こうやっているか、それとも
友人のモリスと山猫撃ちに行くか、どちらか。
今朝の六時に詩を書こうと頭を
捻っているか、あるいはライフルを
手に猟犬たちのあとを
走っているか。
心臓がその檻の中で跳びはねる。
僕は四十五歳だ。そして無職。
この生活の贅沢ぶりを想像してみて欲しい。
ひとつ想像していただきたい。
彼がもし明日行くとしたら、僕は一緒に
行くかもしれない。行かないかもしれないけど。
レイモンド・カーヴァー 村上春樹 訳
『補助金』(The grant)
【アングラマネー】
支配としての経済・財政学は、つまりは歳入を増やす知恵は近代国家の成立以
降、実に複雑にして、巧妙に考え出されてきたことは“税の歴史”を学べば誰
にでもわかることだろう(『消費税制』WEEF[自治体と行政])。特に税の捕捉
方法とその捕捉率の関係を考えることは実に面白い。畢竟、その国の住民と支
配階層との織りなす経済文化水準を反映させている。実際、サラリーをもらっ
てたころは、社会保険料や所得税の支払い額が、階段状になってるので、その
変節額(率)にくるとたちまち時間外労働をやめてしまうということを管理部
門を中心に周期的になされていた。可笑しいものだと思い、お構いなし仕事を
をしていた。年収額が昨年より多いのに税引きは少ないという矛盾だが、やる
べき仕事はやると割り切っていた。電子機器やコンピュータが普及したという
のに馬鹿みたいだと。いわゆる「クロヨン」もいいかげんなものだ。そこで質
問。“ちゃんと税金を申告し納めている自営業者は何%いてますか? 中小零
細企業と大企業では勿論異なるだろうがどの程度なんだろうか。1Q以下つま
り15%以下と思うひとは手を上げてください。”
あなたなら何%だと答えるだろうか?
前出の高橋洋一著の『日本は財政危機ではない!』で、いわゆるアングラーマ
ネーの捕捉で消費税2%分の税収がまかなえると書いている。こうした国の捕
捉の網にかからない、いわゆるアングラマネーは、どこの国にもあり、名目GDP
5~30%程度だといわれている。日本の名目GDPは約五百兆円。最も少なく見積
もっても、25兆円のアングラマネーが隠されている計算になる。これを全部捕
捉できれば、名目GDPが25兆円アップし消費税率に直せば2%分に相当。この
アングラマネーの捕捉は国民総番号制を導入すれば可能だというがそんなこと
は誰でもわかっていることだが、実現できるのかという疑問だ。国民総番号制
による「プライバシーの侵害」のリスクと「国民生活」のメリットを図る必要
があるが、これは情報漏洩などの刑法を改定し科料額を大幅に引き上げること
などで対応できる。税金だけでなく、保険料や年金も一元的に管理システム(
憲法25条番号制」とわたし(たち)は呼んでいる)すれば、「宙に浮いた年金
問題」も現在のようにはこじれなかったと高橋は回顧する。
年金データの管理の杜撰さに薄々気づいていた私は、2001年当時、経済財
政諮問会議に「社会保障個人勘定案」を提出した。案の趣旨を簡単にいえ
ば、年金も社会保険も番号を元に一括的にデータ処理しようというものだ
った。だが、残念ながら厚労省は事務的な問題が多いと反対し、実現しな
かった。その結果はどうか。案の定、2007年になって年金納付記録の不備
が発覚し、国民を不安に陥れている。改めて基礎年金番号を整理して、管
理をする方向になったが、遅きに失した感がある。せっかく年金記録問題
が浮上してきたのだから、災い転じて福となす、である。アングラ経済を
許さないためにも、番号制を導入して、税も社会保障も一括管理すべきだ
ろう。このとき、基礎年金番号は二重発行などでいい加減なので「住民基
本台帳ネットワーク」の番号を活用すべきだろう。戸籍抄本が簡単に取れ
るなど、住民への行政サービス向上のため、200億円から300億円の予算を
投入してつくりあげた住基ネットなのに、ほとんど役立っていない。これ
ではあまりにももったいないので、有効利用したほうがいい。住基ネット
の番号を元に、すべてオンラインでつないで、年金の保険料の払い込みも、
税金の申告も全部一括管理する。いま進めているねんきん特別便で確認し
た記録も一元的に管理すれば、今後、現在のような年金問題も起きない。
同上『日本は財政危機ではない!』
さらに、高橋は、現在のように医療保険や年金は厚労省・社会保険庁、税金は
国税庁というシステムではむずかしいが、一元化すれば、医療保険の保険料や
年金も、個人単位ではなく、家族単位で税金とともに徴収できるので、家族の
和も保たれると提言している。これは大変有り難いことだが、政府も国民番号
制導入の準備を進めている(内閣府『社会保障・税番号大綱』)。
さて、電子政府は時間の問題ではあるが、倫理の構築は実施以降の検証となり
また、そのフィードバック如何となるが、順位付けにおいていは、最上位の課
題として工程に組み込むのが正論で、次に「税と一体の社会保障」論議なる。
さすが、高橋洋一も書いているように、いわゆる、導入を是とする“良識派”
が少ない自民党政権下では実現できないのだろう。
【直間比率の見直し】
つまりは、税制の簡素化と公正化を見直せということになる。次に、直間比率
について考える。問題提起は3つあり、その1つが産業構造、2つめは税率で
3つめが直間比率である。1つめは、消費税が導入された1988年当時は、第3
次産業の伸長が著しく高度消費主義社会(=前社会主義社会)に突入しており
「広く薄く」をキャッチフレーズとして展開されてきた時代だが、新世紀に入
いっても第3次産業の伸び率が続伸傾向にあるが、円高で製造業が海外流失し
ない限りおいて、伸長率が低下傾向にあるがこれは何を意味しているのだろう
か? 不況感や低成長によるものか? それとも第4次産業の乖離を意味する
のか? 少子高齢社会(人口減と医療費の上昇は裏腹だが)によるものか?
詳細解析は後日にして、いずれにしても、間接税額の伸長の停滞の不安が残る。
2つめの税率では、スウェーデンをはじめとして20%を超える国々では“厚く
広く”が常識で、誤解を恐れずに言うとこの数字は、社会の貧しさや国力の脆
弱を意味しているのではないかという疑問であり、日本は良くやっているとい
るという裏返しにもなる(「だから赤字国債が減らない」との口実にしない)。
社会保障を充実するのではあれば、税率の上限を設定しておく必要があるので
はないか。
次に、直間比率だが格差が拡張する傾向にあれば、直間比率を直接税へのウエ
イトを増加させるように自動的に切り替えるアルゴリズムを導入できればと考
えている。前述の税率のリニア曲線化と同じ発想だが電算技術の進歩と高度情
報化に伴い経済現象の数値解析から相関を自動算定するというもので、例えば、
格差率と不平等感(=疎外感)と経済成長率の関係式求めるという風に政策の
高次化を進めることができればと考える。
【デジタル・タックス】
ここでは、増税の前の税制改革(=デジタル・タックス化)というミクロ政策
の税制に考察しただけである。マクロとしての金融政策は「デフレ脱却」、財
政政策は「高度国土開発」を創造的国家財政策の基本とし、国家機構の抜本的
見直し、地方自治拡大、機動性重視の外交安全保障などを基本として新時代を
切り拓くことはいうまでなもない。改めても言うまでもないが、有効な金融政
策が打てないなら、例えば、日本銀行の解体(『日銀を解体するには』)など
抜本的な改革の選択肢は重要である。
この項了