仏名の朝に、導師の帰るついでに、法師、男ども庭におりて、梅を見て遊ぶあひだに、雪の降りかかれる梅折れる
むめのはな をりしまがへば あしひきの やまぢのゆきの おもほゆるかな
梅の花 折りしまがへば あしひきの 山路の雪の 思ほゆるかな
仏名会が終わった最後の朝、導師が帰って行く折に、僧や男たちが庭に降りて梅を見て遊ぶ間に、雪が降りかかった梅の枝を折った。
梅の花かと見間違って枝を折ってみると、花ではなく雪であった。それにつけても、深く積もった山路の雪が思い起されることよ。
022 にもありましたが、「仏名」とは十二月に宮中や寺院で行われ、一年間の罪障消滅を祈る法会のこと。枝に降り積もった雪を梅の花と見紛うというのも、よくある題材ですね。このあとも幾度か登場します。