Year In, Year Out ~ 魚花日記

ロッドビルドや釣りに関する話題を中心に。クラシック音楽や本、美術館巡りに日本酒も。

アバド&モーツァルト管弦楽団/ブランデンブルク協奏曲 (Blu-ray)

2012年07月14日 | 音楽

先日、HMVのサイトでCDをオーダーしようとした時のこと。

「あと何枚買ったら○○%オフ!!」

こういうセリフに極めて弱い私が、たまたまランダムに検索してヒットしたのがこちらのブルーレイ。

私はこういうサイトの評判はあまり見ない方ですが、何だかこのブルーレイは買う気になって(というのは同じ内容のDVDやCDもありましたので)ポチッとやってしまいました。

しかーし。

家に届いて何気なく観てみると、う~んと唸ってひっくり返りそうになりました。

指揮者のアバドは言わずと知れたベルリン・フィルの前常任指揮者。そのアバドがベルリン・フィル退団後に若手演奏家を集めて結成したのがモーツァルト管弦楽団です。

(指揮者のアバド)

このブルーレイが凄いのは、その若手演奏家たちの演奏もさることながら、ソリスト(独奏者)の面々の丁丁発止のやりとり。しかもそれが極上の映像で見られます。

ブランデンブルク協奏曲は全部で6曲。それをひと晩で演奏したライブの映像です。各曲それぞれに味わいがあって楽しいのですが、何と言っても圧巻は2番。

この曲については以前 カフェ・ツィマーマンのCD でも触れましたが、ヴァイオリン、リコーダー、オーボエ、そしてトランペットが独奏に立ちます。特にそのトランペットパートは恐らく難曲と言って良いのだと思いますが、それがこのブルーレイでは、まるで滑舌の素晴らしい役者さんの独白を聴くような、とてもスムースで心地よい演奏になっています。

(右手前がトランペット)

加えて、他の独奏者は勿論、後列に並んだ演奏者たちもみな、終始とても楽しそうに、時には笑顔でアイコンタクトを交わしながら、いかにも心底演奏を楽しんでいるという感じです。



その臨場感たるやまさに至福。ブルーレイの澄み切った映像と相俟って、まるで自分がその時のコンサートの会場に居るかのような錯覚を受けるほど。

YouTubeに上がった動画は、その画質はブルーレイには比ぶべくはありませんが、その雰囲気と演奏の素晴らしさは十分に味わって頂けると思います。

ブランデンブルク協奏曲第2番。特に最後の第3楽章、演奏が終わった直後のトランペット奏者(ラインホルト・フリードリヒ)の表情としぐさにご注目(11分15秒あたり)。



この日のコンサートはこの曲が最後だったのですが、この後延々とカーテンコールが続き、やがてアンコール。

ここでまた唸ってしまったのが、アンコールのその曲。アンコール用の小品ではなく、何と今しがた演奏を終えたばかりのブランデンブルク協奏曲第2番の第3楽章。皆さん、こんなしんどいのをひと晩でもう1回吹くんすか?   

この動画だけを観ると、まるで1曲目に吹いたように見えてしまいますが、そのトランペットはまさに必殺。

勿論、ヴァイオリンもオーボエも当たり前のように素晴らしいのですが、このアンコールのもうひとつの見どころはリコーダー。

若い頃「リコーダーの妖精」と呼ばれたミカラ・ペトリが、アバドから渡されたソプラニーノ・リコーダー(小学校の音楽の授業で最初にやったリコーダーがソプラノで、そのさらに高音域)を使って演奏しています。この曲をソプラニーノ・リコーダーで演奏しているのは初めて観ましたが、それは妖精のダンスとでも呼ぶにふさわしい、軽快かつ完璧な演奏で、まさに鳥肌モノ。



こういう演奏がこういう画質で手軽に観れるというのは本当に素晴らしいです。

上で観て頂いた第2番では、独奏者の4人が(予め打ち合わせもしているのかも知れませんが)同じフレーズを順繰りに受け渡しながら演奏する際、細かい装飾音を同じパターンで入れる箇所が何度も出てきます。こういう演奏を観ていると、音楽というものが文字通り瞬間藝術だということを実感しますし、同時にそのステージの上でその瞬間に音を合わせることに死力を尽くすプロ集団の心意気をまざまざと見せつけられた気がします。

上では触れませんでしたが、名手カルミニョーラ(ヴァイオリン)の華麗な弓さばき、マリオ・ブルネロ(チェロ)とアロイス・ポッシュ(コントラバス)の堅実な低音、そしてオッターヴィオ・ダントーネのクールで控え目なチェンバロ。いずれも見応え十分です。

CDやDVDではなく、ブルーレイをオススメします。

ブランデンブルク協奏曲全曲 アバド&モーツァルト管弦楽団

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