極東極楽 ごくとうごくらく

豊饒なセカンドライフを求め大還暦までの旅日記

データ改竄の謎解き

2015年11月05日 | 時事書評

 

 

  見たいなら見るがいいさ、でも君は跳ばなきゃならない   /   W.H.オーエン

 

The sense of danger must not disappear:
The way is certainly both short and steep,
However gradual it looks from here;
Look if you like, but you will have to leap.


Tough-minded men get mushy in their sleep
And break the by-laws any fool can keep;
It is not the convention but the fear
That has a tendency to disappear.


The worried efforts of the busy heap,
The dirt, the imprecision, and the beer
Produce a few samrt wisecracke every year;
Laugh if you can, but you will have to leap.


The clothes that are considered right to wear
Will not be either sensible or cheap,
So long as we consent to live like sheep
And never mention those who disappear.


Much can be said for social savior-faire,
Bu to rejoice when no one else is there
Is even harder than it is to weep;
No one is watching, but you have to leap.


A solitude ten thousand fathoms deep
Sustains the bed on which we lie, my dear:
Although I love you, you will have to leap;
Our dream of safety has to disappear.

 

                                             Leap Before You Look
                              W. H. Auden

 



   公孟 -儒者との対話 / 『墨子』

 

● 貸し借りはない


   墨子に師事する青年がいた。健康で聡明な青年であったので、墨子は、もっと勉強させたいと思っ
 た。
 「もう少し勉強を続けなさい。そうすれば、役人に推薦してあげるから」
  墨子にこうすすめられて、青年は、その気になった。一年経つと、かれは墨子に約束の履行をせま
 った。だが、墨子はこういった。
 「役人に推薦することはできない。おまえも魯の国にあった話を知っているだろう。
  魯の国に五人兄弟がいた。父親が亡くなったとき、長男は酒飲みで、葬式を出そうとしなかった。
 そこで弟たち四人は一計を案じ、兄に向かって、
 『父の葬式を出してください。そうすれば酒を買って上げますから』
  ともちかけた。この話に乗った長男は、さっそく父親の葬式を出した。葬式が終わると、かれは弟
 たち四人に約束の履行をせまった。弟たちの返事はこうであった。
 『酒は、買うわけにはいきません。あの葬式では、あなた自身が父親を葬ったと同時に、わたしたら
 四人も父親を葬ったのです。つまり故人はわたしたち四人だけの父親ではないわけです。もし、あな
 たが葬式を出さなかったとしたら、あなたはそれこそ世間の笑い者になっていたでしょう。だから葬
 式を出すようにすすめたのです。葬式を出すことによって、あなたは子としての義務を果たした。同
 時に、わたしたちも、子としての義務を果たしたのですから、その点であなたもわたしたちも立場は
 同じで、貸し借りはないはずです』
  おまえも、この長男と同じだ。もし、勉強を続けなかったら、それこそ世間の笑い昔になっただろ
 う。わたしがすすめたのは、そのためだ」
 

 

 

【データ改竄の謎解き】

10月15日、三井住友建設が施工主となって建設していた横浜市のマンションのパークシティLaLa横浜
の建設に際し、当社の工事の一部に不備があったことと、施工報告書の一部データが無断で書き換えられ
ていたことが明らかになった。
杭工事を請け負った旭化成建材が施工報告書のデータの一部を転用・加筆
したことを、同社の親会社である旭化成が
14日に明らかにしていた。同マンション4棟中の1棟が傾斜。
杭工事のデータ改ざんが新たに判明。一部の杭で、杭先端を支持層上で固定するセメントミルクの量を決
める際、異なる杭のデータを転用していた。
この問題を受け、国土交通省は23日、不安解消を目的とし
て、同社が杭打ちを行った物件、全国3040か所について、住民や自治体にデータの情報提供をするよ
う命令。28、釧路市の北海道営住宅の建設でもデータの流用・改ざんを行っていた。この工事の責任者
は横浜市の工事とは別の人物で、データ改ざんの不正行為が社内ぐるみで行われたとみられる。29日の
報道では
、この杭のデータ流用問題は、同社が請け負った工事以外でも行われたとみられとのこと。杭工
事の関係者に複数取材では、計測機器の不具合やデータ紛失などを理由に、流用が多数行われている。同
社の親会社
旭化成の平居正仁副社長は、現場責任者が関わったくい打ち工事41件のうち、19件で、デ
ータが改ざん。また全国の請負物件中、百件以上で改ざんを行った疑いがあるとしながら「管理する体制
チェックする体制においても、問題があったんではないか。上司その他の関与のしかたについても、不十
分なところがあったのではないか」と語っている。 

● 低排土・高支持力杭工法とは 

旭化成建材工業が採用した場所打ちコンクリート杭工法=低排土・高支持力杭工法(DYNAWING)とは、既製コ
ンクリートパイル事業(中小型杭事業)して
「ATTコラム」など、先進性を追求した高付加価値の製品・ 施工技だとさ
れるもの。 杭施工時の発生残土量は、従来の埋め込み杭工法に比べ、大幅に低減(低排土)、杭の設計支持力が
大きくとれる(高支持力)な杭工法。 高付加価値製品である「DYNAWING」により、主力事業分野である既製コン
クリートパイル事業を 強化したATT(アット)コラム(Asahikasei-Tenox-Technology Column
)は、(株)テノック
ス社とで共同開発される。その特徴は次の3つ(下図クリック)。

(1)発生残土を大幅に低減
(2)高い設計支持力を実現
(3)安定した高品質の施工






● 支持層の判断と問題点の推定

上図の旭化成建材の社内調査報告資料によると、(1)オーガーモーター電流値の変動解析による支持
層の推定、
(2)セメントミルク注入量の計測記録、(3)それと、支持地盤の深さとと土質記録の粉
飾あるいは改竄され可
能性があり、杭のうち8本が不健全で、6本が支持層に未達、2本が到達してい
るが支持層への挿入が不十分と同
社は認め、想定要因として(1)到達確認を怠り、(2)支持層の急
激な変化による誤認によるのではとしている。

ただし、(2)は土質と電流値に変動で判別できそうに思えるがそこはわからない。特に土質サンプル
が採取されチェ
ックできていれば問題は解決――異常検出→フィードバック→施工追加(現在の工法変
更是正)――できるだろう。
こう考えていくと、東洋ゴムの免震ゴムの検査データ改竄が、工場サイド
で発生しているのに対し、今回は、工事
現場で発生している違いがあるものの、その背景に高層建造物
や対防災改造という建設業界インフレ模様と
グループの好況感が企業規律を弛緩させていた、あるいは
むき出しの資本主義風土(「早よせ!安せ!」)を蔓延させたとも考えられる。また報道の中で「安全
率」が出ていたが、ここにも分析のメスを入れる必要がありそうだ。

 



※ 基礎工法概説図


―――
表 基礎工法の種類と場所打ちコンクリート杭工法の種類

ここで、既製杭とは工場で製作された杭のこと。これに対し、現場で作られる杭を『場所打ち杭』という。
場所打ち杭とは、現場で組んだ円筒状の鉄筋を掘削した地盤の中に落とし込み、後からコンクリートを穴
の中に流し込み、固めて杭を形成するものである。地面を掘削する際の方法により工法が異なり、施工可
能な杭長に関係する。

● 場所打ちコンクリート杭工法の種類

1)アースドリル工法

本工法は、ドリリングバケットを回転させて地盤を掘削、バケット内部に収納された土砂を地上に排土す
る方法で掘削を行う。
孔壁は、表層部では表層ケーシングを用い、それ以深は安定液で保護。掘削完了後
所定の形状に製作された鉄筋かごを孔内に建込み、トレミー管でコンクリートを打込むことにより杭を築
造する。

 

2)オールケーシング工法

本工法は、ケーシングチューブを掘削孔全長にわたり揺動(回転)・押込みながらケーシングチューブ内
の土砂をハンマーグラブにて掘削・排土することで掘削し、所定の深さの地盤に達したら孔底処理を行い
鉄筋かごを建込み後、トレミーによりコンクリートを打込み、コンクリート打込みに伴いケーシングチュ
ーブおよびトレミーを引抜き回収を行う工法である。

3)リバーズ工法

本工法は、ビットを回転させ地盤を切削し、その土砂を孔内水とともにサクションポンプまたはエアリフ
ト方式等により地上に排出することで削孔し、孔壁の保護は、表層部ではスタンドパイプを使用し、スタ
ンドパイプ下端以深では、孔壁に形成されたマッドケーキと、孔内水および地下水の水頭差により行う。
大径かつ大深度掘削に対応でき、特殊ビットを使用しトルクを増すことで岩盤の掘削も可能である。


4)BH工法

BH (Boring Hole) 工法は、強力な動力を持つボーリングマシンを使用し、ボーリングロッドの先端に取
り付けたビットを回転させ、ノーケーシングで掘削する工法です。掘削には安定液を使用し、これをグラ
ウトポンプでビット先端に送り込み、掘削された土砂を上昇水流によって孔口に運び、サンドポンプで排
出する「正循環」方式となっている。掘削終了後はスライム処理を行い、場所打ちコンクリート杭の造成
あるいは既製杭の建て込みを行うことができる。既存の杭掘削工法の中で、最もコンパクト性にすぐれた工
法。特徴は① 施工機械が小型のため、狭小な敷地での施工が可能。②高架下や屋内など、作業高さが低い
場合でも施工が可能。③進入道路が狭い場合でも、軽量で小型であるため、搬出入が容易に行える。④マ
シンの組立・解体に重機を必要としない。⑤施工時の騒音・振動がきわめて低レベルである。



5) 深礎工法

本工法は、現在施工されている場所打ち杭の中では最も歴史が古く、掘削は人力または機械により行いつ
つ、鋼製波板とリング枠(主にライナープレート)で土留めを行う。孔内で鉄筋を組立て、土留め材を取
り外しながらコンクリートを打設し杭を形成する。第一生命ビルや銀座松屋の工事を施工した木田保造の
発案によると言われその特徴は、①
人力掘削なので狭い敷地や傾斜地又は根切り面からの施工が可能。②大
口径で大深長の杭施工が可能。③湧水が多い場合や崩れやすい地盤には適さない。④無振動・無公害である。

 

 

 

 

                                  秋深き隣は何をする人ぞ       /   松尾芭蕉

 

 

 

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