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***以下の内容はネタバレしています。「シャーロック」第3シリーズ未見の方は十分ご注意下さい***
レビュー1
それにしても、このエピソードはコミカルです。
もともと「シャーロック」は、笑えるドラマではある。モファットもことあるごとに、ホームズ譚の潜在的な喜劇性について話していますが、「三人の署名」は、意識的かつ積極的に笑わせにはしったエピになってます。
まずはオープニング。ギャングの巧妙な犯罪に、レストラードとドノバンが振り回される様子が、とても丹念に描かれます。ところが、このシークエンス、本編のメインプロットとはまったく関係がない(笑)
シャーロックから「HELP」のメールを受け取り、仕事を投げうってレストラードが221Bに駆けつけると、シャーロックは結婚式のスピーチ作りで悩んでいただけだった・・・ヘリコプターまで要請したグレッグの立場は!(風に揺れるカーテンと効果音だけでヘリコプターを表現してるのが、可笑しさを増幅させる)
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マクガフィンとまではいえずとも、大いなるミスリードであることは確かです。こういう無意味なシーンを、カネをかけてしっかり作り込む遊び心が、うれしいじゃないですか。
脇役たちも生き生きしてる。マイクロフトがワークアウトしてる姿は、何度見ても大笑いしてしまいます。まさに The Private Life of Mycroft Holmes(笑)
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ハドソン夫人は今回、完全にコミックリリーフになっていますね。かつての夫、すなわちミスターハドソンが麻薬王だったという告白には、ひっくりかえりました。典型的なペッパーポットにとんでもない過去がある・・・いかにも英国的な発想ではないですか?
(ハドソン夫人の夫がフロリダで処刑されたのって、一体いつなんだろ?シャーロックが依頼を受けたのだから、それほど昔ではないはずだけど、結婚してたのが70年代あたりだとすると、計算が合わないのでは・・・と、細かいことを気にするのはやめよう)
メアリーの元カレや、ミニ・シャーロックことアーチーとシャーロックのやりとりが楽しく、何度もくりかえし見てしまいます。ベネディクトの“マジメ”な演技が、こういうちょっとしたシーンにも光っていると思いました。
ここで、コメディにおけるベネディクトとマーティンについて、ちょいと語らせていただきたい。
ことコメディに関しては、マーティンの方がベネディクトの大先輩です。コメディドラマ The Officeで有名になったマーティンは、コメディアンではないにしても、すぐれた喜劇俳優であるのは確か。見るからに朗らかな、人をひきつける顔。明るいブロンド。小柄な体。どれもこれもコメディ仕様にできています。
コミカルな体の使い方も、マーティンはとてもうまい。ジョンとシャーロックが泥酔状態で捜査するシーンなど見ると、ベネディクトもがんばっているものの、マーティンにはやっぱりかなわない。
『ホビット』のインタビューで、マーティンが、往年のコンビ芸人ローレル&ハーディに言及したことがあります。きっと彼は、クラシックコメディもよく研究しているんでしょう。
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ローレル&ハーディ
しかし、マーティン=ジョンとは違った方向性で、ベネディクト=シャーロックもとてもおもしろい。ベネディクトが使っているのは、いわゆる「デッド・パン」=無表情によって笑わせる技術。シャーロックの表情が一瞬ぽかんと空白になる時など、ものすごく可笑しいことがよくある。
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デッド・パンで有名なのは、バスター・キートン。
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モンティ・パイソンのジョン・クリーズもそうかな。
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日本では誰だろう。板尾さんとかそうですね。
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板尾係長@ダウンタウンのごっつええ感じ
ベネディクトも、研究熱心なのはもちろんだから、マーティンからも、いろいろなコメディのスキルを盗んでるんじゃないかなあ。役者として、互いに刺激しあえるコンビなんだろうなと思うわけです。
そういえば、先日ロンドンのAppleストアでおこなわれたQ&Aセッション(iTunesで視聴可能)、マーティンがこんなことを言ってましたね。酔っ払いシーンで、ジョンがシャーロックのおでこを指差す可愛い仕草は「ベンを笑わせるためにやったのに、本編で使われててびっくりした」と。Stag Partyのシークエンスは、即興が多かったとベネディクトも話してました。
「シャーロック」の魅力は、まさにこれなんですよね。つまり、作り手や演者サイドが、いちばん楽しんでる。モファットとゲイティスの趣味ですからね、このドラマは。たまたま、世界中に数億人のファンがいるってだけで(笑)
趣味だからこその余裕、遊び心。それって、けっこう画面に如実にあらわれるものです。視聴者は、そういうものをこそ、テレビで見たいと思っている。
さらにラッキーというか、うれしいことに、役者たちもまた、このドラマに出ることを心の底から楽しんでる。メイキング映像なんかでよく見る社交辞令じゃなく、彼らが本気で「シャーロック」を愛しているのが伝わってくる。こんな作品は、めったにあるものじゃありません。
彼らが楽しめなくなった時こそ、悲しいけれどこのドラマが終わる時であり、逆に言えば、彼らが楽しんでやれる限りは、まだあと数シリーズは続いてくれるでしょう。
それにしても、くだらないベタな笑いがやっぱり好きなわたしは、ジョンがシャーロックに介添人を頼むシーンに爆笑してしまいます。「これただのコントやないか!」という場面が、「シャーロック」には必ずありますが、今回はまさにこれでした。いやほんとにありがたい。
Sherlock 3x02 - John asks Sherlock to be his best man Part 3
Sherlock 3x02 - John asks Sherlock to be his best man Part 4
Sherlock 3x02 - John asks Sherlock to be his best man Part 5
Sherlock 3x02 - John asks Sherlock to be his best man Part 6
爆笑しつつ感動・・・あうう
Stag partyのシーンは、コメディ要素以外にもいろいろと考えさせるところがあります。次回以降で、もう一度くわしくとりあげることになると思いマス。
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よく見たら目玉親父じゃないかっ
このドラマの最大の魅力は、作り手の愛が溢れていることだと思います。元々、モファットとゲイティスのFan Fictionなので、既に愛はそこから発しているのですが、Cast & Crewも本当に楽しんで作っているというのが観ていてよくわかります。
本当に何かを楽しんでいると、それに注ぎ込む努力は惜しみませんから、結果として現れる効果は無限大です。結果的に世界中にファンを拡げたのも不思議ではありませんよね。愛は愛を呼び、ファンもこよなくこのシリーズを愛してしまったというわけです。
そうそう、シャーロックのMind Placeを分析した面白い記事をご紹介します。
http://www.salon.com/2014/02/09/its_not_so_elementary_the_secrets_of_sherlocks_mind_palace/
これからじっくり読ませていただきます。
愛は愛を呼ぶ、まさにそうですよね。
ファンの側としても、愛が盲目になるんじゃなく、
ほとんどアカデミックとさえ言える姿勢で、でもクレイジーに(笑)愛を注ぎ込んでるのが
すばらしいなあと思います。
ところで「フランケンシュタイン」観ましたよ~!!
圧倒されちゃって、帰りの電車を乗り間違えそうになりました(笑)