漢検一級 かけだしリピーターの四方山話

漢検のリピート受検はお休みしていますが、日本語を愛し、奥深い言葉の世界をさまよっています。

貫之集 123

2023-08-17 05:37:11 | 貫之集

九月のつごもりに、女車紅葉の散るなかをすぎたり

もみぢばの ぬさともちるか あきはつる たつたひめこそ かへるべらなれ

もみぢ葉の 幣とも散るか 秋はつる 龍田姫こそ 帰るべらなれ

 

九月の末日に、女の乗る車が紅葉が散るなかを走って去って行く。

紅葉がまるで幣となって散って行くように見える。秋が終わって、龍田姫ももう山奥へ帰って行ってしまうのであろうか。

 

 「龍田姫」は、紅葉の名所である龍田山を神格化した秋の女神で、龍田姫が染めたとされる紅葉を、神に手向ける幣と見立てる発想。同じモチーフの兼覧王(かねみのおほきみ)の歌が、古今集0298 (巻第五「秋歌下」)にも採録されています。

 

たつたひめ たむくるかみの あればこそ あきのこのはの ぬさとちるらめ

竜田姫 たむくる神の あればこそ 秋の木の葉の ぬさと散るらめ