僕は猫アレルギーだ。



(おじゃまはしませんがね、気になるわけざます。)


工場に繋がれるハナ。
また寝る。

飼い主さん見つかる。

小学生の頃、英会話を教えてくれていたトニーの家は猫だらけで辛かった。
英会話の終わりにオヤツが出るんだけど、正直、
「いや。オヤツはいいから外に出て新鮮な空気を吸いたい。」
と思っていた。
しかし猫は嫌いではない。
嫌いな動物が少ない。(いないに近い)
虎を飼いたいとすら思う。
ユキヒョウとか飼いたいとも思う。
猫は大好きだ。
猫の方も僕のことは嫌いではないようで、どこに行ってもスリスリと足元に群がってきてくれる。
ハエも。
(このハエも、という件なのだが、本当に僕にはハエが懐く。コノヤロウとか心に邪気を持つと懐かない。ハエは不思議。この話はまた今度。)
でもアレルギーなのだから仕方ない。
猫は縁遠い生き物だった。
そんな僕が、猫を飼うことになった。
正確には工場で猫を飼うことになった。
製材をしようと倉庫に行くと、欅の乾燥スペースにネコがいる。
動かないネコがいる。
死んでるようなネコがいる。
「おい、タテヤマ。」
「ん?」
「見ろ?ネコがおる。」
「え???死んでる?」
「いや、呼吸はしてる。」
「寝てる??起きないし目も開けない。」
「ちょっとエサと水を待ってくるよ。お前、死ぬなよ?待ってろよ?」

工場には台所があって、ご飯を作ったりするものだからナンヤカンヤはある。
サバの水煮の缶詰があった。
なかったらコンビニに行こうと思ってた。
ペロリと食べた。

食べる元気があるなら大丈夫だと思った。
「どこから来た?おいしいか?大変だったね。」
色々話しかけてるうちに、飼おうと決めた。
コイツがいいなら、ここで飼おうと思った。
「お前、いてもいいんだぞ?」
と言うと僕の目を見て、
「みゃー」
って言った。
何をメルヘンな?
違うね。
想像で補わなければ、生き物同士は共に暮らしていけない。
理想と現実とか、スッキリ分けようとするけど、それらが混ざってるのが通常だろう。
「館山。」
「はい!」
「名前を考えようか。」
「はい!ファンキー…おかめ…なんにしよ?」
「ファンキー太郎。」
「やんだな。ファン太?」
「よし、じゃあファン太で。」
(やっほー。僕ファン太です。)

(おじゃまはしませんがね、気になるわけざます。)

10月1日にファン太は突然あらわれた。
10月1日は僕らは体制変更などがあり、それこそ猫などかまってられるか!という日だったんだと思う。
僕はそうは思わなかったし、館山もそうだ。
他のみんなもそうだった。
命より大切な宝はどこにあるのだろう?
どうぞよろしくね。
でも、猫アレルギーだから抱っこはしないからね。
それが10月1日の話。
翌10月2日になる。
ファン太の朝ごはん!とか思いながら工場は向かうと左の歩道を犬がテクテク歩いてる。
1人で。
そして、前の車の急ブレーキと急な車線変更。
対向車のクラクション。
悠々と道路を横断してるし。
パッシングをして対向車に知らせ、僕もハザードと急ブレーキ。
後ろに追突されてもしょうがない。
みんな無事に止まれた。
さて。
捕まえよう。
「はな!」
無視。
「ひろこか?!」
無視。
しゃがんでおいで〜ってすると来るけど、決して触らせない。
ご存知、平さんの必殺タックルを決めて捕獲。
噛まれる。
気にしない。
車に乗せる。
大人しくなる。
※後にこの子は本当に「ハナ」だったと判明する。
捕獲直後のハナ。
もう笑顔。

工場に繋がれるハナ。
どこかに帰りたいムード満点のハナ。
我々は仕事に行くから留守番を頼むよ。
ファン太のこともよろしくね。

もう、どこにも行きたくないハナ。

慣れ過ぎてるハナ。

「館山?」

もう、どこにも行きたくないハナ。

慣れ過ぎてるハナ。

「館山?」
「ん?」
「おかしいな。犬猿の仲って聞いてたんだけど…」
「やめなさい。」

また寝る。

飼い主さん見つかる。
やっぱり、お家が一番だね。
お前の名前、ハナって聞いて驚くよりも先にムカつきがあったよ。
なんで無視した?!

(オヤカタ。色んなことあるね。)

(オヤカタ。色んなことあるね。)
そうだね。
10月3日の朝ごはん。
美味しいかい?
