ここ何年か、気になって楽譜を取り寄せてみては触ってみる曲に、シューマンが増えてきた。
と言っても比較的簡単な小品ばかりなのだが、独特の曲調や雰囲気と、これまた独特の弾きにくさの先に、何とも言えないロマンを感じる。例えばこの曲、「子供のためのアルバム」(作品68)から第35曲「ミニョン」。
旅の一座に拾われたミニョンが、まだ見ぬ故郷を想って抱く、淡い憧れ。(もっとちゃんとした解説は、シューマン . . . 本文を読む
徒に無駄遣いは良くないと思うが、安物買いのナントカということもある。
うちのピアノ(アップライト)には元々、広幅のベンチタイプの椅子が付いていた。それは高さが変えられないタイプの椅子で、考えてみれば子供の頃から今に至るまでずっとその高さの椅子で弾いていたのがどうなのよ?なのだが、ちょうど1年前、高さが変えられる椅子を買ってみた。弾きやすい高さを試してみると、なるほど今までの椅子の高さは低すぎで . . . 本文を読む
チョ・ソンジン。
2015年のショパンコンクールの覇者で、ところどころ動画を見ると、ともかく音がクリア。どこかでまとめて聴いてみたいと思っていた矢先、SNSでグラモフォンの記事が流れて来た。
ヘンデルの組曲第1番から第4曲、メヌエット(ト短調)。ハープシコード(チェンバロ)用の原曲を、往年のピアニスト、ヴィルヘルム・ケンプがピアノ用に編曲したもの。
久しぶりに全音のピアノピースを買ってみたら . . . 本文を読む
先日、近くのホール(市営)にスタインウェイが置いてあり、月に一度その演奏体験のイベントをやっていることを知った。枠は1人1時間(1,500円)で、応募者多数の場合は抽選とある。
恐る恐る電話をすると、毎回応募者が多く、けれどなるべく多くの人に体験していただきたいので初めての方を優先させています、とのこと。
それから待つこと数日、当選の電話をいただいたのだが、時間は金曜日の15時~16時。速攻 . . . 本文を読む
クンウー・パイク、ピアノリサイタル(10/27 王子ホール)。
ショパンのノクターンの美しさに気付かせてくれたピアニスト。この機会を待ちに待っていた。
プログラムのメインはグラナドスの「ゴイェスカス」。輝かしく煌く音は元より、音と音の間の静寂の美しさ。小さなホールゆえの一体感は格別で、久しぶりに全身を音に洗われる感覚。
コロナ禍で中止していたサイン会も復活したようで、会場で購ったCDの . . . 本文を読む
子供の頃、NHKの「音楽の広場」という番組で、黒柳徹子さんとの掛け合いを覚えている方がおられるかもしれない。芥川也寸志さん。
1979年の作品というから、それはちょうど私がピアノを習いに行くのをやめた頃。部活と両立が難しいからというのは表向きの理由で、実際はその時既にピアノを弾くのが楽しくなくなっていた。今にして思えばあの時、ピアノや音楽そのものまで嫌いにならなくて良かったとつくづく思う。
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ここしばらくフルオーケストラのコンサートには行っていないけれど、いつか生で聴きたい曲の一つ、マーラーの交響曲第2番。
「復活」という名前で呼ばれるのはその第5楽章に詩人クロプシュトックによる賛歌が用いられているからで、1時間を優に超える長大な作品の最後の最後、これが聴きたいから1時間我慢すると言えば言い過ぎだが、オーケストラと合唱が「(キリストが)生きるために死ぬ。そして汝らを神の元へ(zu . . . 本文を読む
コンサートでホールに行かなくなって久しいが、録画されていたTVの番組でクンウー・パイクがショパンのノクターンを弾いているものがあった(昨年7月の王子ホール、ノクターンばかりを約80分、途中休憩なし)。
演奏順は作品の番号順ではなく、パイク自身の考えだろう、放送時間の関係で途中何曲かカットされているが、ラストは作品48-1で終わる。その組み立ての妙(グラモフォンの下記動画では1分30秒過ぎ辺り) . . . 本文を読む
先日の週末、録画されたTVの番組をチェックしていた時にたまたまこの曲に出くわした。
元はオルガン用の曲で、手持ちのバッハ全集にも確かに入っているのだが、テンポも違えば響きも全く違う。
5分くらいの短い曲だが、これを聴いていると、浮世のあんなことやこんなことが何だかどうでも良くなってくるような、そんな気がする。
ちょうどYoutubeにグラモフォンの動画があがっている。冒頭の最弱音からクライ . . . 本文を読む
それと狙って買うことはあまりないが、全集のようなセットものを買った時に入っていると思いがけず嬉しいもの。それがリハーサルの録音。
ブルーノ・ワルター(1876-1962年)がその最晩年、当時としては最新のステレオ録音で残したベートーヴェンの交響曲全集。
録音セッション用に編成されたオーケストラはお世辞にも鉄壁とは言えないが、ワルターがリハーサル中、オーケストラの団員に優しく "Gentl . . . 本文を読む
立春、春一番ときて、早くも花粉の気配 立春、春一番ときて、早くも花粉の気配 🤧
テレワーク中はいつもiPodを流しっぱなしにしているのだが、何かのタイミングでこれまで気付かなかった曲にふと気付く。
ゲオルク・ベーム(1661-1733)はバッハのひと世代前の作曲家。今は便利な世の中で、ウキウキペディアでさっと楽譜も覗けるので、週末に鍵盤を触るのを楽しみにしていた。
実は先日、ピアノのハンマ . . . 本文を読む
バッハの無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第2番、と言えば何だか堅苦しいが、その終曲の「シャコンヌ」は誰もが耳にしたことがある曲。
これまでハイフェッツにその全曲録音があるとは知らなかったのだが、1952年録音のモノラル版とは思えない音の凄み。ここ数日、朝から晩までずっと2枚組のこのCDを聴いている。
その18年後、フランスのテレビ番組に出演した時の映像がYouTubeにあがっている。御年 . . . 本文を読む
バッハやヘンデルよりも前の時代、ブクステフーデという作曲家がいた(1637-1707年)。
生前はオルガニストとして鳴らし、1685年生まれのバッハやヘンデルも彼の晩年の演奏を聴いたと言われる。
このところまとめて色々聴いているのだが、CD何枚分もiPodで連続して流していても、必ず「お!」と思って手が止まる曲があるもの。チェンバロ(もしくはクラヴィーア)のために書かれた「アリア『宮廷風に』と . . . 本文を読む
メナヘム・プレスラーというピアニストがいる。
数年前の来日公演をNHKの番組で見て(その時、御年93歳)、最初はやや覚束ない指遣いに驚いたのだが、その後しばらく見ているうちに、実はとんでもなく特別な光景を目にしているのだと気付いた。譜面通りにミスなく弾くという次元を越えた音楽性。ありきたりな言い方だが、音楽性という言葉しか思いつかない。
幸運なことに、その数年前、パリでのライブ映像がDVD/B . . . 本文を読む
バッハ・コレギウム・ジャパン定期演奏会。
毎年9月か10月頃に翌年度の案内が来るのだが、去年のその時からずっと楽しみにしていたブランデンブルク協奏曲。
6曲全て調性や編成が異なるのだが、各パートがまるで対話するかのように紡がれる旋律の受け渡しは、丁々発止というよりも和気藹々。
けれどそこにタイミングを刻む厳しさは勿論あって、そのメリハリこそが音楽を生き生きとさせる。あー素晴らしい。 . . . 本文を読む