こひこひて まれにこよひぞ あふさかの ゆふつけどりは なかずもあらなむ
恋ひ恋ひて まれに今宵ぞ あふ坂の ゆふつけ鳥は 鳴かずもあらなむ
よみ人知らず
愛しい人を恋慕い続けてようやく今夜逢うことができた。逢坂のゆふつけ鳥よ、お前が鳴くと帰らなければならないから、朝になってもどうか鳴かないでおくれ。
「ゆふつけ鳥」は鶏の別名で、0536 に続いての登場。このあと、0740、0995 でも出てきます。これまでは叶わぬ恋や、愛しい人に逢いたいのに逢えない歌が続いていましたが、ここで初めて、逢瀬が叶っている状況を詠んだ歌が出てきました。季節を詠んだ歌が時のうつろいにそって配列されていたのと同じく、恋歌も恋の始まりから終わりへと順を追った配列になっていますね。