あはぬよの ふるしらゆきと つもりなば われさへともに けぬべきものを
あはぬ夜の 降る白雪と つもりなば われさへともに 消ぬべきものを
よみ人知らず
ある人のいはく、柿本人麿が歌なり
逢えない夜が降る白雪となって降り積もったならば、その白雪とともに私までもが消えてしまうに違いないのですよ。
柿本人麿作との説があるというこの歌ですが、同じ左注のある歌が古今集には五首(0334、0409、0621、0671、0907)掲載されている一方、確定的に人麿作とされている歌は一首もありません。古今集の撰者たちとしてみれば、人麿歌については万葉集で十分語り尽くされている、というところでしょうか。