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なんじゃもんじゃ物語 2-3 チカーメ大臣の悪計

2006-06-20 11:12:34 | なんじゃもんじゃ物語
なんじゃもんじゃ物語 2-3 チカーメ大臣の悪計


なんじゃもんじゃ物語 62


 次の日、三つの島の至る所にもんじゃ王国の全島統一の公示が張り出されました。
新生もんじゃ王国の誕生です。
即日、もんじゃ王は、全島の王になりました。
とうとう、長い歴史を持つなんじゃ王国は、消滅してしまったのです。
もんじゃ王は、もう何所にも敵がいなくなったので、政治をする気も無くなり王宮で毎日宴会をし、勝手気ままな生活を始めました。
そして、もんじゃ王は、政治の全てを絶対的に信頼していたチカーメ大臣に任したのです。
 しかし、チカーメ大臣は、そんな境遇には満足していませんでした。
女王の座を一意専心に狙っていたのです。
数日後、チカーメ大臣は、地下牢のなんじゃ王にもんじゃ王を殺させようとしました。
チカーメ大臣は、地下牢に閉じ込めてあるなんじゃ王に、誰からか分からないように、牢の扉と床の僅かな隙間から、そっと短剣を差し入れました。
なんじゃ王は、誰か味方が自分を助けようとしてくれたと考えて懐にそれを隠しました。
そして、なんじゃ王がもんじゃ王に謁見する場を設定したのです。
 当日、チカーメ大臣は、もんじゃ軍の五人になんじゃ王をもんじゃ王のもとに連れて行くように命令しました。
ところが、謁見に行く途中、なんじゃ王は短剣を取り出して、もんじゃ城から脱出しようとしたのです。
しかし、なんじゃ王は、城から脱出出来ませんでした。
五人を振り切って逃げる途中、階段を踏み外して転げ落ち、石の壁で頭を打ち、そのまま返らぬ人になってしまったのです。
チカーメ大臣の、予定は狂いました。
でも、一人片付いたと言うことは事実です。
チカーメ大臣は、叫びました。

「 ラッキー!!」

なんじゃ王に逃げられそうになったと言うことで、もんじゃ軍の五人の褒美もチャラになってしまいました。
チカーメ大臣は、叫びました。

「 ついでに、ラッキー!!」

そして、次の日、もんじゃ王に、例の毒入りモーニングコーヒーを持って行って片を付けようとしたのですが、連日の宴会が祟ったのか、もんじゃ王は、ベッドの中で既に急性心不全で冷たくなっていました。
チカーメ大臣は、叫びました。

「 おー、超、ラッキー!!」

チカーメ大臣は、次々にやって来る幸運に酔いしれていました。
チカーメ大臣は、呟きました。

「 報告は無かったけれど、なんじゃ王子は、どうなったのかしら?
 まあ、いいわ、どうせ頭が弱いから何もできないわ。
 面倒なのでほっときましょ、なんじゃ王国は、潰れたし。
 でも、そうね、報告だけは、後で聞いておこうかしら。
 次は、エレーヌ姫だわ。
 何か、酷い眼にあわせてやりましょう。
 こいつは、生意気だから。」





なんじゃもんじゃ物語 63


もんじゃ王の国葬は、盛大なものでした。
チカーメ大臣は国葬を全て取り仕切り、もんじゃ王の徳を称えました。

「 もんじゃ王は、立派な王でした。
もんじゃ王は、国民が快適に暮らして行ける事を、日々考え暮らしておられました。
しかし、残念なことに、突然、お亡くなりになりました。
人生には、大きな坂が三つあります。
上り坂。
下り坂。
そして、まさか……・・。」

また、元なんじゃ王国の国民にも配慮して、なんじゃ王の名将ぶりも称え国葬の列に加えました。
チカーメ大臣は、国葬を取り仕切ることによって、自分の印象を国民に大きくアピール出来たのでした。
チカーメ大臣は、自分が女王となるための地歩を着々と築いて行ったのです。
また、エレーヌ姫に関しては、もんじゃ王が亡くなったことを嘆き悲しんで、城を飛び出したまま帰って来ないと言う噂を町に流しました。
でも、実際は、チカーメ大臣の指示で、もんじゃ軍の五人が、エレーヌ姫を地下牢に閉じ込めていたのです。
そして、もんじゃ王がエレーヌ姫かわいさに、エレーヌ姫を公式の場に出さず、顔も出来るだけ人々に分からないように、今までずっと隠していたのを良いことに、本物のエレーヌ姫に似てはいるのですが別人の顔の写真でお尋ね人ポスターを作り、町の彼方此方に貼りました。
人々は、ポスターにある顔をエレーヌ姫だと思いました。
そして、別人のエレーヌ姫の顔が人々の頭に染み込んだ頃、チカーメ大臣は、エレーヌ姫は自殺したと言うことにして葬儀を行ったのです。
数日後、チカーメ大臣は、もんじゃ軍の五人に指示を出しました。

「 エレーヌ姫に汚い服を着せて、城の表門から放り出しておしまい。
きっと、面白いことになるわよ。
顔や手足も泥だらけにしてね、出来る限り汚くしてね。
あ、放り出す前に、一言、言ってやりましょう。
放り出す準備が出来たら、連れておいで。」





なんじゃもんじゃ物語 64


もんじゃ軍の五人に連れられ、エレーヌ姫がチカーメ大臣の所にやって来ました。
ボロボロの平民服を着て、頭も顔も手足も泥だらけで薄汚く、とても王女には見えませんでした。
チカーメ大臣は、満足してエレーヌ姫に言いました。

「 エレーヌ姫、もう、お別れね。」
「 チカーメ、あなたは前から、王座を狙っていたのね。
お父様が、あなたを大臣に抜擢した恩を忘れて!
私は、あなたの悪事をみんなに知らせるわ。
あなたは、罰を受けるのよ。」
「 おお、何と頭の良いこと、そこまで良く想像出来たわね。
でも、もう、おしまいよ。」
「 おしまいは、あなたよ。」
「 そんな、格好で何が出来ると言うの。
それに、お前は、もう、エレーヌ姫じゃないわ。」
「 どう言うことよ。」

チカーメ大臣は、ポスターや葬儀のことをエレーヌ姫に話しました。
エレーヌ姫は、チカーメ大臣を睨みつけました。
チカーメ大臣は、勝ち誇って言いました。

「 お前をエレーヌ姫なんて、誰も思わない。
何所かで、野垂れ死にするのね。
姫なんて呼ばれることは、これから先、二度と無いわ。
ざまあみろざます。
門から、放り出しておしまい。」

エレーヌ姫は、もんじゃ軍の五人に引き立てられて門の所までやって来ました。
そして、門が少し開かれ、エレーヌ姫は門の外へ突き飛ばされました。
ザザザザと言う音を立てて、地面がエレーヌ姫の腕を擦りました。
エレーヌ姫は振り返ってキッと門を見ました。
その途端、門はピシャッと完全に閉まりました。
エレーヌ姫は、乾いた道に涙の跡を残して駆け出しました。
チカーメ大臣は、その様子を見て満足そうに笑いました。

「 フヒョ、フヒョヒョ、私の勝ちよ。
私の領土、私の王国をとうとう作り上げたわ!!」





なんじゃもんじゃ物語 65


エレーヌ姫は、いつもよく散歩に出かけた、人影がほとんどない島の北側をいつしか歩いていました。
辺りは既に薄暗く、夜の闇が迫っていました。
エレーヌ姫は、自分が王女であると言うことを町で通る人ごとに言いました。
でも、誰も笑って相手にしてくれませんでした。
時には、かわいそうにと言ってくれる人もいましたが、それは王女に対してではなく、一人の浮浪者に対するものだったのです。
エレーヌ姫は、自分の惨めさと身の回りに起こった一連の不幸な出来事を思って、涙を流しながら町を走り出ました。
止めど無く流れる涙を拭こうともせず、無我夢中で走りました。
そして、いつしか島の北側の砂浜を歩いていました。
海の波の音が、エレーヌ姫の頭を左から右へ通り抜けました。
エレーヌ姫は立ち止まり、暗くなりつつある海を見ました。
繰り返し寄せて来る波の音が、不幸な出来事の記録を一行一行消していくように感じました。
足元に冷たい感触を感じました。

「 いい気持ちだわ。
このまま進むと、もっと気持ち良くなるかしら。
みんな、忘れさせてくれる。」

冷たい感触が膝まで感じられました。
頭の中の何かがふーっと上にあがって行くような感じがして、エレーヌ姫は眼を閉じ冷たい感触を全身に受けました。
波は、何事も無かったかのように、太古の昔から変わらない動きで海岸の砂を洗い続けていました。





なんじゃもんじゃ物語 66


一連の出来事の後、もんじゃ王位は空位のまま、政務はチカーメ大臣が執行する日々が続きました。
しかし、チカーメ大臣は、自分から王になると宣言はしませんでした。
安定した王権を維持するためには、全島の国民から押されて王位に就く必要があったのです。
そして、もんじゃ王国の国民は、王国の象徴であるもんじゃ王がいないことに漠然とした不安を持っていました。
そんな日々が続く中、町の至る所にチカーメ大臣に命令されたもんじゃ軍の五人がビラを貼りました。
ビラは、塀にはもちろんのこと、家の戸、窓、人の背中、牛の尻等に至るまで、人の目に付く所は全て貼ってありました。
その中でも、特に公衆トイレに貼ったものは効果的でありました。
ビラに書かれていた内容は、もんじゃ王がいないため、王国が機能不全に陥っているから、新しい王を決めたらどうかと言うものでした。
それに、このままでは、国が崩壊するかもしれないと人々の不安を煽るものだったのです。
でも、もんじゃ国民には、そのビラが何処から発行されたものか分かりませんでした。
また、もんじゃ軍の五人が、現在あらゆる政務を取り仕切っている中心人物で、もんじゃ王に信頼が厚かったチカーメ大臣を王に押そうと言う噂を、彼方此方でどんどんたきつけたので効果も現れて来ました。
全島の村や町で話し合いが行われました。
そして、全島の代表者が、それらをまとめ、チカーメ大臣が王位に就く嘆願書を持って、チカーメ大臣のもとにやって来ました。
チカーメ大臣は、即座に承諾するのは、いかにも女王になりたがっていると言うことが分かるということで、なりたい心をグッと堪えて代表者に言いました。

「 それは、困りますわ。」

チカーメ大臣は、もう一度、薦めてくれると思っていたのですが、代表者は言いました。

「 それでは、仕方がありません。」

代表者は、残念そうな顔をして町へ帰って行きました。
チカーメ大臣は、代表者が帰ってから悔しがりました。

「 ちきしょう、ちきしょう、あの代表者。
もう、一回ぐらい薦めてくれても良さそうなものなのに。
キー、キー、悔しいざます。」





なんじゃもんじゃ物語 67


チカーメ大臣は、もう一度宣伝のやり直しをすることにしました。

「 もんじゃ軍の五人に、ビラを印刷させたのが失敗よ。
私、自ら、気合を入れて印刷するわ。
もう一度、女王になって下さいって、代表者が言って来るように仕向けなきゃ。
見てらっしゃい。」

チカーメ大臣は、王宮の印刷室に走りました。
そして、手に触った紙には何でも刷ったのです。
女王になりたい一心で、片っ端から必死に刷りました。
夜が明けて来る頃には、苦労のかいあってようやく刷り上がりました。
チカーメ大臣は、出来上がったものを見ながら言いました。

「 ふーっ、やっと刷り上がったわ。
どんな出来かしら、一枚読んでみましょう。
何々、本日開店、チカーメを女王にしよう大安売り。
何、これ?
まあ、一枚くらい変なのがあるわ。
もう、一枚見てみましょう。
植木大安売り、チカーメ女王1200円のところ980円。
あっ、これ新聞の広告紙の上に印刷してしまったわ。
殺虫剤には、チカーメ印、すぐコロリ。
チカーメすぐ帰れ、夫が待っている、俊男。
浣腸器はチカーメ浣腸、出っ放し。
今、買うとチカーメ女王を二つお付けします。
えっ、チカーメが二つも付いているのですか、今すぐ電話しましょう。
輸入ポルノ、見せる、見せる、チカーメ女王。
乾燥ワカメと干しチカーメ、どちらも大特価100円。
海の家、チカーメ回転。
回転じゃなくて、開店でしょ、字まで間違ってる。
うう、ろくなのがないわ。
もう、印刷にくたびれたから刷り直す元気も無いし、せっかく刷ったんだから貼っちゃいましょ。
何とか、なるでしょ。」

チカーメ大臣は、もんじゃ軍の五人を呼んで、再び町中に怪しいビラを貼らせました。





なんじゃもんじゃ物語 68


もんじゃ軍の五人は、早朝からビラを貼りまくりました。
そして、再び、その日の夕方頃、代表者がやって来ました。
今度は、もんじゃ町長も連れて来ています。
チカーメ大臣は、ワクワクしながら申し出を聞きました。

「 何ですか?
もんじゃ町長もいるようですが。」

もんじゃ町長が、進み出て言いました。

「 見てください、チカーメ大臣様、このビラを。」
「 どれどれ、干しチカーメ、100円、これがどうしたと言うのですか。」
「 でも、大変なんです。」

チカーメ大臣は、このビラは少しまずかったかな、と言う気がしましたが、威厳を持って代表者ともんじゃ町長に言いました。

「 この程度のものは、王宮まで持って来るものではありません。
適当に処分しなさい。」
「 でも、チカーメ大臣様、町中に貼ってあるのです。
こんなことをする馬鹿がいるのです。
剥がすのが、大変なんです。
ほら、文法も字も間違っている、作った奴はかなりの馬鹿でしょう。
これも王様がいないからです。
王様がいないから、心が不安定になって、精神を病んでしまうのです。
ここは、チカーメ大臣様が、王様となって人心の安定をはかって下さい。
もんじゃ町長として、お願いいたします。」
「 そうです、私は代表者として、前回お願いに参りました。
前回は、断られましたが、もう待ってはおれません。
どうか、王様となって、このような馬鹿者を取り締まってください。
お願いいたします。」
「 ええ、そこまで言うのなら、……・。
みなさんが、そう言うのなら、そうしようかしら。」
「 ありがとうございます。
早速、明日、戴冠式をいたします。
町の人達に知らせなけりゃなりませんので、これで失礼いたします。
それでは。」

代表者ともんじゃ町長は、お辞儀をして町へ帰って行きました。
チカーメ大臣は、ニヤリと笑いました。

「 ふふ、これで私は女王様。
チカーメ女王様、バンザイだわ。
それにしても、あの二人、私が苦労して作ったビラにケチをつけて。
生意気だわ。
女王になったら、もんじゃ町長はクビにしちゃいましょ。
あの代表者も、酷い眼に会わせてやるから。
でも、あのビラ、そんなに変だったかしら?」

王宮の窓の外は、もう、暗闇に包まれておりました。
その暗闇は、全島のこれから先を暗示していることに、人々はまだ気が付きませんでした。




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