なんじゃもんじゃ物語 2-17 ヤマタイ国発電所 玄関
なんじゃもんじゃ物語183
外に出ると、月明かりに照らされたベンケーが、馬の尻尾の毛を束ねて作った悪霊祓いの棒と手術用のメスを持って、踊りを踊っていました。
「 ウン、ナカマサヤタァ~、エイタラヤタァ~♪
ソンダナタヤァ~、ヤマナカタァ~♪」
先頭のH1号が、なんじゃ殿様に聞きました。
「 アノ変ナノモ、仲間カ?」
「 ああ、そうだよ。」
「 頭ガ痛クナッテ来ソウダ・・・。」
「 まあ、まあ、そう言わずに・・。」
お頭ブラックが、先頭のなんじゃ殿様を追い越してベンケーのところに走って行きました
「 よ~、ベンケー!」
「 おお、みんな出て来たでござるか。」
「 怪我は無かったか?」
「 大丈夫でござる。
ちょっと、手こずったが悪霊を追い払ったでござるよ。」
「 それは良かった。
ところで、何を踊っているのかな?」
「 これは、ヤモミノ族の勝利の踊りでござるよ。
これを踊ると次回も勝利できるでござる。
それでは、続きを行くでござる。
ウン、ナカマサヤタァ~、エイタラヤタァ~♪
ソンダナタヤァ~、ヤマナカタァ~♪」
「 おいおい、ベンケーその踊りは後どのくらいかかるのだ?」
「 急いでやっても46分かかるでござる。」
「 船に帰ってからやってくれないかなァ~。
今、ちょっと急いでるからなァ~。」
「 ん、そうか・・。
仕方ないでござる。
先ほどやってなかった、ヤマノミ族の精霊落としの踊りも含めて、船に帰ってからみんなを集めてたっぷりするでござる。」
「 ああ、分かった、分かった。」
「 それで、燃料棒は手に入れたでござるか。」
「 ああ、バッチリだ。」
「 おお、それは良かったでござる!」
なんじゃもんじゃ物語184
そこにチンギスチンが、おにぎりを持って現れました。
「 ハイ、ベンケー、おにぎり!」
「 お、これはかたじけない。
久々の戦闘でエネルギーを消費したでござる。
早速、食べることにいたそう。」
“ パク、パク、パク。”
「 これは、美味い!」
H1号を持ったなんじゃ殿様が近付いて来ました。
そして、ベンケーに言いました。
「 ほら、この電気炊飯器で作ったんだよ。」
「 ほう、これで作ったでござるか。」
ベンケーがしげしげと眺めているとき、突然、H1号がベンケーに話し出しました。
「 ワタシハH1号ダ。」
「 お前は、小僧でござらんのか?」
「 僕じゃないよ。
喋っているのは、この炊飯器だよ。」
「 これが喋るでござるか?」
「 ソウダ、コンピューター制御ノ電気炊飯器ノH1号ダ。
正確ニ言ウトHonjya university electric rice-cooker 1ナノダ。」
「 これは、面妖な。」
“ ムフフフフ。
チャンスダ。
コイツハ、今マデノ経緯ヲ知ラナイゾ。”
「 何をぶつぶつ言っているでござるか?」
なんじゃもんじゃ物語185
「 ソレデハ、ココデ問題ダ。」
「 ?」
「 オマエ、フラミンゴヲ知ッテイルカ?」
「 知っているが、それが何でござるか?」
「 フラミンゴハ、片足ヲ上ゲテ寝ルノモ、知ッテイルカ?」
「 アフリカにいたから、知っているでござるよ。」
「 ヨシ、ヨシ、ソレデハ問題ダ。」
「 ?」
「 フラミンゴハ、ドウシテ片足ヲ上ゲテ寝ルノデショウカ?
ムフフフフ、分カルマイ。
サア、答エロ!」
「 両足を上げると引っくり返るでござるよ。」
「 ゲッ!!」
H1号は、固まって黙ってしまいました。
なんじゃ殿様が、H1号に聞きました。
「 H1号、どうしたの?」
「 正解ダ。」
「 えっ、ベンケーの答えは正解?」
「 ベンケー カ・・・。
恐ロシイ奴ダ・・。」
らめちゃんが、担架の上から言いました。
「 ははは、簡単に答えられて、H1号、ショックを受けとるがな。」
「 うわっ、ヒラメが喋っているでござる。」
「 よっ、ベンケー!」
「 出たな~妖怪!
悪霊払いを受けてみよ!
ウン、ナマカサァ~♪
エイタラヤタァ~♪」
“ ドン、ドン!!”
ベンケーが二度足を踏み鳴らしました。
らめちゃんが、身を捩って苦しみ出しました。
「 う、う、う、苦しい・・。」
「 ふふふ、悪霊払いが効いてきたでござるな。」
「 嘘だよ~ん!」
「 あれっ、効いて無いでござる?」
「 ワイは、悪霊やないで~。」
「 おかしいでござる。」
「 ワイは、預言者らめちゃんや~。」
なんじゃもんじゃ物語186
お頭ブラックがベンケーに言いました。
「 らめちゃんとH1号は、新しい仲間だ。」
「 え、仲間でござるか?」
「 燃料棒を手に入れるのに、色々経緯があってな・・。」
「 そうでござるか。
ま、お頭が決めたことなら従うでござる。」
らめちゃんとH1号が言いました。
「 よろしゅうに!」
「 ベンケー用ノ クイズヲ、考エナケレバ イケナクナッタ。」
お頭ブラックが言いました。
「 よし、それじゃ、脱出だ。」
「 お~!」
海賊たちは気を失っている門衛さんを横目で見ながら、ゾロゾロと門から出て行きました。
エッチソンが言いました。
「 お頭、お頭、港までの足は?」
「 う~ん、今のところ無い!」
「 歩いて行くには、遠おまっせ。」
「 そうだな、近くに何か無いかノゾーキに聞いて見よう。」
お頭ブラックは、携帯を取り出してノゾーキに電話を掛けました。
「 お~い、ノゾーキ!」
「 はい、はい、お頭。」
「 港まで戻る足が無い。
自動車かトラックは何処かに無いか?」
「 少々、お待ちを。」
「 ・・・・・・。」
「 お頭、お頭。」
「 どうだ?」
「 発電所にはあるんですが、車の鍵が何処にあるのか分からないです。」
「 今から戻って、鍵を探すのは大変だな・・。」
「 あの~、お頭、発電所の塀の所に、鍵の付いたバイクが一つありますよ。」
「 そう言えば、ここに来た時に、変なオッサンがバイクに乗ってやって来たな。
でも、バイク一台では、これだけの人数は乗れないぞ。」
「 えっと、門衛さんの建物の裏にリヤカーが一つありますが・・。」
「 それだ!」
なんじゃもんじゃ物語187
お頭ブラックは、ベンケーとチンギスチンに言いました。
「 ベンケー、チンギスチン、門衛さんの建物の裏にリヤカーがあるから取って来い。」
「 分かったあるよ。」
ベンケーとチンギスチンは門の中に入って行きました。
お頭ブラックが、残った子分に言いました。
「 それじゃ、バイクを見に行こう。」
お頭ブラックを先頭に、なんじゃ殿様とH1号、らめちゃんの担架を持ったエッチソンとたまちゃんが後に続きました。
塀に沿った道をゾロゾロ歩くと道端にバイクが見えて来ました。
お頭ブラックが言いました。
「 おっ、あれだ、あれだ。
乗って来たオッサンは、まだ倒れているかな。」
お頭ブラックが塀の方を見ると、花岡実太がうつ伏せに倒れていました。
“ ブヒッ、ブヒッ。”
花岡実太が担いで来たブタが一匹、塀際をウロウロしています。
バイクに到着したお頭ブラックが言いました。
「 おっ、確かに鍵が付いているぞ。」
程なく、リヤカーを引っ張ってベンケーとチンギスチンがやって来ました。
“ ゴロ、ゴロ、ゴロ、ゴロ。”
「 お頭、見つけたあるよ。
特注品なのか、結構でかくて頑丈あるよ。」
「 みんな、乗れそうだな。
よし、早速、バイクの荷台にリヤカーをセットして・・・。」
“ ガシャン、カチッ。”
なんじゃもんじゃ物語188
リヤカーの金具がバイクの荷台に連結されました。
「 これで、よしっ!
それじゃ、みんな乗り込め!」
子分たちがリヤカーに乗り込もうとすると、突然、ベンケーが言いました。
「 ちょっと、待つでござる。」
「 どうした、ベンケー?」
「 このバイクには、執念がついているでござる。」
「 執念?」
「 生霊の執念が、取り憑いているでござる。」
「 生霊?」
「 とてつもなく大きな執着心でござるよ。」
「 乗って行ったら、何か起こるのか?」
「 事故に引き込まれて、みんなペッチャンコでござる。」
「 じゃ、どうすりゃいいんだ?」
「 ちょっと、待つでござる。
生霊封じをするでござる。」
ベンケーが、馬の尻尾の毛を束ねて作った悪霊祓いの棒と手術用のメスを懐から取り出し、バイクの周りを回りながら踊り出しました。
「 ウン、ナカマサァ~♪
エイタラヤタァ~♪」
“ ドン、ドン!!”
「 ウン、トマサラヤァ~♪
エイタラヤタァ~♪」
“ ドン、ドン!!”
足を踏み鳴らす音が響いています。
お頭ブラックが言いました。
「 あの~、ベンケー、ベンケー。」
「 どうしたでござる?」
「 この生霊封じの踊りは、どの位かかる?」
「 22分でござる。」
「 いつもよりかは短いんだけど・・、ちょっと急いでるんだがなぁ・・。」
「 早口で言ったら18分でござるが、効果に自信が無いでござる。」
「 後に出来ないかなァ~。」
「 事故に引き込まれて、みんな、お陀仏さんになるでござるよ。」
「 でもな~、夜明けも近いし、急がないとなァ~。」
「 う~ん、困ったでござる。」
「 走りながら、出来ないのか?」
「 急いでいるでござるな。
う~ん、仕方がないでござる。
生霊封じと交通安全の呪文を、走りながら同時にやるでござる。」
「 そうしてくれ。」
「 分かったでござる。」
なんじゃもんじゃ物語189
お頭ブラックが言いました。
「 わしがバイクを運転する。
おい、ベンケー!」
「 何でござるか?」
「 お前は、わしの後ろに乗れ。
生霊封じと交通安全を、わしの後ろでやれ。」
「 分かったでござる。」
「 あとの者は、リヤカーだ。
エッチソン、指示をしてくれ。
じゃ、みんな、乗り込むんだ!」
エッチソンが言いました。
「 ハイ、それじゃ、空手着のたまちゃん。
らめちゃんを背負いなはれ。」
エッチソンが、らめちゃんを たまちゃんの背中に乗せました。
らめちゃんが たまちゃんに言いました。
「 あんがちょ!」
「 うひょっ、冷たい。
パタパタして、飛沫を飛ばさないようにしろよな!」
「 分かってまんがな。」
「 じゃ、乗るからな。
よいしょっと!」
エッチソンが指示を出します。
「 ハイ、次、殿様小僧とH1号。」
「 どっこいしょ。
おっとっと。
うわっ!」
“ ゴトン、ゴロゴロゴロ。”
なんじゃ殿様の頭に付いていたカメラが外れて床を転がりました。
「 ウワッ、眼ガ回ル!」
「 ゴメン、ゴメン。
両手でH1号を持っているから、バランスを崩したんだよ。」
なんじゃ殿様は、乗り込んでからカメラを頭に着け直しました。
「 アア、H1号ハ、ビックリシタゾ。
カメラガ転ガッテ、眼ガ回ッタノダ。
シッカリ持ツノダ。
落トスト、H1号ハ壊レルノダ。」
なんじゃもんじゃ物語190
エッチソンが続けます。
「 ハイハイ、詰めて、詰めて・・。
次、岡っ引きのチンギスチン。」
“ ブヒッ!”
「 うわっ、チンギスチン、何を積もうとしているんだ!」
「 そこでウロウロしていたブタ、持って行くあるよ。」
「 チンギスチン、場所をとるからブタは背中に担げ!」
「 分かったあるよ。
よいしょっと!
これでいいあるか?」
「 OK、OK。
はい、乗って乗って!
乗りましたな・・。
それじゃ、わいも乗りまっせ。
こらせっと!」
最後に、百姓エッチソンがリヤカーに乗って、乗り込みが完了しました。
リヤカーには、4人と2匹と1個の合計七福神の完成です。
エッチソンが、お頭ブラックに言いました。
「 お頭、七福神の船みたいでんな・・。」
「 そうだな。
見様によっては見えなくも無いが・・。」
リヤカーのみんなが、一斉にお頭ブラックを見ました。
「 プッ!」
お頭ブラックは、笑ってしまいました。
「 ははははは、じゃ、エンジンを掛けるぞ!」
お頭ブラックは、前を向いて、バイクのエンジンを掛けました。
侍ベンケーが、ヒラリとお頭ブラックの後ろに飛び乗りました。
“ ブルル、ブルル、ブルル、ブウォン、ブウォン、ブウォン!!”
なんじゃもんじゃ物語191
バイクのエンジン音は、高らかに夜空に響きました。
「 おう、動く、動く、絶好調だ!」
その時、塀際に倒れていた花岡実太の眼が開きました。
“ ! ”
そして、お頭ブラックは、二度、大きくエンジンの空ぶかしをしました。
“ ブウォン、ブウォン!!”
眼を開けた花岡実太は、自分のバイクのエンジン音に気が付きました。
「 ハッ、俺のバイクの音だ!」
花岡実太が頭を上げて音の方を見ると、海賊たちが逃走しようとしている所が見えました。
花岡実太は、ビックリして飛び起きました。
「 こらぁ~、俺のバイクをどうする気だぁ~!」
お頭ブラックは、チラッと花岡実太を見ました。
「 やべぇ~、オッサン、起きてきたぞ!
まごまごしている暇は無い。
出発~!」
お頭ブラックは、ギアを入れバイクは発車しました。
“ ガックン!”
それにつれて、リヤカーも動き出しました。
エッチソンが言いました。
「 おっとっと、揺れる揺れる。」
お頭ブラックが言いました。
「 しっかり摑まっていろ。
振り落とされないように。
分かったな!」
子分たちは答えました。
「 お~!!」
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