今年は印象派前後の美術展が目白押しでしたが、今年の最後を飾るのが六本木、国立新美術館で開催されたゴッホ展です。(会期は既に終了しています。)
会期末は激しく混むことが分かり切っていたので、なるべく走りの頃に行こうと思いながら、気付くともう12月。何とか仕事の段取りを付けて、とある金曜日の夜に乃木坂へ向かいました。
案の定、会場は大混雑。オルセーの時ほどではありませんが、それでも人の波に逆らって歩くのは骨が折れました。
今回はオランダのファン・ゴッホ美術館とクレラー=ミュラー美術館、2つの所蔵品からの展示。これまでに観たことのある作品との再会や、初めて観る作品もあって、なかなか楽しめました。
まずはパンフレットにも載っている自画像。
(ゴッホ「灰色のフェルト帽の自画像」1887年、ファン=ゴッホ美術館蔵)
皮膚の色、服の色、背景の色。色と言うよりも、光の粒。その長さ、方向。大胆ではあるけれど計算された、巧妙な筆致で色が置かれています。
残り3点は、今回何だか妙に眼が行ってしまった静物画と室内画。いずれもアルル時代に描かれています。
(ゴッホ「タマネギの皿のある静物」1889年、クレラー=ミュラー美術館蔵)
何とも不思議な絵です。机はまるで傾いています。セザンヌの静物画が多視点から描かれているのと同じなのでしょうか、どう考えても机の傾きと奥の壁の線の関係がちぐはぐです。セザンヌの絵がそれでもかっちりとした構図におさまっているのとは異なり、何とも言えないこの不安定感。
(ゴッホ「ゴーギャンの椅子」1888年、ファン=ゴッホ美術館蔵)
まるでそこにゴーギャンが居るかのように描いた、ということですが、私はまるで今にも椅子の肘かけが動きだしそうに見えて仕方ありません。
(ゴッホ「アルルの寝室」ファン=ゴッホ美術館蔵)
会場にはこの寝室が再現されていましたが、比べて観れば観るほど、この独特の歪みが気になります。それでも不思議と眼を反らす気にならないのがこの絵の不思議なところ。右手のベッドも奥の小机も、それから左手の椅子も、何だかとても座りが悪く、今にも立ちあがって動き出しそうな雰囲気。
不思議です・・・。
これまでゴッホと言えばその独特の肖像画に眼が行っていたのですが、今回は何故だかこれらの室内画に惹かれました。次回またどこかで会える時には、またまた違った見え方がするのでしょう。その時が楽しみです。
没後120年 ゴッホ展
2010年10月1日~12月20日
国立新美術館
っていうか、出勤しっ放しなんですけどどゆこと
また陣中見舞い送りましょうかね