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なんじゃもんじゃ物語 2-6 海賊船ヤマタイ国へ

2006-06-17 12:58:44 | なんじゃもんじゃ物語
なんじゃもんじゃ物語 2-6 海賊船ヤマタイ国へ


なんじゃもんじゃ物語 87


 星空の下、真っ暗な海を海賊船は進んでいました。
マストの上から、ノゾーキの叫び声が響きました。

「 お頭っ、赤い灯や青い灯が見えまーす!!」

お頭ブラックは、歌を歌いだしました。

「 あかいひぃ~、あおいひぃ~、道頓堀のぉ~。」

マストからするすると降りてきたノゾーキが言いました。

「 お頭、歌なんて歌っている場合ではありません。
 どうせ歌うんなら、もっとうまく歌って下さい。」
「 うるさい、ノゾーキ。
 エッチソンのレトロレコードから、ヤマタイ国の風習を吸収しているところなんだ。」
「 それにしても下手ですね。」
「 なにっ!
 俺はこれでも海賊学校の余興会で独唱したことがあるんだぞ。
 ああ、あの時は盛大な拍手が満場を興奮のるつぼにしたなぁ………・。
 おい、ノゾーキ、拍手しろ。」
「 それより、灯が見えてるんですよ。」
「 うるさい、拍手が先だ!」
「 もう、言い出したらきかないんだから。」

ノゾーキは、拍手をしました。
パチパチパチ。
お頭ブラックは、拍手を聞きながら言いました。

「 どうも、迫力がねえな。
 よし、みんなを呼び集めろ!」
「 また、お頭のわがままが始まった。」
「 早くしろ、こらっ!」

ノゾーキは、船長室からぶつぶつ文句を言いながら、みんなを呼びに行きました。





なんじゃもんじゃ物語 88


船長室にチンギスチンとべンケーとなんじゃ王子がやって来ました。

「 スープの出汁を作っているところあるよ。
何あるか?
早くしてあるよ。」
「 水虫の治療中なのに何ですか?」
「 眠いよ~。」

お頭ブラックは言いました。

「 全員、そろってからだ。
ノゾーキとたまちゃんとエッチソンはまだか?」

しばらくして、三人がそろって入って来ました。
お頭ブラックは言いました。

「 遅い、遅い、何をやっていたんだ。」
「 エッチソンが部屋に閉じ込められていたんですよ。
二人で扉をぶち破って助けてきました。」
「 ほんまに酷い眼にあいましたんや。
まさか鍵がかかるとは思いまへんでした。
それで、重要な話しは、なんでんねん?」

お頭ブラックは言いました。

「 歌を歌うので、盛大な拍手をするように。」
「 え~、またかあ~。」
「 しばらく無かったので安心していたのに、また、リサイタルかあ~。」
「 何か、文句はあるのか?」
「 いや、そう言う訳では、…………・。」
「 いいか、お前たち、これからヤマタイ国に行くんだぞ。
ヤマタイ国の風習にも慣れておかなければいけない。
その国の雰囲気は歌を聞けば分かる。
それでは行くぞ!」

お頭ブラックは、カラオケマイクを手に、海賊版レコードに針を落としました。
レトロスピーカーから真空管アンプを通して流れる音を聞きながら、お頭ブラックはニコニコしながら歌い出しました。

「 あかいひぃ~、あおいひぃ~、道頓堀のぉ~………………。」

六人は仕方が無いので、早く終わらないかなと言う表情で歌を聞いていました。
歌が一通り終わるとお頭ブラックは両手を挙げて叫びました。

「 盛大な拍手う~っ!!!!」
「 パチパチパチパチ。」
「 もっと盛大な拍手う~っ!!!!」
「 パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ!!!!!」

お頭ブラックは、満面の髭もじゃ笑顔で六人に握手してまわりました。
チンギスチンがエッチソンに小さな声で言いました。

「 何時聞いても下手糞あるね。」
「 ほんまでんな。」

お頭ブラックはエッチソンに言いました。

「 何か言ったか?」
「 いやいや、お頭は歌がうまいでんな。」
「 そうだろ、これから毎日聞かせてやってもいいぞ。
ん、ノゾーキ、何か言いたいことでもあるのか?」
「 それより、お頭、火が見えますよ、ホラッ!」

ノゾーキが進行方向を見るように促しました。
なるほど火が見えます。
先程、ノゾーキが見た、チラチラと瞬きするような小さな火では無く、かなりはっきりと見えるようになっていました。






なんじゃもんじゃ物語 89


たまちゃんが叫びました。

「 トンキンCITYだ!」
「 うわっ、歌っている間にヤマタイ国に着いてしまった!」
「 お頭、先程から火が見えると何回も言っていたでしょう。」
「 うむっ……・。
でもなあ、……。
もう一曲準備していたのになあ……・・。
やっぱり、歌が先だ!!
これでいいのだ!」
「 お頭、お頭、もう……。」
「 ああ、もう、うるさい。
わかっておる、わかっておる。」
仕方が無い。」

お頭ブラックは、全員に命令を出しました。

「 早く、衣装室に行ってヤマタイ国の服に着替えろ!
もう既に、エッチソンに言って人数分作らせてある。
早く行け!」

六人は衣装室に走りました。


残ったお頭ブラックは、机の上に置いてある機械のボタンを見ながら考えていました。

「 せっかく歌を準備していたのに残念!
ウランを手に入れてからのお楽しみと言う事にしておくか……・・。
さて、海賊船の変身は、どの国バージョンで行こうかな?
この前は間違えて、アメリカン合衆国バージョンでイスラームの港に入ってしまったからな。
危なく沈没させられる所だった。
悪魔がやって来たなんて港で罵られたからな。
ちょっとインターネットで調べてみよう。
えーと、出た出た。
ヤマタイ国はアメリカン合衆国とお友達。
よしよし、アメリカン合衆国で行こう。
旗は、星のいっぱい付いている奴だったかな。
ええと、これとこれを押して………・。
はいOK!」

お頭ブラックは緑と青のボタンを押しました。
海賊船が軋み出しました。
そして、海賊のトレードマークである髑髏の旗はマストに引っ込み代わりにアメリカン合衆国の旗がマストに翻りました。
また、船体自身もゴトゴトと音を立てながら貨物船に変身しました。
変身した海賊船は、通り過ぎる大型タンカーには見劣りしますが、なかなかどうして小さいながらも重量感が感じられます。
そうしている間にも、船は港にどんどん入って行きました。






なんじゃもんじゃ物語 90


海賊たちは、一人また一人とヤマタイ国の服に着替えが完了した者から順に船長室に帰って来ました。
お頭ブラックが、帰って来たたまちゃんに言いました。

「 おい、たまちゃん、舵を替われ。」
「 はい、お頭。」

お頭ブラックも、たまちゃんに舵を任せて着替えに部屋を出て行きました。
殿様のキンキラ着物を着たなんじゃ王子が、岡っ引きの格好をして十手を持ったチンギスチンに聞きました。

「 ほんとに、こんな服でいいのかな?」
「 それにしても、ヤマタイ国人と言うのは変わった服を着てるあるね。
たまちゃんは、普段使っている空手の胴衣ね。
いいあるね、似合ってるよ。」

農民のつぎはぎ服に鍬を担いだエッチソンが、虚無僧の着物を着て尺八を持ったノゾーキに言いました。

「 それは、笛でっか?
アルトリコーダーみたいでんな。
ちょっと、吹いておくれやす。」
「 縦笛かな?
ぶお~、ぶぶお~。
変な音だな。
竹で出来ているよ。
エッチソンの服はひどいね。
継ぎ当てだらけだよ。」
「 衣装部屋に入るのが遅れてしまって、こんなのしか残って無かったんですがな。
これは、坊主用に作ったのに、一番良いキンキラ服を坊主に取られてしもうたんやがな。
初めて船に乗せた頃よりか、すばしっこくなって来てまんなあ。
おやっ、べンケー、格好良いでんなあ。
それ、武士でっせ。
刀二本付きでんがな。」
「 似合うか、そうか。
むふふふふ。
この刀、良く切れそうだ。
気が向いたら、これで手術してやるよ、ふっ、ふっ、ふっ。」

なんじゃ王子が、エッチソンに聞きました。

「 なんじゃ辞典にあったような気もするけれど………。
これ、ちょっと古くない?」
「 お頭に言われた通りに作りましたんや。
言われた通りに作らないと文句が山ほど返って来るから……・。
まあ、よろしいがな、こんなもんですがな。
なあ、たまちゃん、ヤマタイ国人やろ。
こんなもんで、よろしいんちゃいますのん?」

エッチソンの質問にたまちゃんが答えました。

「 僕は、一才の頃、両親と共にヤマタイ国から出国したから分からないよ。
いいんじゃないかな、分かないけれど………。
ま、こんなもんでしょう。」






なんじゃもんじゃ物語 91


お頭ブラックがエッチソンに作れと命じた服は大昔のものでした。
お頭ブラックが小さい頃見た絵本に書いてあったヤマタイ国の知識は、ヤマタイ国の現状と大きく違っていました。
ヤマタイ国製のカメラや自動車は世の中に溢れていましたが、生活様式は大昔と変わらないフジヤマとゲイシャの不思議な国であると書いてあったのです。
お頭ブラックが、もんじゃ島を見た時、フジヤマとゲイシャがいない事を不信に思ったのはこの事によるのです。

「 着いたよ……・・。
お頭、遅いな、何をしているんだろう?」

その時、お頭ブラックが部屋の入り口にあらわれました。

「 よーし、お前たち、出発だ。
ウランは我々のものだ!」

一瞬の沈黙の後、船がひっくり返る様な笑いが沸き起こりました。
お頭ブラックが言いました。

「 何が、おかしい!」

部屋の入り口には、赤くて色艶やかな女物の着物を着た髭もじゃゲイシャが立っていました。
エッチソンがお頭ブラックに言いました。

「 お頭、可愛いでんな。
似合ってまっせ!」」
「 衣装室には、これしか残っていなかったのだ。
この船に乗っているのは男ばっかりだぞ。
こらっ、エッチソン!!
どうして、女物の服を作ったんだ!」
「 お頭が服を作れって言った時、一番長く説明していたのがゲイシャでんがな。
わいは、その時、思いましたんや。
頭に、ピンと来ましたんや。
ははあー、分かった。
お頭は、これを着たがっていると確信しましたんや。
図星でっしゃろ、特別に手間をかけて作りましたんや。
思った通り、ぴったりのサイズでんがな。」
「 わしは、ヤマタイ国は、どんな特徴があるのかを話してやったのだ。
ゲイシャの着物を作れとは、言ってないぞ。」
「 またまたー、本当は着たいくせにー。」
「 ばかものお~。」
「 お嫌いですか?」
「 お好きです。」
「 ほなー、しゃいならあ~。」

お頭ブラックは、子分たちを見まわして言いました。

「 子分たち、よく聞け。
この会話をヤマタイ国では、漫才と言う。
ボケと突っ込みに話しの間がポイントだ。
特に、エッチソンとわしみたいな漫才を夫婦漫才と言う。
こらっ、そこの坊主!
笑ってないで覚えておけ!!」

殿様の服を着たなんじゃ王子は、芋虫の様に床にゴロゴロ転がって笑っていました。






なんじゃもんじゃ物語 92


お頭ブラックは、続けて言いました。

「 それでは、パスポートを渡す。
これも、我らの偉大な科学者、エッチソンが苦心してガリ版で刷ったものである。
今時、ガリ版なんて考えられないだろうが、そこが不思議の国、ヤマタイ国である。
各自、自分のものを取るように。」

子分たちは、パスポートを受け取りました。
ノゾーキがパスポートを見ながら、お頭ブラックに言いました。

「 お頭、こんなペラペラの紙でいいんですか?」
「 いいんだ、ヤマタイ国はスパイ天国だから何でもフリーパスだ。
港の管理事務所に行って、見せるだけだ。
どうせ、管理事務所には行かなければいけない。
なぜなら、船の入港料を払わないと文句が出るからな。
ヤマタイ国に、合法的に、騒ぎを起こさないように密かに潜入するんだ。
と、昨日エッチソンが調べて言っていたのだ。
受け売りだ。
そうだな、エッチソン。」
「 そうで、おます。
ヤマタイ国の入国は、簡単なもんですわ。
ほんまにフリーパスでんな。
役人とのトラブルもありませんわ。
役人の心得で検索したら直ぐに出てきましたんや。
ヤマタイ国の役人は、何もトラブルが起こらないようにするのが仕事の中心なんですわ。
それに、何に対しても責任を取らされることがないように振る舞うんですわ。
何もしないで、だらだらと定年まで働くのが最高の美徳らしいですわ。
だから、特に問題が起こることはありまへん。」
「 と、言うことだ。
それじゃ、出発するか。」

チンギスチンが、お頭ブラックに聞きました。

「 お頭、みんなで行くあるか?」
「 どうした?」
「 治安の悪い国では、船の留守番、要るあるよ。」
「 うーん、そうだな・・・・・。
うん、確かにそうだ。
普通なら、この船は、船内に入る扉が自動ロックされるから、泥棒が入り込む隙は無い。
でも、ヤマタイ国は、犯罪で溢れているらしいからな。
用心した方が良い。
さて、留守番は、誰が良いかな?」

子分たちは、お頭ブラックと眼を合わせないようにしました。
お頭ブラックは言いました。

「 誰も、船に残りたくないようだな。
仕方が無いあれで決めよう。
エッチソン、準備だ。」
「 分かりましたがな。」

エッチソンが船長室の壁にあるレバーを引きました。
壁が左右に二つに割れ巨大なスクリーンが現れました。






なんじゃもんじゃ物語 93


そのスクリーンには、下半部を隠した巨大なアミダくじがありました。
お頭ブラックがカッセトデッキのスイッチを入れて言いました。

「 さあ、わしも引くぞ。
音楽、スタート!!」

海賊たちは、声を合わせて歌いました。
そして、くじに自分の名前を入れて、横に一本線を追加しました。

「 お頭、お頭、おぉ~かしらぁ、引いて、引いて、おお当たりっ!!」
「 エッチソン、エッチソン、えぇ~ちそん、引いて、引いて、おお当たりっ!!」
「 ノゾーキ、ノゾーキ、のぉ~ぞぉきぃ、引いて、引いて、おお当たりっ!!」
「 ベンケー、ベンケー、べぇ~んんけぇ、引いて、引いて、おお当たりっ!!」
「 チンギス、チンギス、チンギスチン、引いて、引いて、おお当たりっ!!」
「 たまちゃん、たまちゃん、たぁまぁ~ちゃん、引いて、引いて、おお当たりっ!!」
「 坊主、坊主、ぼぉお~ずぅ、引いて、引いて、おお当たりっ!!」

海賊たちは、全員くじを引き終わりました。
そして、お頭ブラックは、スクリーンの端にあるボタンを押して叫びました。

「 よしっ、結果発表!」

隠してあったスクリーンの下半分が現れ、下にある当たりのマークから徐々に光る線が上にあがってきました。

「 おっ!」
「 おおっ!!」
「 おおおっ!!!」
「 やったあ~、セーフ!」
「 やったぁ、セーフあるよ!」

お頭ブラックが宣言しました。

「 ノゾーキは、ここに残れ、留守番だ。」
「 私も行きたい、ううううう。」
「 ここはスパイがウロウロしている物騒な国だから、船をしっかり守れ。」
「 でも、行きたい、ううううううう。」
「 泣くな、ノゾーキ。
お土産にイチゴ大福を買って来てやる。」
「 えっ、イチゴ大福、ふふふふふふ。
留守番、する。
イチゴ大福、るんるんるん。
あっ、お頭!
マストの天辺から透視望遠鏡で街を覗いていいですか?
多分、暇だから。」
「 ああ、好きにしろ。」
「 良かった。
エッチソンの透視望遠鏡は、空間を曲げて見られるから街のあらゆる所を覗けるぞ。
うふふふふ、るんるんるん!
留守番るんるん!!」
「 今から、10分後に出発する。
各自、武器を取って来い。
甲板に集合だ。」

10分後、海賊たちは甲板に集合しました。

「 それでは、出発だ。
わし・・・・・、いや、わちきに付いていらっしゃい、うふっ!」

お頭ブラックは、不気味な笑いを投げかけました。
子分たちは、そろって言いました。

「 うう、気持ち悪い!!」

そして、海賊たちは、べンケーを船に残して、お頭ブラックを先頭にゾロゾロと船を降りて行きました。




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