とんねるず主義+

クラシック喜劇研究家/バディ映画愛好家/ライターの いいをじゅんこのブログ 

木梨憲武をめぐる一省察:身体芸人

2012年03月06日 22時11分44秒 | とんねるずコント研究



5年ぶりとなるライブ「NORITAKE GUIDE 5.0 ザ・木梨憲武ショー」、初日がいよいよあさってにせまってまいりました。

いま、チケットを手にワクワクしている方が、全国に何人くらいいらっしゃるんでしょうか。どうぞ存分に楽しんできてください。諸事情あって、わたしは結局今回は参戦できませんが・・・(涙涙)

昨年のノリさん誕生会でのサプライズを思い起こすと、どうしても、今年も何かすんごいことが起きるのではと、ついつい期待してしまいますが、はてさてどうなるのでしょうか。残念ながら観に行けないファンは、後日発売されるであろうDVDを楽しみに待ちたいと思います。

ちょっと意外だったのは、あさって8日(木)の「みなさんのおかげでした」は、通常通りの放送なんですね。てっきりお休みかと思っていました。確か、先週は予告も流れなかったし。まさか、「ザ・ベストテン」のようにライブ会場から生中継が入るなんてことは・・・ないわなあ(笑)

と、ライブに行きもしないのに、あれこれ妄想をふくらませてしまうアフォなわたし。
ならばいっそのこと、ノリさんについてあれこれ語ってしまおう。


「コメ旬 Vol.1」のとんねるず特集では、タカさんとノリさんそれぞれの個人分析も書かせてもらいました。編集の方からは、内容はいいをさんの自由に、とまかせていただいたので、じゃあ、日頃世間であまり論じられないような面に光をあててやろうじゃないの、というのを目標にして書きました。やや肩に力がはいりすぎてたかなあと、ちょい後悔。

ところで、この時、奇妙なことがありました。タカさんの方の文章は、ほとんど悩むこともなくすらすらと書きあげたのですが、苦労したのはノリさんの方。ポイントがなかなか絞りきれず、なんだかボヤ~とした内容で書き直し、別のアプローチに変えてみるもうまくいかない。とっても苦しみました。

なぜだろう、と考えるに、どうやらわたしは、いままでノリさんという芸人について筋道立てて考えたことがほとんどなかったみたいなんです。

タカさんの芸風とか特徴とかは、結構しょっちゅう考えるんです。こんなことを言うのもおこがましくて憚られるけれども---自分自身の性格が、タカさんにちょっと近いところがあって、無条件に共鳴する部分がある。もちろん、そうやすやすと理解できるほど底の浅いタレントさんではないのですが、それでも、どこか「なじみやすさ」を感じてしまう。

いっぽう、ノリさんは・・・

わたしにとってノリさんは、永遠のあこがれ、であり、謎、です。つかみきれない。

それに、つかみきる必要を、あまり感じない。木梨憲武を理詰めで分析したりするのは、まったく不必要だし、野暮のきわみだという気がする。言葉で彼をつかまえようと必死にもがく手の先から、ノリさんはもうするするとすりぬけて消えてしまい、思いも寄らない場所からいきなりひょこっと顔を出す。

ネット上では、老舗のN'S SQUAREさんをはじめ、ノリさんファンの方のサイトやブログは多い。ずっと深くノリさんを見つめてきたワンフーのみなさんからすれば、的外れに思われることもあるかもしれませんが、あらためてご指摘およびご容赦をお願いするとしまして・・・

まさに雲をつかむような気分ながら、ふたたびわたしなりに、ノリさんの姿を言葉でつかまえられるかどうか、トライしてみたいと思います。


ノリさんが、日本ではめずらしい「身体の芸人」である、ということは、やはり抜きにして語ることはできないでしょう。

最近でも、モジモジくんなどでその片鱗を見せることはありますが、殊に印象深かったのは、昨年12月に“復活”した宜保タカ子心霊バスツアーでした。ゾンビの奇襲に驚いて椅子からころがりおちるみのりもんたのリアクションが、最高におもしろかった!

・・・書きながらまた思うんだけど、こういう時「動きの美しさに感動した」とかなんとか、冷静に書きたくないんだよね、ほんとは。そういう風に“分析”しちゃうと、せっかくの理屈ぬきの笑いを、台なしにしてしまう気がして。そして、まさにこれが、ノリさんを“分析”することの難しさにもつながっているわけで・・・

だけど、書かないとどうしようもないので書きますが、あの時のノリさんのリアクションというのは、ただ単にすってんころりするだけで笑わせるという、単純なスラップスティックではないんですよね。

手元に録画がないので記憶で書きますが、確かノリさんは、正面から飛び出してきたゾンビたちにびっくりして、あの大きい目をさらにひんむきながら、顔はまっすぐ正面を向いたまま、背中から落ちていったはず。手足を四方にまっすぐ伸ばして後ろに倒れていく姿が、目に焼きついています。

もちろんリハーサルなんかしてないので、それはとっさの動きだった。長年にわたってノリさんが(たぶん)追求してきたであろう「体技」への努力の成果が半分、ノリさんが天性として持っている「おもしろい動きができる才能」が半分。それがあのリアクションに秘められたものではなかったろうか。

「おもしろい動きができる才能」なんて簡単に言うけど、本当にそんなものがあるのか。
わたしは、確実にあると思う。

でもね、うまれつきの能力をただ何も考えずに出すだけでは、真に「おもしろい動き」は究められない、とも思うんです。それは、やはり、磨いてゆかなければならない。そしてそれは、おもしろいトークができるといったことと同じような、あるいはそれ以上に高度な「知性」を必要とする。

と、いうのも、瞬時に計算をしなくてはならないからです。たとえば、ポイントになるところで、ピシッとキメる。コンマ何秒の間合いの違いで、爆笑を生むかどうかの違いが出る。

心霊バスツアーの場合、もしノリさんが、床の方を気にしながら中途半端に転んでいたら、あれほどの笑いは生まなかったでしょう。放送後3ヶ月もたってもまだ目に焼きついてはなれないほどの強烈なイメージを、生みだすことはなかったはずです。

このブログでも、過去に何度となく、とんねるずの「体技」についてふれてきました。でも、白状すると、ほとんどは誰かの受け売りでした。「体技」とはなんぞや、ということについて、わたしがようやくすこし理解できるようになったのは、バスター・キートンと出会い、サイレント喜劇をたくさん観るようになってからです。

バスター・キートンのインタビューを読んでいて初めて知ったのですが、コメディアンが「転ぶ」(英語では業界用語でフォールとかプラットフォールとか言う)にも、いくつかの型があったらしい。それらはなぜか数字で「108」とか「52」とか「7」とか呼ばれていた。

映画監督が「ちょっとそこで転んでくれ」と言うと、コメディアンは「どれで転ぶ?108がいいかい、それとも・・・」といった会話になったんだそうです。おもしろいですよね!

それをうらづける映像もあります。
これは、以前も別の記事で紹介したドキュメンタリーシリーズ「ハリウッド:サイレント映画の歴史」の中の「コメディ」のエピソード。8分25秒~9分29秒のあたりで、転び方の型について説明されています(英語音声のみですが、映像を見ればわかっていただけるはず)。


Hollywood: A Celebration of the American Silent Film - 08 Comedy - A Serious Business



いずれの型も、背中をまっすぐのばした状態で、まっすぐ前を向いたまま後ろに倒れる、という点は共通している。

これと、心霊バスツアーでのノリさんのリアクションとを重ね合わせてみると、ノリさんの「フォール」がいかに “基本” に忠実であるかがわかって、驚かされるのです。

それは、ただ単に運動神経がいいとか、体格がいいからできることとはまったく違う。それに、アクションを得意とする芸人の間でも、レベルの差は出てきます。

上の映像でいえば、ただ普通に型通りに転ぶコメディアンと、バスター・キートンの転び方は、天と地ほどもレベルが違う。天性の能力と、計算する知性との、非常に微妙な差によって生まれてくる違いです。これをきちんと語るにはそれなりの字数を要するので、ここではこれ以上ふれません。

ただ、木梨憲武は、小林信彦がかつて評したように、おそらく日本ではエノケン以来の、世界の同時代のコメディアンにもひけをとらないほどハイレベルな身体芸人であることは、まぎれもない事実だ---ということだけを、強調しておきたい。

とんねるずの歴史の記事にコメントを寄せてくださった方から教えられて、マルセ太郎著『芸人魂』(講談社 1991)を読んでいます(超おもしろいです!)。「第二章 演芸場の人々」の「客を馬鹿にしてはいけない」の項には、こうあります。


体の動き
 若い人のお笑いを観ていると、どうも体の動きがきたない。普段着なのだ。「とんねるず」の木梨君は、無名のときから動きがきれいだった。




「普段着」という言葉に、ずっしりとした重みを感じます。わたしなどが小賢しく解釈するのもはばかられるけれど、おそらく、先述した「型」や「基本」ということと、関係があるのではないでしょうか(当時人気絶頂期にあったとんねるずに、ひかえめにふれるマルセ氏の奥ゆかしさが素敵だ)。

ノリさんは、「きれいな動き」を、いったいどうやって身につけたのだろう?「お笑いスター誕生!!」に出ていたころから、ノリさんの動きには人の目をひきつける力がありました。笑わせる力があった。若さにまかせて闇雲に暴れているというのではなくて、ピシッとキマるリズムというか、抑制があった。

なぜなんだろう?サッカーのせい?じゃあ、サッカー選手にはコメディアンのポテンシャルがあるってこと?いや、それはないよなあ。やっぱり、ノリさんだからこそ、なのだ。

ノリさんが誰に影響を受け、何を研究し、どんな研鑽を積んできたのか・・・いつの日か、ノリさんの口から話してもらえる日は来るのでしょうか。来ないのでしょうか。

まともに尋ねて、まともに答えてもらえるとは、とても思えませんが、でも、いつかは、ほんのちょびっと、イントロだけでいいから、聞いてみたい、そう思わずにいられないのです。


一本のみの記事にするつもりが、予想以上に長くなっちゃいました。
ので、急遽シリーズにします!







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3 コメント

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身体 (FUJIWARA)
2012-03-07 14:13:10
誕生日アナウンスが無いと知った瞬間、残念ながら「自粛」という言葉が頭に過ぎりました。
誕生日は行われるだろうけどカメラは入らないのかなと・・・
たけしさんの発表もありましたし・・・
残念、記念の歳だったのに。


確かにノリさんのファンサイトって昔から結構ありましたね。
昔は女子のタカさん派、ノリさん派みたいな話題もありましたが、最近は目っきり。
(日常ではとんねるずの話題すらでないですから 汗)

「身体の芸人」ですか~納得です!
ノリさん基本的にスポーツ全般得意ですよね?
タカさんの得意分野の野球だって負けずと上手かった。
若手の頃のジャニーズ顔負けのバク中、そして今でもたまに見せるドロップキック。
身体能力を50歳まで維持していることに唖然とします。

しかしファイアーさんの仰るとおり「スポーツ芸人」=「身体の芸人」ではないですよね。
99のお二人もサッカーをやっていましたが岡村さんのほうが「身体の芸人」です。

私はリズム感なども関係あるのかなと思います。
ピシッと決めるリズム感は故意的にやっているのではなく体で覚えているという感じ。

おもしろい動きも一種のダンスのような部類に入るのではと思います。
情熱大陸のパロディで食わず嫌いの際に、ふすまを開けてよろけるというのを何回も練習していましたが、
あれは一種の踊りのようにも感じるのです。
ダンスのキメポーズ=ズッコケの一番美味しいところという感じですかね。

志村師匠、岡村さんにも共通するかな。

あと普段から垣間見れるのはリアクションが大きい所ですかね。
笑った時でも比較的タカさんよりオーバーアクションで腕まで大きく振り上げて笑ったりしますよね。

あとはセンス、洞察力、判断力、器用さでしょうかね。
この動きが面白いというのを見極めることができる。

ちょっと話が外れてしまいますが、

○番組作り、とんねるずの方向性
タカさん:プロデューサー的な視点と時代を先取る目、長期にわたる計画や展望を考慮
ノリさん:あまり考えない、貴明がいいなら俺はそれでいいよ

○収録が始まると
タカさん:割とネタを真面目に進行、共演者の情報(CM、ドラマ)などを面白くアレンジしたりして計画的に進行
ノリさん:直感的なアドリブ、きっかけはタカさんだけどパスを貰ったら引っ掻き回す

という感じでですかね。

外見、ちょっとした言動、「テメー」などと口に出してしまうタカさんが「野生的」と思われがちですが、
本能的、直感的に行動しているのはノリさんなんですよね。
そしてそのノリさんの行動内容はとっさに出る言語的センス50%、身体的動き50%のような気がします。

やっぱり「センス」という言葉で片付いてしまいますかね?タカさんも認めている。

ただ動けばいいものでもなく、ただ喋ればいいものでもない。
そこにセンスが加わって面白くなる。
そのセンスはどうやって培われたかというと・・・・それは謎です。

長文失礼しました。
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FUJIWARAさん (ファイアー)
2012-03-08 13:03:56
>身体能力を50歳まで維持していることに唖然

もともと鍛えているから、なのでしょうけど、
見えない所では努力もしているんでしょうね。

リズム感ていうのは、わたしもすごく思います。
その意味ではダンスがうまい岡村さんもそうなんですけど、
でも微妙になにかがちがうんですよね。
ほんとは、岡村さんやウッチャンと比較してみるべきなのかもしれない。

番組においてのタカさんノリさんのありかた、仰る通りですね。
ノリさんが普段から「てきとーだ」と言われてるのも、
まあご本人の性格なんでしょうけど(笑)、
直感を研ぎすましておくためっていうのもあるのかな~と、
ついうがった見方をしてしまいます。
そこらへんに第二弾でふれるかもしれませんので、またよろしくです
返信する
追伸 (ファイアー)
2012-03-08 13:13:57
FUJIWARAさん、たけしさんの発表って、何かあったのでしょうか?
ニュース、ちゃんと見てなかった・・・
今夜の「した」のソフトクリームの予告、そういえば先週やってましたね。
番組ではノリさん誕生日にはふれない方針がもう決まってるのかな?
タイミング的には、そうする方がベターな判断なのかもしれませんね。
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