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大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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なんじゃもんじゃ物語2-8 発電所へ

2006-06-15 13:35:18 | なんじゃもんじゃ物語
なんじゃもんじゃ物語  2-8   発電所へ



なんじゃもんじゃ物語99


 その様子を、コンビニの建物の影から覗いていた一人の男がおりました。
彼こそは、ヤマタイ国の名探偵“花岡実太”47才であります。
花岡実太は、トレードマークの赤と黄色のチェック柄のハンチング帽に緑と黒の縦縞の服を着て様子を窺っていました。
花岡実太は、実収入の多い浮気調査の隙間を縫って、大事件のネタは無いかと、今日も、あまりスピードの出ない中古のバイクに跨って夜の街を徘徊していたのです。

“ハナオカジッタノ、ドウブツテキチョッカンガ、カラダノナカヲ、ハシリマシタ、ビリビリビリ。”

花岡実太は、呟きました。

「 怪しい。」

そして、動きの鈍い彼の中古の愛車に鞭打って、六人の乗ったトラックの後ろをハンチング帽が飛ばないように片手で押さえながら、ブルン、プスプス、ブルン、プスプスと追いかけ始めました。
トラックの荷台には海賊とブタが入り混じっていました。
ブタと向かい合った侍べンケーが芸者ブラックに言いました。

「 拙者、臭いでござる。」
「 我慢しろ、金を使わずに事を起こすのが海賊の建前だ。
タクシー代なんか無いぞ。
ケチこそ海賊の本領だ。」

空手家たまちゃんと岡っ引チンギスチンが言いました。

「 胴衣は寒い。
でも、ブタ、抱いていると温かいよ。」
「 ブタ、美味そうあるね。
一匹欲しいあるよ、持って帰っていいあるか?」

チンギスチンは、ブタの肉付きを調べていました。
トラックは、ガタガタと暗い道を走っています。
道路を照らしている街灯がどんどん後ろに飛んでいきます。
なんじゃ殿様は疲れたのか、ブタにもたれてウツラウツラしていました。




なんじゃもんじゃ物語100


しばらくすると、お頭ブラックの携帯電話が鳴りました。

「 ああ~、ブラックだ。」
「 あっ、お頭、イチゴ大福買ってくれました?」
「 あ、ノゾーキか。」
「 さっき、コンビニの中に入ってなかったんじゃないかと思って・・・・・。」
「 ああ、まだ、買ってない。」
「 ええっ、そんなあ。
うう、うううううう。
買ってくれない、嘘付き、うううう。」
「 泣くな、ノゾーキ。
帰りに買ってやるから。」
「 本当ですよね。
きっとですよ。
ちゃんと、透視望遠鏡で買ったかどうか見てますからね!」
「 ああ、分かった、分かった。」
「 るんるんるん、プチッ。」

ノゾーキからの携帯電話が切れました。
 トラックは、街並みを外れ民家の無い田舎道を朦々と土煙を巻き上げながら走っていました。
また、花岡実太の中古のバイクもトラックを追い掛けていました。
トラックの荷台のチンギスチンが目の前のブタを見ながら言いました。

「 このブタ、美味そうあるよ。
舐めてみると、旨味が分かるあるね、ペロッ。」

脇腹を舐められたブタは、ビックリして前のブタを跳び越して逃げようとしましたがうまく飛び越えられずに激突しました。
激突されたブタは飛び上がって隣のブタの上に乗っかりました。
乗っかられたブタは、上に乗ったブタを振り落とそうと暴れだしました。
もう、後は玉突きのように全てのブタが暴れだしました。
ブタと海賊たちが叫び声を上げました。

「 ブヒッ!」
「 ブヒッ!!」
「 うわっ、でござる!」
「 わっ、あるよ!」
「 うわっ、かないまへんなあ!」

ブタが三匹トラックの荷台から転げ落ちました。




なんじゃもんじゃ物語101


土煙で前も見えずにトラックを追っていた花岡実太の前に突然三匹のブタが降って来ました。
花岡実太のバイクはブタに乗り上げ、横転して道路脇の畑に滑って行きました。

「 うわっ!」
「 ブヒッ!」

花岡実太は、横転したバイクから放り出され、畑の隅にある野壺に頭から突っ込みました。

「 ぷっ、臭い!
おっと!」

野壺から顔を上げた花岡実太は、声を上げないように我慢して身を伏せました。
道路に止まったトラックからおっちゃんと海賊たちが降りてきました。

「 おいおい、乗せてってやるけど、暴れないでくれよな。」
「 すんまへんなあ。」

お頭ブラックが言いました。

「 こらっ、チンギスチン、謝れ!」
「 ゴメンあるよ。
とっても美味しそうあるから、舐めてみたあるよ。
いい旨味あるね。」
「 本当かい。
良いこと言ってくれるね。
うれしいね。
最高の飼料使ってるからね。
さあ、ブタを乗せるよ。
手伝ってくれよ。」

おっちゃんと海賊たちは、三匹のブタを荷台に乗せました。
そして、トラックは再び走り出しました。
野壺に隠れていた花岡実太は言いました。

「 こんなことでへこたれる名探偵花岡では無い!
急がねば!」

よれよれの花岡実太は、野壺から飛び出しました。
そして、畑のバイクを立て直しトラックを追ったのでした。


なんじゃもんじゃ物語102
 トラックは、暗い夜道をガタガタ走っていました。
そして、山裾を通過し、砂浜の見える海岸沿いの道に出て来ました。
波の音と共に、潮の香りが右に見える海から漂って来ています。
遠くに見える釣り船の灯りがチラチラと点滅していました。
しばらく走ると大きな建物と灯りが遠くに見え始めました。
お頭ブラックが言いました。

「 おっ、見えてきた。
おそらく、あれがそうだな。
おい、チンギスチン、小僧を起こせ。
こいつ、ずっと寝てばかりだ。」
「 ほんとあるね。
ブタが落ちた騒ぎの時も、寝ていたのはこいつだけあるよ。
よく寝られるあるね。
神経、図太いね。
おいっ!
起きるあるね、ペロッ!」
「 うわ~っ!!」

チンギスチンに顔を舐められたなんじゃ殿様はビックリして前のブタを蹴っ飛ばしました。

「 ブヒッ!」

ブタが一匹荷台から転げ落ちました。
侍ベンケーが言いました。

「 ブタが落ちたでござる。」
「 しっ、黙れ!
おっちゃんは気付いていない。
先程の件がある。
気付かれたら、俺たちトラックから降ろされるぞ!」

お頭ブラックは、人差し指を口に当てて手下を黙らせました。
そして、海賊たちを乗せたトラックは何事も無かったかのように発電所に向けて走って行きました。




なんじゃもんじゃ物語103


 一方、野壺から復活した花岡実太は中古のバイクで、しぶとくトラックを追っていました。
花岡実太は、前に見えるトラックの排気ガスを鼻から吸い込みながら言いました。

「 これは事件の臭いがする。
この名探偵花岡が動き出したらもう逃れられんぞ!
ようやくトラックに追い付いて来た。
先程は危ない所だった。
もう、大丈夫・・・・・。」

野壺の汚物で眼をクシャクシャさせながら、トラックを追っていた花岡実太の前に突然ブタが一匹降って来ました。

「 ブヒッ!」
「 うわっ!」

花岡実太はブタを避けようと、咄嗟に右にハンドルを切りました。
そして、道路脇のガードレールの隙間からバイクと共に砂浜に突っ込んで行きました。

「 うお~っ!」

花岡実太を乗せたバイクは、砂浜を海に向かって走っていました。

「 うお~っ。
ブレーキが利かない!
うお~、うお~、うお~っ!」

花岡実太の叫び声が砂浜に響いていました。
バイクは先程の転倒で、ブレーキが潰れていたのです。
そして、バイクは砂浜に転がっていた流木に乗り上げ大きくジャンプしました。

「 うひょ~っ!!!」

バイクから放り出された花岡実太は、目の前に広がる太平洋に頭から突っ込んで行きました。

“ボッチャン、ブクブクブク・・・・・・、プハ~ッ。”

海面に浮かび上がった花岡実太は言いました。

「 ぷっ、ぷっ、塩辛い!」





なんじゃもんじゃ物語104


海に落ちた花岡実太は、小堀流泳法で立ち泳ぎをしていました。

「 この名探偵花岡を甘く見てはいけない。
わしは水深40センチの風呂でも立ち泳ぎが出来るのだ。
むふふふふふふ。」

花岡実太は、古式泳法の作法通り、懐から日の丸の扇を出し大きく広げて高く掲げヒラヒラさせました。

「 どうだ、凄いもんだろう。
わしは免許皆伝なんだ。
ああ、昔を思い出すなあ。
昔は、フジヤマのトビウオと言われておったのだ。
むふふふふふふ。
ヤマタイ国舞踊も出来るんだぞ。
ええと、こうだったかな。
てん、てん、てん、つく、てんてんてん。
ここで笛が入る。
ひょ~、ひょっ、ひょ~。
あ~、こりゃ、こりゃ。
ん、ん、ん、ん、・・・・・・。
や、ややっ。
しまった、こんな事している間に沖に流されているではないか!」

花岡実太は、扇をヒラヒラさせながら沖に流されている事に気が付きました。
そして、周りを見回しました。

「 うわっ!!」

ヒラヒラさせた扇に興味を持ったイルカが五匹、花岡実太に近付いて来たのです。
でも、花岡実太は、海面に突き出して近付いてくるイルカのヒレを見て叫びました。

「 サメだあ~!
サメが来たあ~!!」

花岡実太は、扇を放り投げ岸に向かって泳ぎ出しました。

「 うおっ、うおっ、うおっ!
もうだめだ!
追い付かれる!
ヤマタイ国の名探偵花岡、ここに死す。
ん?
ん、ん?
ん、ん、ん!!
こ、これは・・・・・・・・!」

イルカに乗った中年花岡は、四匹のイルカを従えて岸に向かって爽やかに進んでいました。





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