風 雑記

建築とその周辺で感じたこと、思ったこと

出水の住宅

2006-05-21 19:57:25 | インポート

1_10 Photo_58 この住まいは25年程前勤務時代に設計担当をさせて頂いた建て主の熊本市での住まい(設計 志賀設計-福岡)です。熊本市外に医院+住宅を設計しましたので、その後しばらく貸家となり、今は息子さんが住まわれています。今日はメンテナンスで気になる処があったので久しぶりに見に来ました。

25年前この住まいを見た時はちょっとショックを受けました。漆喰塗りの軒の深い和瓦寄棟のデザインは存在感があり、内部はトップライトから光が注ぐ中庭的なスペースを中心に各室が繋がり、和とも洋が融合して魅力的な空間でした。当時最も人気の高かった建築家白井晟一を連想させました。

白井晟一の文章 「豆腐」に「・・もし豆腐に美ありとするならば、体系を持って直接生活にとけている「用」の美同一の如きものと考えるより他ない。それは用に対して、永続性ある普遍な信頼が予想されることによって、このような善における美同一が考えられる。・・・」なんとなく解ったような解らない文ですが、木枠で成型され、包丁で厚薄縦横に裁断される豆腐の形に、日本人独特の「用」と「美」があると言っているような。この出水の住宅のシンプルですが、奥の深い空間に何となく通じるものを感じたのを思い出します。

久しぶり読みましたが、最近の建築環境の中では日本の伝統や美を語るのは似合わなくなったようで淋しい気もします。