とんねるず主義+

クラシック喜劇研究家/バディ映画愛好家/ライターの いいをじゅんこのブログ 

S3E2"The Sign of Three"(三人の署名)レビュー1

2014年02月06日 20時06分26秒 | SHERLOCK/シャーロック



「シャーロック」第3シリーズ日本放映決定!!!

NHK BSプレミアムにて、5月放送。あわせて、4月には第1、2シリーズを一挙再放送するとのこと。放送日時は未定。


うれしいニュース!ひとまずはホッと胸をなでおろしました。


しかしファンというのは欲張りなもので、放送が決まったら決まったで、お願いしたいこともまた出てきてしまう。


できれば、吹替えと字幕版両方放送してほしい!
できれば、1、2シリーズを地上波でも放送してほしい!
できれば、第3シリーズの予告編はネタバレ回避で願いたい!


・・・最後のは「できれば」じゃないですね。絶対ネタバレ回避してもらわなきゃ困ります。第2シリーズの予告はネタバレ全開でびっくりしましたから・・・


放映日が決まって、レビューも書く甲斐が増したというもの。日本放送待機組のファンのみなさん、どうか放送後に読みに来て下さい。よろしくお願いします!




ベネディクト、ついに「セサミストリート」に出演!
何度見ても、ニヤケがとまらない・・・・・・

Benedict Cumberbatch and the Sign of Four (or is it Three?)




「シャーロック」パイロット版が撮影されたのは、かれこれ6年近く前。ベネディクト・シャーロックが将来「セサミストリート」に出て、カウント伯爵とリンゴの数をかぞえることになろうとは、いったい誰が予想できたでしょうか・・・・・しみじみ。


PBSのブログに舞台裏画像が♪(画像をクリックすると拡大します)
http://pbstv.tumblr.com/post/75723752115/sharing-some-behind-the-scenes-photos-from-our











***以下の内容はネタバレしています。「シャーロック」第3シリーズ未見の方は十分ご注意下さい***



過去2シリーズでは、第2話は「箸休め」的エピソードになる傾向がありました。「死を呼ぶ暗号(The Blind Banker)」しかり、「バスカヴィルの犬(The Hounds of Baskerville)」しかり。


「The Sign of Three」も、放送当初は、そのあまりのコメディ色の強さに戸惑う視聴者が多かったようです、わたしも含めて。何より、シャーロックがあまりにも“人間的”な行動をとるので、びっくりしてしまった。もっと言えば、“弱いシャーロック(・ホームズ)”を見ることに、戸惑った。


でも、前にもふれたように、第3シリーズのテーマを《シャーロックの感情教育》だと考えるなら、「三人の署名」こそ、じつはいちばん重要な意味をもつエピソードなのです。

結論を先走って言うなら、いちばん喜劇(ファルス)的につくられたこのエピソードこそ、じつはもっとも悲劇的な物語なのである・・・実際、いま世界のファンダムでもっともさかんに議論されているのは「三人の署名」だというのは、まちがいないと思う。


気になることは山ほどあって、どこからどう手をつけたらいいのか、困り果ててます。ざっくりレビューではとてもすべてカバーしきれない。大事だと思うことだけ、思いつくままあげてみましょうか。


とりあえずまず、シャーロックのモーニング姿が・・・ステキ♪もちろんジョンも♪


いつもピタピタシャツ+黒スーツ+ロングコート+マフラーのシャーロックが、今シリーズは違う衣裳を着ることが多いので、楽しいですね。


だけど、モーニングに着替えるときのシャーロックの神妙な表情が、グッと来ます。"Into a battle."という独り言にあらわれた、彼の決意。


マイクロフトが電話ごしに弟をからかって言う"mingling with the people"は、シャーロックにとってはとてもシンドイ「闘い」なんですね。内向型人間には、よくあること。ひとりで犯罪者に立ち向かっているほうが、彼にとっては居心地がいい・・・(=sociopath??)



こうして、シャーロックの闘いの一日がはじまる。ジョンとメアリーのためにがんばる一日が。

「結婚式に何の意味が?」とうそぶいていても、今日がジョンの人生にとって特別な一日であることは、シャーロックにはよくわかっているのですね。











それにしても、シャーロックとメアリーの打ち解けぶりが、とても可笑しい。結婚式のプランをふたりで立ててるシーンが大好きです。壁に予定表やら地図やら貼り出して、犯罪捜査とおんなじ姿勢で取り組むシャーロック(笑)たしかにその方が、うまくいくのかもねえ。対照的に、興味ゼロのジョン・・・


YouTubeを見ながら、真夜中にひとりで飾りナプキンをしこしこ作っているシャーロックを想像すると、ほほえましいというか、けなげというか・・・頭いいこいいこしてあげたくなっちゃいます(笑)ヘンなゾーンに入ってるシャーロックを心配して、捜査に連れ出せとジョンをけしかけるメアリー。


確か原作小説のメアリーは、元気のないワトソン博士を心配して「ホームズのところへでも行ってこい」と言うんでしたよね。読んだ時は、えらく話の分かる嫁だねえと、不審にさえ思ったものですが、ドラマのメアリーの行動はすっと理解できます。

すごいのは、第3話で彼女の正体が明かされた後にこの行動をふりかえると、さらにつじつまが合うこと。彼女もまたsociopathだからこそ、シャーロックへの尋常でない理解力や包容力があったのだと・・・



とはいうものの、3人の関係は、ハッピーそのものだというわけでもない。カギは、ショルト大佐。この人物の存在が、物語のさまざまなエレメントをつなぐ芯の役目を果していて、おもしろいです。


シャーロックはショルト大佐のことを知らなかった。でも、メアリーは知っていた。しかも大佐はジョンのかつての上官だという。ジョンにとってそんなに重要な人物のことを、シャーロックは知らず、メアリーは知っている。

プライドが傷つけられたような、複雑な表情を、シャーロックは一瞬見せる。「結婚は人を変えるのよ」というハドソン夫人の声が、この時シャーロックの脳裏をよぎったのかどうか・・・


視聴者が見逃しかねないほどの瞬間的なショットで、シャーロックの胸の内をそっと表現する演出が、すばらしいと思います。下手な演出家なら、シャーロックの表情をクロースアップでおさえるとか、そういうダサイことをついしてしまうでしょう。

あえてさりげなく見せるのは、演出家に勇気があるからだし、また、視聴者の読解能力を信頼しているからなんですね。「シャーロック」のファンなら、きっとわかってくれるはずだ、と。


作り手とファンの、このような信頼関係こそが、すぐれた作品を生むのです。


閑話休題。


シャーロックはこのあとも、なぜかショルト大佐に執拗にこだわる。捜査中に大佐をネットで調べたり(ジョンがやってくると隠す)、「雑談」にかこつけてジョンに大佐のことを聞いたりする。披露宴に大佐本人があらわれると、ついにジェラシーまるだし。


ここでも、メアリーはシャーロックの「感情」をじつによく理解しています。"Oh Sherlock! Neither of us was first, you know." なんて、核心をずばりと突けるほど、メアリーはシャーロックと親しくなっている。シャーロックもあえて言い返さず、否定もしない・・・


ふたりの間に特別な心のつながりができていることが、にじみでてますよね。誤解をおそれずいうと、まるで女子同士のような友情が・・・



レビュー2へつづきます!





a high functioning sociopath [Sherlock]





ファンの心の叫び (涙)












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4 コメント

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46ページの台詞 (kuwachann-2_0)
2014-02-06 21:42:47
>視聴者の読解能力を信頼

今回のシリーズ、全体的にジョンの表情のクローズアップが多くて最初はそちらに目が行き「フリーマン、凄い」と思うのですが、2、3回繰り返してみるとベネディクトの演技、表情の凄さにうなります。

そうなんですよね。視聴者を信頼しているのです。

さらに、シャーロックの台詞の多さ!46ページだったそうですが、見れば見るほどに「よくもこんなに覚えられたな」と思ってしまいます。
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Give this man the BAFTA! (まゆみ)
2014-02-07 00:41:04
このエピソード、大好きです。
最後の悲しい場面以外は、何度も観てしまいました。脚本が本当にうまくできているし、ベネディクトの演技は本当に凄いと思います。このエピソードのシャーロック七変化演技だけでもBAFTAが取れると思うくらいです。
『シャーロック』では、マーティンもアンドリューもBAFTAの助演男優賞を取っているのに、ベネディクトだけが『シャーロック』では無冠なのですよね。今度こそ(2015年度になるのでしょうが)、彼に取ってほしいです。
このエピソードの彼の演技は、アメリカのサイトでも評価されていました。
http://tvline.com/2014/02/01/benedict-cumberbatch-sherlock-performance-season-3-sign-of-three/

スピーチの内容の可笑しさと巧みさ、スタッグ・ナイトは言うもがな、私は映像も好きでした。教会の外での連続ストップ・モーションは、50台の写真用カメラで撮影した画像だそうです。また、スタッグ・ナイトの映像は、二人の酔いが回るにつれ、徐々にピンぼけの部分が増えていきますよね。上手いと思いました。

美術担当のArwel Wyn Jonesのコメントによると、ウェディング・プラニングの場面は、シャーロックの緻密なコントロール・フリークの性格が出るように、式場の3Dモデルを作ったりしたそうです。こういう、クローズアップにならない部分でのオタク的なこだわりが、私はたまらなく好きです。

マーティンが火曜日のロンドンApple Storeでのイベントで述べていましたが、脚本を読んだ時点で、このエピソードのコミカルな部分を、行き過ぎではないかと心配していたそうです。それに対してモファットから、これは目的があってのことなんだ、信頼してくれ、と言われたそうです。つまり、E3とのコントラストがあってのことだったのですが。いやあ、脱帽です。
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kuwachann-2_0さん (ファイアー)
2014-02-07 18:16:19
46ページですか!すごい・・・
それだけの重労働を完璧にこなしてるからこその、ブレイクなんでしょうねえ・・・
他のキャストはハタでゲームに興じてたなんて話もしてましたが(笑)
それも仲良しだからこそのジョークで、皆がベネディクトに敬意をはらってるんでしょうね。
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まゆみさん (ファイアー)
2014-02-07 18:29:45
いつも興味深いリンクと情報を、ありがとうございます!
リンクいただいた記事、いいレビューですね。
今度こそBAFTAをとらなきゃ嘘だという感じ。
ベネディクトだけ無冠なのは、英国らしいあまのじゃくぶりなんでしょうか・・・

>教会の外での連続ストップ・モーション

50台ですか!いいショットですよね。
ジャニーンと並んでるシャーロックを、すごい顔で見てるモリーが一瞬うつるのも笑えます。
技術系スタッフのレベルの高さもすごいですよね。

E3放映前、E2のあまりのfluffyさがどうもアヤシいと思い、記事にも書きましたが、
やっぱりモファットのgeniusのなせるわざだったのですね。
kuwachannさんも前に書かれてたように、小憎らしいけど脱帽!
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