Year In, Year Out ~ 魚花日記

ロッドビルドや釣りに関する話題を中心に。クラシック音楽や本、美術館巡りに日本酒も。

紀尾井ホール 15周年記念コンサート

2010年04月03日 | 音楽

紀尾井ホールで行われた、開館15周年記念コンサートに行って来ました。

演奏は、高関健指揮の紀尾井シンフォニエッタ東京。開館当時としてもまだ珍しかったと思うのですが、このホール専属の、いわゆるレジデント・オーケストラです。普段は別々に活動している演奏家が、この時だけ紀尾井に集まる、言わばアドホックなプロ集団。

この紀尾井シンフォニエッタの演奏を聴いたのは、実は今回が初めてだと思います。紀尾井ホールは、これまではどちらかというとピアノやヴァイオリンの独奏、弦楽四重奏や小規模のアンサンブルのコンサートでしか来たことがありませんでした。

今回のプログラムは、15周年という記念のコンサートにふさわしい、華やかな曲が並んでいます。

1.J.シュトラウス2世:ワルツ「春の声」作品40 (ソプラノ:天羽明惠)
2.モーツァルト:ピアノ協奏曲第26番ニ長調 KV537「戴冠式」 (ピアノ独奏:田部京子)
3.マーラー:交響曲第4番ト長調 (ソプラノ:天羽明惠)

1曲目のワルツは、恐らく誰もが一度はどこかで耳にしたことがあるウィンナ・ワルツ。それを、私も初めて聴きましたが、メロディラインをソプラノが歌い上げます。春色のドレスも鮮やかに、ソプラノの天羽明惠さんの軽やかで艶のある歌声で、会場が一気に盛り上がります。

2曲目のモーツァルトは、これまた華やかな名曲。ピアノの田部京子さんは、カデンツァや緩除楽章で細かい装飾を交えながら、透明感のある音を紡いでいきます。実は今回、1階の4列目、しかもソプラノやピアニストのほぼ正面という位置に座っていたので、細かく、本当に細かく踏み分けるプロのペダルさばきを間近に見ることが出来ました。濁りのない、透明感のある音色が、本当に素晴らしかったです。

最後はマーラー。この曲を生で聴くのは初めてでしたが、楽しみにしていたのはその第3楽章。第5番のアダージェット(第4楽章)と並び称される、マーラーの耽美な緩除楽章の代名詞です。

演奏はその期待を裏切らない、緻密なもの。紀尾井ホールの舞台としては、このような大編成のオーケストラが並ぶには少し狭い感じもしましたが、それでも例えばステージに向かって左手に4本並んだコントラバスが、位置的には2階の張り出し(バルコニー席)の下にあって、圧倒的な底力を響かせます。

この曲は、特に弦楽器の唸るような歌わせどころがたくさん出てくるのですが、これは恐らく指揮者の考え方でもあるのでしょう、バックに並んだ金管楽器に少しも負けない音量で、ヴァイオリンからチェロまで、まさに朗々と歌い上げます。特に、今回は近くで聴いたこともあって、左右に並んだ第1ヴァイオリンと第2ヴァイオリンが、コンサートマスターから一番後ろまで全てよく鳴っているのがとても印象的でした。

ただ惜しむらくは、特にマーラーで、オーケストラがフルで(全員で)大音量を発する際には、ホールとしての鳴り方のMax.を超えてしまうようなところがあって、音が割れるとまでは言いませんが、このホールでこの編成はちょっと無理があるのかな?とも感じました。それでも逆に、自分が座っている席も含めて床から壁まで全て鳴っているような感覚は、大きなホールとはまた違った臨場感があって、それはそれでなかなか爽快な経験でした。

このマーラー、最終楽章の最後は非常に静かに、それこそ消え入るように終わります。今回の演奏で曲が終わった瞬間、それは瞬間というよりも、本当に時間が止まったように音が消えるのですが、それから正味5秒、指揮者もオーケストラも、それから客席も、誰も動かず、音もたたず、ホール全体が沈黙した状態が続きます。

これは、いいコンサートではよくあることで、ステージと客席が一体となった、充実した沈黙。やがてそれが終わり、誰かが息を吐き、また誰かが息を吸い、そうしてようやくまばらな拍手が起こり、やがてそれが大きな拍手となってホールを満たす。

久しぶりに、本当にいいコンサートでした。



    

帰り道、道路を挟んで向い側の土手にあがり、一人夜桜見物。

  

会社でも今週から真新しいスーツを着た新入社員を見かけるようになりました。

毎年書いているような気がしますが、こうしてまた新しい春を迎えられたことを、喜ばしく思います

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