374夜(2010.7.26)
銀行が「信用」を媒介にマネーの増殖のしくみを確立したのち、次に
マネーの著しい進化をもたらしたのは、「債券」(ボンド)によって
マネーのパワーを強化するようになった。例えば、日本政府が発行す
る国債には10年債というものがある。この10年債の額面は10万
円で、たとえば1・5パーセントの固定金利あるいは利札(クーポン)
が付いているとする。日本政府は次の10年間にわたって10万円の
1・5パーセントを払い続けることが義務づけられている。国債の購
入者は自分の好きなときに市場の趨勢を見て時価で債券を売ることが
できる。こういうしくみが保証できるのは、日本国家が積み上げてき
た強大な債券市場が支えているからなのだが、これはむろん国の負債
なのである。だからいつなんどき崩れてきてもおかしくはない。なぜ
こんな奇っ怪なものが歴史のなかに登場し、かつ一国の財政を危うく
支えるようになったのかといえば、もともとは戦争の費用を生み出す
ためだった。その原型はあったのか。あったと松岡は教えてくれる。

 13世紀の北イタリアでささやかに芽生えていた。そこへ14世
 紀から100年ほどのあいだに、フィレンツェ、ピサ、シエナな
 どの都市国家が交戦状態を続けることになった。ダンテもそのよ
 うな時代の最初期に生まれ、早くもその惨状を『神曲』に描いた
 わけである。そこで何がおこったかといえば、各都市国家が傭兵
 を雇った。傭兵は相手の都市を襲って金銀財宝を略奪するのがお
 仕事だ。当然、やったりやられたりで、あげくに各都市国家は財
 政危機に陥り、税金を倍増しても追いつかなくなっていく。たま
 に傭兵グループにジョン・ホークウッドなどという強靭なリーダ
 ーが登場すると、その功績に城や金銀を褒賞としてあげていくう
 ちに、この男の“持ち価値”のほうがそこいらの都市国家より大
 きくなることもある。かくして都市国家のなかには、そうした功
 績者に対する負債がヤマほど増えていくということが次々におこ
 っていった。そこでフィレンツェなどはやむなく強制貸付(フレ
 スタンツェ)をすることになった。富裕な市民たちから資金を強
 制的に貸付けさせるのである。そのかわり市政府は利子(インテ
 レッセ)を払う。これは当時のキリスト教社会が高利貸しを禁止
 していたことの網の目をくぐる方法で、教会法には抵触しなかっ
 た。こうしてフィレンツェは自国の市民を投資家に仕立てて戦時
 費用をまかなうようになったわけなのだ。そしてここに、債券の
 原型が発生していくようになる。これが国債の起源である。

なお、高利貸しを禁止してのはキリスト教社会だけでもなく、イスラ
ム教社会でもあったわけだが(➲中沢新一著『緑の資本論』)、債
券の歴史は戦争の歴史であり、戦争の歴史は債券の歴史であり、それ
がマネー・パワーの強化の歴史だったのであると。ロスチャイルド家
など、その時代ごとの政府の頭目たちに戦争をおこさせては債券市場
を操作して、どんどん膨れあがったようなものだった。そこまでいか
ずとも、債券市場によってしこたま儲ける連中は、いつの時代もいわ
ゆる「ランティエ」(利子生活者)として、世の中を賑わしてきた。


こうした「債券としてのマネー」がしだいに化け物のような様相を呈
することになったのは、第一次世界大戦のときに、各国によって厖大
な戦時国債が発行されたこと、敗戦したドイツにさらに厖大な債務を
生じさせたことにより。現代史は初めての大型インフレ(ハイパーイ
ンフレーション)をおこすことになる。同じことがドイツだけでなく、
オーストリア、ハンガリー、ポーランドでもおきた。ミルトン・フリ
ードマンが言うように、インフレは通貨がおこす不完全現象になった
のである。債券市場の乱高下と戦争の勃発と終結とインフレの動向は
つねに三つ巴で動きまわり。1989年のアルゼンチンの財政危機と
金融危機は、本書のみならず多くの経済書がその詳細を再現、ここま
でのマネーの進化には、決定的なデボルーション、つまり継承(生物
学的には「退化」という意味があるが)しうることを物語る、最も深
刻でわかりやすい例であると。銀行と債券。マネーは当初はこの二つ
を両輪にして、しだいに怪しげなアクティビティをもってきたのだが
もうひとつ、保険が加わり拍車をかけることとなる。保険の概歴をつ
ぎの記す。

 保険のルーツは、これまたイタリアになるのだが、14世紀初め
 にヴェネツィアやジェノヴァなどの海港都市で生まれた「ボトム
 リー」と呼ばれた船舶抵当貸借だった。商船のボトム(船体)に
 対しての保険である。この時期に「セキュリタス」(証券)につ
 いての記述もあらわれている。『ヴェニスの商人』でアントニオ
 が苦境に立ってシャイロックに苦しめられたのは自分の商船に保
 険をかけていなかったからなのである。保険の出現とともに、そ
 こに保険料が付随した。1350年代の保険料は保険金額の15
 ~20パーセントくらいで、15世紀になると10パーセントに
 下がった。ここに「リスク」に対するマネーのかかわりが発生す
 る。保険の出現とともに、そこに保険料が付随した。1350年
 代の保険料は保険金額の15~20パーセントくらいで、15世
 紀になると10パーセントに下がった。ここに「リスク」に対す
 るマネーのかかわりが発生する。17世紀の後半には専門の保険
 市場がロンドンにあらわれた。1666年のロンドン大火がきっ
 かけで、家を焼かれるならその損失をカバーするべくあらかじめ
 保険金をかけておくのを厭わないという風潮が、ロンドンの富裕
 市民に広まったからだった。その14年後にニコラス・バーボン
 が最初の火災保険会社を設立した。

そして、ほぼ時期を同じくして、エドワード・ロイドの海上保険会社
が生まれ、ここから海上保険市場が始まった。1774年には王立証
券取引所の中にロイズ協会が設立され、保険会社こそ、アングロサク
ソン・モデルの雛型になる。ロイズの保険のしくみは、会員制から始
まり、その会員が市場形成者となる。保険契約には署名が必要で、そ
こからアンダーライター(証券引受人)というルールが派生。保険取
引は、財源を確保してから拠出するという方式で、いまでも「ペイゴ
ー方式」(pay as you go)という。保険会社がその年の支払いを完済
し、そのうえ利鞘を稼いでおくためだった。生命保険もヨーロッパで
は中世から試みられている。教皇や総督や国王にかけた保険が最初だ
が、それがしだいに広まって疾病や死をリスクと認識する一族の意識
が高まった。こういう風潮を背景に「保険の思想」や「保険の数学」
が追求されたのは、1660年以降のことで、それはまるで熱病のよ
うな知識人たちによる推理合戦を示す。そして、今日の電算機仕立て
の"金融工学"の前哨戦が始まったと言いつつ、その中身をファーガソ
ンの6項目を説明する。

確率:当時の確率はブレーズ・パスカルと、パスカルの友人ピエー
ル・ド・フェルマーによって考察、保険概念の確立の基礎を与えた。
余命:1662年にジョン・グラントが『死亡調書の自然的および
政治的観察』を出版し、これがロンドンの公式死亡統計を充実させ、
ついでエドマンド・ハリー(ハレー彗星発見者ののハリー)がさらに
分析を加えて、生命保険の基礎を提供。
確実性:1705年、ヤコブ・ベルヌーイが「大数の法則」を発見
し、ここに、「同様の条件のもとでなら、将来におけるある事象の生
起(あるいは不生起)は、過去に観察された同一のパターンに従う」
という推論法則が知られるようになった。
④正規分布:1733年、アブラーム・ド・モアーヴルが「どんな種
類の反復プロセスも、平均の周辺や標準偏差の範囲では、ある曲線に
沿っての分布がある」ことを突き止めた。これがのちに「正規分布」
とか「ベルカーブ」とよばれた。
⑤効用:1738年、ヤコブの甥のダニエル・ベルヌーイが「あるも
のの価値(value)はそれについた値段(price)によって決まるので
はなく、そのものがもたらす効用(utility)によって決まる」と断じ、
さらに「富の微量な増加から得られる効用は、それ以前にその人物が
保有していた財の量に反比例する」と論じた。
⑥推測:1763年、トマス・ベイズは論文『偶然論の問題解決に向
けて』で、「どんな事象の確率も、事象の生起に応じた期待値を計算
すべき値と、その生起に期待されることの可能性との比である」とい
うことを記し、のちに「ベイズの定理」として金融確率世界やデジタ
ル・インターフェースの世界を席巻する公式を提唱。

そもそも保険は「リスクの先取り」である。ということは、これを「
社会のリスク」に適用することもできた。このことを早期に発想した
のはプロイセンのオットー・フォン・ビスマルクで、それが社会保険
法になって、「年金」が生まれた。ビスマルクが社会保険を実施する
気になったのは、多数の無産階層に、自分は年金を受給する資格があ
るのだと思いこませ、ドイツ全域に保守的な愛国心を生み出す。国家
社会主義の政治思想は社会保険や年金とともに生まれた。これをずっ
とのちの1908年に真似て、イギリス自由党の蔵相ロイド・ジョー
ジが導入することにしたのが老齢年金制度で、1911年には「国民
保険法」も成立。これらを突っ先に、イギリスは福祉国家構想に走り、
1920年代には失業保険を発動させ、さらに1940年代にはチャ
ーチルの「ゆりかごから墓場まで」の演説に象徴されるような、総合
国民強制保険国家のほうに大きく舵を切る。しかし、実はこのような
福祉国家の実験に最初にとりくんだのは日本だったというのが、ファ
ーガソンの見方だ。関東大震災が日本をして世界最初の保険国家に仕
立てたというのだ。実際にも日本人は大震災の起きた1923年に、
約7億円の生命保険新規加入をはたしている。それ以前にすでに、海
難・死亡・火災・徴兵・交通事故・盗難などに対する補償の提供に、
明治大正の日本人は熱心で、併せて13種類の保険が30あまりの保
険会社によって販売された。ここから先は、松岡論が展開する。太平
洋戦争にも日中戦争にもひどい失敗した体験から、民間の保険市場だ
けで国民を危険から守るのは難しいと判断、その代償対案として、①
日米安保同盟への道と、②国民皆保険による福祉国家の道めざしたと
いう近藤文二(1901年10月24日 - 1976年11月25日)----日本の経済学
者。大阪市立大学名誉教授。保険学、社会保障論を研究----の日本の
保険制度思想がすでにあった。

さて、将来の災難を予測してその準備をするには資金がかかる。その
資金を国の保険制度や福祉制度に頼るだけでは、個人の不安はなくな
らないし、企業の危険も減退しない。そこで、その資金を個人や企業
が掛け金の形にして分散させ、リスクをヘッジ(回避)することが可
能なはずだという考え方が浮上、広まっていく。そのような発想で組
み立てられたのが、リスク・ヘッジのマネタリー・モデルであり、そ
こから生み出されたのが金融商品や金融派生商品だった。先物市場の
拡張されていくが、マネーがマネーを生むという思想----デリバティ
ブによる金融契約には、オプションという巧妙な手口を生みだし、そ
れゆえ誰もが「イン・ザ・マネー」(金持ち)の状態に入れるという
不動産バブル時代の高配当の「養老年金」のように、のちに悪魔の手
法だとも言われた----たとえばコール・オプション(選択買付け取引
)の買い手は、オプションの売り手(ライターとよばれる権利者)か
ら、特定の商品または金融資産のあらかじめ同意した量を、一定期間
の権利行使期限のなかで特定の行使価格で購入する権利をもてる。買
い手はむろん、金融商品の価格が上がることを期待する。ということ
は、うまいぐあいに時価がもともとの行使価格を超えることになると、
その段階で、オプションはただちに「イン・ザ・マネー」の状態にな
り、次にこのオプションを買った連中も「イン・ザ・マネー」になっ
ていく----デリバティブをめぐる驚くべきマネーチェーンが生まれ---
逆に、権利行使価格で売るオプションも用意されている。コール・オ
プションに対して、プット・オプション(選択売付け取引)とされて
いた。3つめのデリバティブのスワップ(交換)では、金利の先行き
に関する二者のあいだの“賭け”が認められたようなもので大相撲の
力士たちの野球賭博どころではなく、純粋利子率のスワップでは、金
利の支払いをすでに受けている二者でこれを交換できるようにしたの
だから、変動金利の支払いを受けている者が、金利が低下するときに
固定金利と交換してしまうことができ、これも「イン・ザ・マネー」
が巧妙に保証されているかのようになった。

AとBの状態を予測してリスクヘッジをするだけなのではなく、Aが
Aでなく、BがBでない場合のデフォルトも組みこんだ。クレジット・
デフォルト・スワップでは、企業が自社発行の債券を債務不履行(デ
フォルト)とするリスクを保護するという説明名目だし、『インター
ネット資本論』のときにも書いたことだが、自然災害債券にあたるC
ATボンドのようなカタストロフィ債では、天候の変動をも「イン・
ザ・マネー」にもちこむ。もともとは保険会社が気温の変動や自然災
害の危険を分散するための工夫なのだが、これを生活者や利用者のほ
うから見ると、CATボンドの買い手が保険を売っていることになる
わけである。ウォーレン・バフェットがこれらを「金融の大量破壊兵
」と呼んだが当然(必然)だった。もともとは保険会社が気温の変
動や自然災害の危険を分散するための工夫なのだが、これを生活者や
利用者のほうから見ると、CATボンドの買い手が保険を売っている
ことになる。

こうした金融革命が13世紀このかた長きにわたったマネーの歴史を
一変させた。なぜなら、金融工学ではリスクをヘッジ(回避)できる
者とできない者とが確実に二分されていくわけで、これではどこかで
事態がひどいものになっていっても止められない。 かくて本書は後
半3分の2以降で、サブプライムローンのしくみを暴くというふうに
なっていく。ファーガソンはこれを「ストラクチャード・プロダクツ
」と名付け、その最も根本が「金融の証券化」に集中していることを
あげ、そこにあまりに勝手なマネー幻想が振り当てられていたことを
論る。つまり、金融の証券化は、もともと「リスクへの耐性が強い者」
に向けられたものが、それも「リスクに弱い者」へのリスクの押し当
てによって成立しているにすぎない。マネーの進化といったって、し
ょせん、そんな体たらくの現状に達したということになる。
                        この項つづく
風蕭々と碧い時代
曲名: 大好物 (2021年)   唄; スピッツ J-POP
作詞&作曲: 草野 正宗

  

「大好物」(だいこうぶつ)は、日本のロックバンド・スピッツの楽
曲。2021年11月3日にユニバーサルJより45作目のシングルとして配信
限定で発売された。シングル発売と同日に公開された映画『劇場版「
きのう何食べた?」』の主題歌に起用された。清潔な商店街アーケー
ドからBGMとしてピッタの音楽・言葉・リリカルなシティーJ-POPs。
花でも買って帰えろうかなぁ!? 

つまようじでつつくだけで壊れちやいそうな部屋から
連れ出してくれたのは冬の終わり
ワケもなく頑固すぎたダルマにくすぐり入れて
笑顔の甘い昧をはじめて知った
君の大好きな物なら僕も多分明日には好き
期待外れなのにいとおしく
忘れられた絵の上で新しいキヤラたちと踊ろう
続いてく
色を変えながら
吸って吐いてやっとみえるでしょ生からこんがりとグラデーション
日によって違う昧にも未来があった
君がくれた言葉は今じゃ魔法の力を持ち
低く飛ぶ心を軽くする
うつろなようでほらまだ幸せのタネは芽ばえてる
もうしばらく
手を離さないで
時で凍えた鬼の耳も温かくなり
呪いの歌は小鳥達に彩られてくやわらかく

● 今夜の寸評:沸騰する欲望と対峙する知恵


           


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