とんねるず主義+

クラシック喜劇研究家/バディ映画愛好家/ライターの いいをじゅんこのブログ 

とんねるずイズム7「祭り」

2012年05月25日 19時44分46秒 | とんねるずコント研究



昨日(5月24日)の「おかげでした」は、きたなトランと食わず嫌いの2コーナー構成でした。どちらも安定感のある企画で、正直言って見る前は、普段通りのおもしろさだろう、サプライズな笑いも特にないだろう、と思っていた。

ところが---いつにもまして大笑いしてしまった。

特にきたなトランがすごくおもしろかった。ゲストの水川あさみちゃんと相性が良い、というのも大きかったけれど、個人的に非常に好きな感じのとんねるずの良さを、ひさしぶりに堪能させていただきました、という内容でした。

タカさんの中学の後輩が経営するという板橋区のレストランバー「PARI」(PARISにあらず)にて。勝手知ったる板橋ということで、とんねるずもリラックスしてたし、スタートからやたら「後輩ヅラする」(byノリさん)オーナーに対して、先輩ならではの辛口でせめた。「身内だから判定が甘くなった」とコーナー史上初の星「0.5」(笑)それに対してオーナーがひとこと---「いろいろ申し訳ありません」(笑)

後輩の謙虚さにすっかり感じ入ったとんねるず、史上初の判定後の再度実食でデザートを注文することに。だがこれもいまいちの味で、史上初の判定やりなおし。公正な目で判断した結果、史上初の「無星」が出たのであった・・・!

若い芸人さんたちと銀座でわいわい買い物したり、落とし穴に落として爆笑したり、といった「大暴れ」するとんねるずはもちろん大好きです。だけど、実を言えば、こんな風にじっくりと「人」とふれあうとんねるずに、自分は何度も惚れ直してきたんだなあ、と思う。

ふれあう流れのなかで、おもしろいことが自然に起きてきて、それをとんねるずが思いも寄らないような笑いに高めていってくれる。昨日のきたなトランの笑いに、台本はない。台本通りにやっていたら、あれほどおもしろくはならなかったはずです。

そのおもしろさは、言葉で説明するのがとてもむずかしい。それは一種の「空気」の問題であって、なんとなく「あ、これはおもしろくなっていくんだな」という空気感とかうねりとかを肌で感じるしかないようなものです。

とんねるずのこの種の笑いは、ライブの感覚と非常に近いと思う。ライブは生きものだとよく言われるように、会場全体の空気感によって出来が左右されることはよくある。とんねるずの笑いも、現場の空気をどうつくり、どううねらせるかが重要なファクターだと思うんです。それって、いわば「祭り」のようなものなんじゃないだろうか。

今回の「祭り」というテーマに、たとえばカメラ破壊とか、日本平のタカさんぶちぎれとか、いわゆる「事件」を思い起こした方は多いかもしれません。そしてそれは正しい。とんねるずが残してきた伝説のかずかずも、やはり「祭り」でした。

台本にないハプニング。無礼講の大騒ぎ。思えば、わたしがとんねるずを心底愛したのも、ふたりが「祭り」独特の高揚感を感じさせてくれたからでした。

とんねるずのファンというのは、多かれ少なかれ祭り好きなのではないでしょうか?クールに腕組みをして静観するタイプじゃないよね。みんなといっしょになってワーワー言いたいタイプ。「見る阿呆」じゃなく「踊る阿呆」。

ひとりでテレビを見ていても、とんねるずを見ているとわたしはしょっちゅうテレビにむかって「ヤッホ~!」とか「イエ~イ!」とか叫びまくるんです(笑)それが、気持ちイイから。とんねるずは、祭り好きの心に火をつけてくれるのです。

とんねるずのこの種の性格は、やはりバブルと関わりがある。笑いを時代や社会背景とむすびつけてかんがえるのは、わたしはあまり好きではないけれど、とんねるずの「祭り」志向が、社会全体が浮かれ気分だったあのバブル時代にびたっとハマったのはやはり確かでしょう。あの頃は「祭り」を起こしてハメをはずす者をうけいれる鷹揚さが、社会の側にもあったのです。

いろいろな理由で日本全体が沈滞しているいま、とんねるず自身がみずからの「祭り」志向でみんなを活気づけていこうとアクションを起こしている、という事実は、世間のみなさんにどのくらい理解されているのでしょうか。

たとえば「前略、道の駅より」には地域活性化という“隠れた”テーマがある。むかしなら、わざわざそのテーマを言わなくても多くの人々が感じとってくれた。「買う。」シリーズもしかり。哀しいかな、いまは「地域活性化してます」とはっきり言葉に出して言わなければつたわらない---そうすることが、いかにオシャレじゃなく、いかに野暮ったくとも。現代は、「祭り」を起こすのがとてもとてもむずかしい時代です。

昨日のきたなトランでは、後輩オーナーのまさかの謝罪にタカさんは涙を流して大笑いし、最後にはタカさんの方から両手で握手をもとめていきました。あの瞬間、わたしは爆笑しながら同時に胸がかっと熱くなった。

筋書きのないドラマ、だなんてダサイ言い回しはしたくないけれど、生きた人間同士の熱いつながりを見たからこそ、わたしの心は高揚したのです。そんな「静かなる祭り」も、いいものです。

本シリーズの一回目に書いた「人間力」ということを、ふたたび思い出していました。あと、ノリダーの必殺技もね・・・必殺技「フェスティバル、アーンド、カーニバル!」は、伊達ではなかったのだ。






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6 コメント

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はじめまして (えいじ)
2012-05-26 02:07:02
とんねるずに対してバブルの匂いやノリを感じさせる…って批判はよく見ます。
また批判が集中する理由もとんねるずのコンビとしての本質を「祭り」志向だ、と表現されたことでよくわかりました。

「祭り(カーニヴァル)」の本質は「蕩尽」って言ってたのは誰だったか…。
経済性を持ち出されちゃうとあらゆる祭が無化されてしまう。
きらびやかな神輿、何年かに一度の祭のためだけに切り出される巨木…。

もう1点、とんねるずの笑いには何とも言いがたい魅力があります。
稚気というか。
これも「祭り」にはつきものですよね。
いい大人が…ってやつ。

「祭り」と表現されたことはスッと理解出来ました。
同時にこの魅力と意義を伝える困難さを感じてしまいました。
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えいじさん (ファイアー)
2012-05-27 09:24:40
はじめまして!
コメントありがとうございます。

そうか、最近ではとんねるずのバブルの匂いが批判されることもあるんですよね・・・
どうせっちゅーんじゃ、って話ですけどw
見落としちゃいけないのは、とんねるずは時代がバブルだからそれに合わせたわけじゃなくて、
たまたま時代がとんねるずの祭り志向に合ってただけなんだ、ってことだと思うんです。

>「祭り(カーニヴァル)」の本質は「蕩尽」
>経済性を持ち出されちゃうとあらゆる祭が無化されてしまう

すばらしい!まったく仰る通りです。
祭り=不謹慎、悪ふざけとみなす声がいまちょっと幅をきかせすぎてますよね。
「買う。」の「タレントがかわいそう」批判なんかもそれでしょう。

>稚気

あ~確かに!これも大きな魅力ですよね。
子どもにもどってバカやるっていうね。しかもかっこよく。

「祭り」志向を伝える難しさ、わかっていただけて、書いた甲斐がありました。

ちなみにバナナマン設楽さんが「買う。」についてラジオで良いことを言ってます。
「1万円を1万円としか見てない人は、悲しいじゃん。要は、そこで買って(付加価値を見出す)」
http://numbers2007.blog123.fc2.com/blog-entry-1864.html
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景山民夫氏の著書 (VSNF)
2012-06-28 22:28:47
ご無沙汰しております。
だいぶ前に書き込んだのですが、こちら側の手違いで書き込めませんでした。
随分時間を置いてしまい申し訳ございません。

以前ご紹介した著書お役に立てたようで幸いです。

また過去の記事を見ていましたら、「ロイド」について誉めていたので嬉しかったです。

私も大好きなのですが、取り上げられる機会が全くと言っていいほどないので、(「チャップリン」、「キートン」の影に埋もれがちですので・・・・・)論評も聞けて嬉しかったです。

ところで以前たまたま古本屋を覘いておりましたら、「景山民夫」氏の著書「つまり何なんだ」の中で「とんねるず」が取り上げられておりましたが、ご存知でしょうか?

「景山氏」は初期の(といっても中期以降はわかりませんが)「みなさんのおかげです」を大好きな番組と言っていて「タイトルが全部ひらがななのがすごい」というような事が書いてあったと思います。
今回は数ページに及び、コンビについても(分析など)細かい点についても諸々書いてあったと思いますが、ご存知でしたでしょうか?

「景山民夫」氏といえば著書に「極楽TV」という著書もあり、テレビに関しても造詣が深い方だと思うので、スゴい事だと思います。

それにしても「上岡龍太郎」や「小林信彦」、「井原高忠」、「景山民夫」という人たちに褒められてはもはや素人芸ではないことは確かですね。
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VSNFさん (ファイアー)
2012-06-30 10:52:38
おひさしぶりです!
最近とんと更新していないのに、こうしてお立ち寄りくださって、恐縮です。

景山民夫さんの著書について、教えてくださって、ありがとうございます!
とんねるずについて書かれているのは知らなかったです。
コンビについての分析、などと聞くと、興味がわくわくわいてきます!
これはぜひ読まなくては。

当時は、糸井重里さんとか景山さん、小林信彦など、とんねるずや秋元康の新しい流れを評価してた「一部の大人」もいたんですよね。
井原さんは評価してたかどうかはちょっと微妙かもしれませんけれど^^;
でも、最初に目をつけて発掘した鋭さは、やっぱりすごいです。

マルセ太郎さんの本もとてもおもしろくて、教えていただいてほんとに良かったです。
いつもありがとうございます。

VSNFさんはロイドファンでらっしゃるんですか!!
きゃあうれしい!
どの作品がお好きですか?わたしは『猛進ロイド』です。
ほんと、ロイドは過小評価されすぎですね。
サイレント喜劇のなかで、いちばん見やすく共感しやすいのがロイドなのに。かっこいいし^^

もしフェイスブックをごらんになれるようでしたら、サイレント喜劇に特化したページをつくりましたので、ぜひそちらも見てみてください。
「サイレント喜劇の素晴らしき世界」というタイトルです。
https://www.facebook.com/pages/サイレント喜劇のすばらしき世界The-Wonderful-World-of-Silent-Comedy-and-more/236790759750695
ちょうどいま、ロイド特集をやっています。

・・・と、そんなことをやってるからブログを書かないのだろう、とつっこまれてしまいますね^^;
ブログ記事は、自分の場合ひとつの記事に数時間かかっちゃうので、
いまのように多忙なときにはなかなか手がつけられません。
近々ブログのほうも再開しますので、またよろしくお願いします。
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返信ありがとうございます (VSNF)
2012-06-30 13:24:45
返信、お気遣いの方たいへんありがとうございます。

「井原高忠」氏ですが、活字か何かで読んだところですと、「とんねるず」が出てきた当初、戦中派が99%「反とんねるず」だったと拝聞したと思うのですが、(「オールナイトフジ」での野坂氏の殴打事件などはその象徴でしょう)「井原」氏も当初は見限っていたようですね。

後年「みなさんのおかげです」を観て感激したみたいなのですが、これで評価が覆ったと私は解釈していました。

またマニアックな話題で恐縮なのですが、ロイドですが、いつぞや観た「ロイドのスピーディー」が個人的に好みです。

キートンもファンなのですが、それに比べて取り上げられる機会が全く無いですよねぇ。

まぁおそらくテレビでも(映画というより人物自体が)取り上げられる事はないと見ていいかと思います。
「みんなもっとロイドを観ようよ」という「ファイアー」様のご意見には同意なのですが・・・・・

フェイスブックですが、利用したことがないので、おそらく観れないかと思います。
折角のお気遣い、たいへん申し訳ないのですが

「景山民夫」氏ですが、「極楽TV」という著書の中で「ペリーコモーショー」だったかを例に挙げ、「今夜は最高」について「セットは素晴らしいが、台本が悪い」と言っておりました。(私も同意です)

その引用に関しても正確だったのですが、いずれにしましてもそういった方(テレビに関してはまっとうな方)が番組を評価していたと念頭に置いても良いかと思われます。
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VSNFさん (ファイアー)
2012-07-01 13:12:46
野坂氏殴打事件、なつかしいですw
いまじゃ考えられないことかもしれないですね。小説家とお笑い芸人がケンカするって・・・

井原さんのとんねるず観ってどうなのでしょうね。
表立ってはほとんどおっしゃらないけど、プライベートでは交流あるんじゃないかなあと思ったりします。

「今夜は最高」を見てたのは幼い頃で、ほとんど記憶もないのですけど、
そうやってしっかりした批評をする人がいるというのは大事ですね。
アメリカが何でもすばらしいっていう時代ではないですが、
やっぱり外のおもしろいものを評価してとりいれていかないと、って気はします。

ロイドのスピーディ!おもしろいですよね~
70年代はロイド小劇場っていう番組があったそうですね。フランキー堺さんのナレーションで。
そういうのを今地上波でやれたらすごいですけど・・・
ケーブルテレビがもっと一般化すれば、クラシック映画専門チャンネルとかで
サイレント映画にふれる機会は増えると思うんですけどね。
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