極東極楽 ごくとうごくらく

豊饒なセカンドライフを求め大還暦までの旅日記

築城三年落城三分

2011年09月29日 | 時事書評

 

 

 

 


パナソニックがパソコンや携帯電話などに使う民生用リチウムイオン電池の
グループの国内生産拠点を、2012年度末までに現在の8工場から4工場に半
減させることが29日、分かった。生産を継続する住之江工場(大阪市住之江
区)の増産計画も凍結。国内生産を縮小する一方、今後は中国での生産比率
を現在の1~2割から5割程度に拡大して、コスト競争力を高めると報道し
た。それによると同社は京都工場(京都市南区)を閉鎖するほか、和歌山工
場(和歌山県紀の川市)では基幹部品以外の生産を中止する。守口工場(大
阪府守口市)と洲本工場(兵庫県洲本市)はすでに民生用リチウムイオン電
池の生産を停止。守口は研究開発に特化し、洲本は自動車に搭載するニッケ
ル水素電池を生産する。住之江工場は1期、2期工事の合計で1千億円の投
資を計画していたが、2期工事は中止。関西電力から借りていた用地は返還
する方向で交渉に入る。今後、国内工場では民生用のリチウムイオン電池よ
りも付加価値の高いハイブリッド車(HV)向けなどの生産比率を高める。

一方、中国で3カ所目となる新工場を来年4月に江蘇省蘇州市に完成させる
予定。中国の既存工場でも生産能力を拡大している。現地の安価な部材を活
用するなどでコスト競争力を高め、サムスングループなどライバルの韓国勢
が急速にシェアを伸ばしていることに対抗するとのこと。

 

この話は、2009年のリーマンショック以降の世界的な景気後退で大幅赤字に
転落したことを受け、全世界で最大1万5000人の人員削減を実施し、27工場を
閉鎖すると発表(2009年3月期の連結最終損益が、需要減退と円高を受けて、
3800億円の純損失)した流れ中にあり、ギリシャの財政破綻を発端とした欧
州経済危機と米国の景気後退を背景とした急速な円高が拍車をかけた。思え
ば、ソニーが1995年に出井伸之が社長に就任し経営の欧米化にいち早く着手
し、音響画像機器を中核とした工業製品メーカから金融事業、画像事業など
の多角経営や外国経営者の抜擢など計画を推し進めてきたことから、家電・
住宅関連業種の総合メーカに特化してきたことから
単純に比較できないが、
水道哲学・模倣改良技術開発・家族主義的企業遺伝子にどっぷり使ってきた
違いが今日の状況の差異を際だたせているかのように見える。

批判するだけでは簡単だ。良くも悪くもそれほど急速に状況が変化している
世界で、一企業の趨勢は益々経営の質を問うている。言い換えれば、付加価
値の中身が厳しく問われる世界である。“築城三年。落城三分”とのわたし
(たち)の喩えは正鵠を射ていて、成功体験に酔いしれる時間はなくなりつ

つある。


 

【逆農地解放】

 

 私は「逆農地解放」を実施すればいいのではないかと考えている。戦後、
 GHQが行った大地主から土地を取り上げ、小作農に分け与えるという
 政策は、非常にまずかった。農地を分割したために非効率な生産になり、
 意欲のある農家が大規模農業を経営する余地を著しく狭めた。そして、
 サラリーマンとして安定した収入を得ながら農業を副業とするだけの兼
 業農家を多数生み出した(中略)少なくとも、生産性が低いままで土地を
 持ち続けるインセンティブがある税制は抜本的に見直したほうが良また、
 農地をいい加減な運用で他用途に転換することを認める現在の農地法の
 規制も抜本的に見直すべきだ(中略)景観規制を強化して、農地は基本
 的に転換できないということにし、仮に転換する場合は、それまでに減
 免されていた税金をすべて過去に遡って転売利益の範囲内で課税すると
 いう制度なども導人すべきだ。これが、平成の「逆農地解放」だ
。「土
 地を解放して小規模農家から大規模農家へ」という標語になるだろうか。
 兼業農家にも専業農家にもただの農家というレッテルを貼って、同じよ
 うに扱い、結果的に日本の農家と農業をだめにしている農業政策は即刻
 やめたほうがいい。


                    「逆農地解放」を断行せよ
                    古賀茂明『日本中枢の崩壊』


忙中閑なしなのだが、古賀茂明の本に眼を通し、いきなりびっくり。GHQ
の、明治維新の地租制導入に匹敵するほどの、日本の為政者がなしえなかっ
た革命的な大事業だと考えているわたし(たち)には奇異に映る。一昔前は
真っ白な米の飯が食えるなんて、それこそ夢の出来事だったのだから何おか
いわんやだと。その後、戦後復興、高度経済成長の原動力になる法整備がな
され、輸出産業の成長とともに米国側からの農産物輸入圧力の反作用にみま
われ、歪めてきたのは歴代の政府自民党であったのだが、そのことが脈絡か
ら消えて短絡している。


 菅内閣は2011年6月までにTPP参加の方針を決めるとしたが これに対
 して農協や多くの農家が反対の大合唱を始めた。その間にもアジア諸国
 は欧米などとFTAを締結し、TPPの交渉もどんどん進んだ。このま
 までは、日本の製造業は近隣アジア諸国に比べてハンディを負ってどん
 どん苦しくなる。農業政策をなんとかしてくれないか。地方では、政府
 の農業政策に対する怨嵯の声が渦巻いていた。日本の農業基盤を強くす
 るためには、まず米の競争力を上げなければならない。そのためには日
 本の米作の状況を正しく把握する必要がある。日本の米は778パーセント
 の異常な高関税で保護されている。この関税がゼロになれば、輸入米の
 価格が大幅に下がるのは確かだ。その結果、日本の米作農家は滅んでし
 まうというのが農水省の言い分だ。しかし、その根拠が曖昧だ。米の内
 外価格差が四倍だというときに使っているデータが、日中間の10年ほど
  前のものだという。しかし、現実には、中国では農産物価格が高騰して
 いるのに対して日本では米価が下落。その結果、2009年の輸入価格で見
 る限り、日中間の価格差は、60キロあたり中国が1万500円で、日本が
 1万4000円と、その差はわずか四割弱になっているという。つまり関税
 は40パーセントで良いということになる。生産コストで見ても、大規模
 農家なら7000円程度で生産しているので、余裕でクリアできる水準にな
 っているのだ。しかも、一方で農水省は、食糧不足が来るぞ、食糧価格
 が高騰するぞ、といって危機感を煽っているが、それなら、これから国
 際的な米価高騰も起きるはずである。ということは、いまよりも内外価
 格差が縮まるということ。であれば、なおさら関税が下がっても耐えら
 れると考えるべきなのだ。


                               農業にもプラスになるFTAとTPP
                    古賀茂明『日本中枢の崩壊』


機動性を失う官僚制の特性を裏付ける例示だ。しかし、長い風雪を超えてき
た農本文化は国民経済学の理屈だけでは割り切れないこともまた事実なのだ
が、わたし(たち)の視点は少し異なる。その1つはこのままでは地球温暖
化の大規模な気象変動による自然災害による農産物への影響が大きくなる。
あるいは、人口の爆発的な増大による慢性的な食糧不足への心配だ。これは
人為的問題で抜本的には国際的な協調し解決すべきものではあるが、前者へ
の対症療法は国家的個別課題でもあると考える。2つめは農業の高次化だ。
農業の情報化も進んでいるが、経営規模・形態をもっと工業経営に近づける
べきだと言う考え方だ。例えば稲作は年1回から複数回作付に持って行くと
かだ。

そのためには膨大な初期投資と経営形態が課題となることは古賀茂明の指摘
でもある大規模経営が株式会社であるかどうか別にしても民営化・民間化は
より積極的に進めていくべきで、なんだったら中間(公営)的な「農水林フ
ァンド
」で支援するあるいは、設備の標準化およびビジネスモデル化が構築

できた時点で中間(公営)的な「中間的な設備・工場リース事業で支え、
自然災害の影響を受けない農業への転換好機なんだと考えている。とはいえ
この著書に書かれていることは刺激的な散文に溢れているので、時に触れ取
り上げブログ掲載していく。

 

【おでんの季節】

圧力で熟っくりと煮込みこんだ馬鈴薯や牛筋、丸玉、コンニャク。大きな出
汁巻きロールキャベツ、そして大きな南洋蛸足が懐かしい“仁鶴”(高宮町)
のおでん。室町時代に出現した味噌田楽が原型で、煮込み田楽は上方では具
を昆布だしの中で温め甘味噌をつけて供したが、江戸では、近郊の銚子や野
田で醤油の醸造が盛んになったため、かつおだしに醤油や砂糖、みりんを入
れた甘辛い汁で煮込むようになり、女房言葉で田楽の「でん」に接頭語「お」
を付けた「おでん」と呼ばれるようになり、単に田楽といえば味噌田楽をさ
すようにり、江戸では振売や屋台で売られたが、焼き田楽よりも煮込み田楽、
おでんが好まれたという。

  



チビ太が愛したおでん、なぜおでんが愛されるのか? 数年前、仙台の出張
中、同僚に転職したら、ニューヨークでおでんの屋台を彼女と二人でだすん
だと語った記憶があるほど“仁鶴のおでん”のカルチャーショックが大きか
った。冬の足音が聞こえるようになるとおでんが恋しい。一旦は消えたビジ
ネス・モデルだが(勿論、酒は日本酒、生ビール、焼酎、ウオッカ、バーボ
ン、スコッチ、紹興酒も同時販売)、ちゃんと頭の中にデザインされている。
これを世界展開できれば10兆円規模の売上が見込まれるというわけだ。


    秋風に 暖簾のなかは 虎談義 ストーブ恋し おでん種かな


 

 

 

 

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