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宇治巡礼9 宇治上神社

2020年08月05日 | 洛中洛外聖地巡礼記

 源氏物語「宇治十帖」に登場する八ノ宮の「宇治山荘」のモデル地として宇治神社と共に親しまれている宇治上神社は、宇治神社境内地から約50メートルほど東へ登ったところにあります。その境内地は狭く、宇治神社の半分ほどしかありませんが、山裾の傾斜地にあたって各所には磐座とみられる巨石が点在し、かつては磐座信仰の拠点としてはじまった祭祀スポットであったことを思わせます。当然ながらルーツは原始時代にさかのぼるとみられます。

 

 境内地の奥の傾斜地に建つ本殿は、御覧のように桁行五間、梁間三間の平面規模をもつ流造、桧皮葺の建物で、内部に一間社流造の内殿が3棟並びます。2004年2月の建築部材の年輪年代測定調査により、藤原時代11世紀の半ば、1060年頃の建築と判明し、現存する最古の神社建築であることが確定しています。
 
 宇治川をはさんでむかいあう平等院が永承七年(1052)の創建であり、その平等院の鎮守社に指定されたことと考え合わせれば、藤原氏による神仏一体の整備事業として宇治上神社も平等院と同時期に現在の姿に整えられた可能性が浮かび上がります。

 江戸期までの日本では神仏混交の状態が普通でしたから、寺社を建てる場合は、たいていワンセットでの建立や整備を行っています。神宮寺や鎮守社の位置にあればなおさらで、宇治において平等院を創建する際にも鎮守社の整備は不可欠だった筈です。
 宇治神社および宇治上神社は間違いなく平等院よりずっと前から境内地も建物も存在していた筈ですが、だからこそ、藤原頼通は平等院を創建するにあたって宇治川をはさむ対の位置に寺地を定めて、その二神社を鎮守社にしたのでしょう。したがって何らかの再整備を行ったはずです。現存する宇治上神社本殿と平等院の建築が同時期であるのも偶然の一致ではありません。

 そして、この寺と神社が、当時の面影を今にとどめて立派に現存しているという、日本でも稀有の文化財保存状況になっています。紫式部が生きた時期より僅かに半世紀ほど後の建築であり、源氏物語の世界観の舞台でもあります。宇治における歴史観光の最大の魅力であると言えましょう。

 

 祭神は3柱、本殿内に並ぶ内殿の左棟に菟道稚郎子命、中棟に応神天皇、右棟に仁徳天皇が祀られます。応神天皇は菟道稚郎子命の父、仁徳天皇は兄にあたります。3棟の内殿のなかで左棟がやや古いため、建設は左棟から始められたのではないかと思われますが、それは祭神が宇治の産土神ともいうべき菟道稚郎子命であるからでしょう。

 

 本殿とともに国宝に指定されているのが、本殿の前下に建つ上図の拝殿です。切妻造、檜皮葺きで、桁行六間、梁間三間の母屋の左右に各一間の庇を付けます。これに応じて切妻造平入りの屋根の左右端に片流れの庇屋根を設けるため、切妻屋根と庇屋根の接続部で軒先の線が折れ曲がりますが、この形を縋破風(すがるはふ)と呼びます。
 母屋の周囲に榑縁(くれえん)をめぐらし、内部には板床と天井を張ります。扉には蔀戸を多用しており、藤原時代のいわゆる寝殿造と呼ばれる住宅風の構えを示しています。

 

 なので、建物自体は鎌倉時代前期の造営ですが、もともとは本殿と共に建てられた藤原時代の拝殿を踏襲して建て直したものであるかもしれません。上図のように背後から見ますと、これが神社の拝殿かと思うような、あまり拝殿らしくない優雅さと、いかにも王朝絵巻に描かれる邸宅の構えを示しています。

 源氏物語ファンが、作中の世界観に一番ひたれる建築遺構である、とするのも誇張ではありません。まさに八ノ宮の隠棲した「宇治山荘」もこんな感じの建物だったのだろう、と思わせます。
 なので、「宇治十帖」の聖地巡礼においては最も人気がある場所となっていますが、それ以上に、平等院と合わせて藤原時代全盛期の寺社の遺構が現存する場所、という点では日本でも唯一のエリアでもありますから、世界遺産の構成要素に指定されて、外国人観光客にも人気があるのも頷けます。

 一般の観光客は、平等院には必ず訪れますが、宇治上神社まで行く人は距離の関係であまり居ないと聞きます。ですが、宇治の歴史と文化的風土を時系列で俯瞰した場合は、宇治上神社のほうが古いですから、まずは宇治上神社に参拝して、それから朝霧橋を渡って平等院に行く。その順で巡るとより藤原時代王朝文化のロマンにもひたれる筈です。

 源氏物語の聖地巡礼ルートがその順路になっているのも、「宇治十帖」の世界観での物語が現実の宇治の歴史状況をそのままなぞっているからでしょう。宇治上神社は、八ノ宮の「宇治山荘」のモデル地としてルートの要の位置にあります。ヒロイン三姉妹の大君、中君、浮舟たちのロマンスをしのぶのにも最適の場所でしょう。

 

 宇治上神社の地図です。


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