ありあけの つれなくみえし わかれより あかつきばかり うきものはなし
有明の つれなく見えし 別れより あかつきばかり 憂きものはなし
壬生忠岑
有明の月が薄情に見えた別れのときから、夜明け前ほどつらいときはないのであるよ。
冒頭の「有明」は「有明の月」。朝になっても空に残っている月のことですね。有明の月の元での別れがあって以来、明け方になるとそのときのことが思い出されて辛い、という歌。百人一首(第30番)にも採られた名歌で、撰者の藤原定家も激賞したということです。
この歌、作者の壬生忠岑が最初に古今集に登場した 0011 でもご紹介していますが、今読み返すとその記事には、
古今集にあるということは、このシリーズを続けていければいつかメインに取り上げることになるということですが、このまま一日一首続けていけたとして 0625 にたどり着くのは2年近くも先のこと。我ながら気の長い話です。 笑
と記しています。自分でそう書いていたのはすっかり忘れていました(笑)が、毎日続ける中で「2年近くも先」の日に辿り着いたのかと思うと、ちょっとした感慨がありますね。