エコポイント&スマートグリッド

省エネ家電買い替え促進で有名となったエコポイントとスマートグリッドの動向を追跡し、低炭素社会の将来を展望します。

「スマートグリッド革命」(シリーズ;スマートグリッドの国際標準と「システム・アシュアランス」)

2011-02-13 06:54:32 | Weblog
エネルギー、交通、住宅等、社会システムを提供する技術は、多様かつ多数の技術と人で構成される巨大システムです。
 日本の製造業の品質管理は規格品の大量生産型消費財では有効な手法ですが、大規模な社会システムでは、個別の品質管理の積み上げでは不十分です。システム全体の安全性、信頼性、利用可能性、保守性を評価し、最適設計に結び付ける「システム・アシュアランス」という概念と手法が必要です。
 「システム・アシュアランス」は、大規模システムの品質向上とコスト削減に有効であるだけでなく、社会システム産業を国際競争力のある産業としていくためにも重要です。例えば、鉄道分野ではRAMSとして国際規格化されていますが、こうした規格を持たない日本の鉄道産業は輸出のハンデとなっています。
 スマートグリッドの世界でも、同様です。すでに定置用の蓄電池システムでは、「システム・アシュアランス」の手法を適用する試みが進められていますが、自動車用蓄電池の安全基準に関しても、セルレベルの標準化を主張する日本とシステムレベルの標準化を主張するドイツが対立しているものの、「システム・アシュアランス」の手法が適用される方向です。
 システムレベルの標準化が実現した場合、セルが詰まったパックの検査が行われ、日本企業が優位性を有する核心的な情報まで開示しなければならない可能性があります。自動車用蓄電池をはじめ各種のスマートグリッド分野の国際標準化に当たっては、日本として「システム・アシュアランス」への対応を早急に行う必要があります。

「スマートグリッド革命」(シリーズ;欧州の電力需要の15%をまかなうデザーテック計画)

2011-02-12 07:34:07 | Weblog
欧州の12の大企業が協力して、ヨーロッパの電力需要の15%を太陽光等再生可能エネルギーでまかなう計画である「デザーテック計画 ( Desertec ) 」がスタートしています。太陽光発電700ギガワット、風力発電300ギガワット、水力発電200ギガワットという内訳です。
 デザーテック計画の構想は、03年に地中海周辺52カ国の科学者、政治関係者、産業界のメンバーからなる民間のシンクタンク「ローマクラブ」 ( Club of Rome ) で始まり、特に同クラブのドイツ支部が計画をまとめました。目的は、50年にヨーロッパ電力需要の15%を太陽光発電基本とする再生可能エネルギーでまかない、また発電所周辺諸国に需要電力の大半を供給するというものです。総事業費は4000億ユーロ ( 約50兆円) 。送電開始は10年後に見込まれています。
 具体的計画の第一歩は、ドイツ企業を多く含む12の欧州大手企業が計画実行のための研究機関創設に同意する議定書に調印したことです。その後、シーメンス、ABB、エーオン(ドイツ)、RWE(同)など欧州企業連合がアルジェリアの地場財閥セビタルと提携してデザーテック・インダストリアル・イニシアチブ(DII)を設立しました。09年7月に合意文書の調印が行われましたが、設立メンバー12社にはドイツ銀行、ミュンヘン再保険、HSHノルドバンクといった金融機関が含まれています。
デザーテック計画は、太陽光発電では世界最大規模です。この計画の課題の一つは、いかに電力を安全にヨーロッパまで送電するかということですが、ABBは2000キロメートルの送電をわずか10%の損失だけで行えるとしています。

「スマートグリッド革命」(ビジネスモデル; ”破壊的イノベーション”の取込みが必要)

2011-02-11 07:31:38 | Weblog
スマイルカーブへの取り組みのほかに、 もう一つ既存の優良企業が”破壊的イノベーション”にうまく対応するの解決策があります。それは、ベンチャー企業と提携して”破壊的イノベーション”を自社に取り込むことです。大企業の苦手なベンチャー企業は、ある程度まで成長すると、大企業と提携を行うことが合理的になります。大企業による”破壊的イノベーション”の取り込みが数多くみされたケースに、2000年代以降の製薬企業とバイオベンチャーとの提携関係があります。アムジェン、バイオジェンIDECのような少数の例外を除けば、優れたバイオベンチャーはほとんどが大企業に吸収されました。バイオ大手のジェネンテックでさえ、スイスの製薬会社であるロッシュの子会社となりました。A・Gラフリー&ラム・チャランによる『ゲームの変革者』はPG&Eを取り上げ、変化の激しい世界で勝利する最上の方法は、イノベーションを推進しビジネスのゲームのルールを書き換えることだと主張しています。

「スマートグリッド革命」(ビジネスモデル;求められる「スマイルカーブ」への取組み)

2011-02-10 07:02:05 | Weblog
既存の優良企業が”破壊的イノベーション”にうまく対応する解決策の一つが「スマイルカーブ」への取組みです。「スマイルカーブ」現象とは、企業間の取引がクローズな関係からオープンな関係へと変化すると、利益率は最終組立業者から川上の研究開発・部品メーカーや川下のサービス・ソリューション提供へと移っていくという経験則です。部品メーカーの成功例としては真っ先にインテルがあげられるでしょう。また最終組立業者からソリューション・コンサルティング業界へと転身し高い付加価値を提供している企業としてはIBMが好例です。
例えば太陽光パネルメーカーにおいては、単なる製品売りではなく、川下のシステム(太陽光発電システムの設計、販売、施工まで行うシステム・インテグレーターを目指す動きで、カドミウムテルル製の薄膜太陽電池を生産しているアメリカのファーストソーラーが指向しているモデル)や川上の材料分野との連携が勝敗を決める上で重要になってきています。「スマイルカーブ」の考え方が教えるように、製品の製造は価格競争に巻き込まれ利幅が薄くなりますが、川上や川下の工程は高い利益率を上げられるのです。15年の世界の太陽光発電産業は8兆円になるとも予想されています。この巨大な市場の獲得を巡ってドイツ、中国、アメリカ、そして日本などのメーカーが世界的な“大競争”を繰り広げていくことになります。

「スマートグリッド革命」(ビジネスモデル;“抵抗勢力”戦略は成功しない)

2011-02-09 06:59:13 | Weblog
 「スマートグリッド革命」により市場で活躍するプレイヤーの顔ぶれも変わります。例えばインターネットの登場によって,コンピュータの世界のプレイヤーはずいぶん変わりました。私がシリコンバレーにいた1993年当時,IBM社は倒産するのではないか,と言われていました。メインフレームから始まったコンピュータの流れからいえば,インターネットはそれを駆逐するほどのものでした。
しかし,IBMは倒産するどころか,さらに大きく飛躍を遂げました。それは、95年にソフトウェア会社のロータス・ディベロップメントを買収したことが象徴するように、毎年のようにソフトウェア会社を買収し、ビジネスモデルをソリューション提供企業としてのものへと大きく転換してきたからです。そのIBMが今,スマートグリッドに並々ならぬ力を注いでいるというのは、大きな意味を感じさせることです。今のIBMはかつてのIBMではありません。今後の「スマートグリッド革命」でさらに変革を遂げることでしょう。
アメリカの電力会社の顔ぶれも変わるでしょう。発電事業、送電事業、配電事業にもっと多様なプレイヤーが参入するという時代に入ってくるのは間違いありません。そこには通信事業者のようなところもあるでしょうし,分散型電源に取り組んでいる企業などもあるでしょう。情報通信企業も参入するでしょう。象徴的な例は、Google社やGE社の地熱発電への参入です。アメリカには世界で最大の地熱資源があります。Google社やGE社はここに着目し、ビジネスモデルを構築できると踏んでいます。
ここで注意を要するのは、クリステンセンの分析において、既存の企業はヴァリューチェーンに組み込まれているがゆえに、過去の技術の延長線上にある“持続的イノベーション”の担い手ではあっても、”破壊的イノベーション”の担い手となりえず、むしろそれに対する“抵抗勢力”として描かれている点を誇張しすぎてはいけないということです。『イノベーションのジレンマ』では、”破壊的イノベーション”によって。既存の優良企業がうまくビジネスを遂行できなくなる例が紹介されています。
 しかし、現実の世界では、”破壊的イノベーション”の登場によりはじめは苦境に陥ることの多い伝統的産業の主体が、やかては立ち直り、大きく拡大した市場へのビジネス戦略の転換により、結果としてはより優良な企業として存続を続けるケースが多くみられます。トランジスタのケースでは、ソニーがパイオニアでしたが、松下、日立、東芝、NECなどの電気メーカーは健在です。デジタルカメラのケースでは、ソニー、カシオが新規参入者で、それにより既存のカメラメーカーは一時的に停滞しましたが、やがては立ち直り、順調に売り上げを伸ばしています。
 スマートグリッドの世界でこれに相当するのは、既存の電力会社や自動車会社などでしょうが、これらの会社が“抵抗勢力”として機能することは、むしろ自ら市場からの退出を選択するようなものです。私が見るところ、日本の電力会社でいえば東京電力、自動車会社でいえば日産、トヨタなどは、悩みを抱えつつも、”抵抗勢力”戦略を脱しつつあるように見えます。

「スマートグリッド革命」(動向;HEMS・BEMS革命を進展させるスマートメーター)

2011-02-08 07:01:40 | Weblog
HEMSやBEMSの中で重要な役割を担うものとして注目されているのが、スマートメーターです。スマートメーターを介した双方向通信により、需要応答や負荷制御が可能になります。アメリカには、、電力ネットワークや家庭消費エネルギーのモニタリングによるエネルギーの効率化を推進する団体であるDemand Response and Smart Grid Coalition(DRSG)が活動しています。この団体には、ネットワーク化された電気メーターや、消費者と公益サービス企業との間で情報を共有するソフトウェアを作る会社などが加入しています
 米調査会社ABIリサーチは、世界のスマートメーター設置台数は、14年には08年の3倍を上回る1億8000万台に達すると予測しています。地域別内訳は、EUが1億1500万台で1位、次いで、北米が4500万台で2位、アジア太平洋地域が3位、中南米が4位となると見込んでいます。主なスマートメーターの製造企業は、ITron、Landis+Gyr、Emeter、 Elster、 Sensus、GE(GE Energy)のスマートメーター大手6社れに加えて、スマートメーター・ネットワークを得意とするSilver Spring Networks、Trilliantなどです。

「スマートグリッド革命」(動向;HEMS・BEMSとV2Gが結合して革命が加速化する)

2011-02-06 00:11:45 | Weblog
スマートグリッドについて、さらに期待されている市場としては,プラグインハイブリッド車や電気自動車と家庭を接続する「Vehicle-To-Grid 」(V2G)があります。V2Gとは、電気自動車やプラグインハイブリッド車などの二次電池を積んだ次世代自動車をスマートグリッドに接続し、自動車で発電した電気の余剰分を配電網に送り家庭用電気として有効活用したり、売電をするというものです。
V2Gが「スマートグリッド革命」の第二幕で、今はHEMS・BEMSという第一幕に引き続いて、それらと結合したV2Gという第二幕があいたところです。普通、電気は電力供給網から電気自動車に流れますが、電気自動車は電池のかたまりなので、そこで貯めた電気を逆にも流し、双方向の電気の流れを実現するというものです。電力会社からすれば、太陽光など再生可能エネルギーが大量に導入されると、そうした不安定電源に対する周波数調整などの点でメリットがあります。また、家庭にとっては、夜間のように電力料金が安いときに電気を買って、高いときに売れば差額で儲けることができます。
米のオバマ大統領は,15年までにアメリカ製のプラグインハイブリッド車を100万台走らせると言っています。そうすると,V2Gの市場規模もかなりのものになります。たとえばフォードは、13年~15年までにプラグインハイブリッド車と家庭に設置するスマートメーターを接続する計画を進めています。
日本でも、11年までにプラグインハイブリッド車が一般に販売されるほか、電気自動車についても自治体などの官公需だけではなく、民間にも導入されるようになってきました。例えば、日本郵政グループの郵便事業会社の年間のガソリン代は100億円に上っていますが、同社は集配に使っている軽貨物自動車約2万3千台を電気自動車に切り替える計画です。08年度から順次電気自動車の導入を開始しており、8年後をめどに全ての車両を電気自動車にする方針です。
経済産業省は、20年における年間販売数をプラグインハイブリッド車120万台、電気自動車80万台とし、ガソリンスタンドなどの急速充電器を5000台、家庭用充電器を200万台設置することを目標としようとしていますが、環境省はもっと高い目標値の設定を求めています。このような動きを見越して、日本の自動車メーカーもV2Gに対して積極的に取り組むようになっています。日産自動車は、急速充電器をV2Gへの布石と位置づけており、昭和シェル石油と共同開発しています。急速充電器に自動車向けリチウムイオン電池と太陽電池を組合せ、V2Gにより送配電網への負荷を減らそうという構想です。

「スマートグリッド革命」(動向;アメリカのHEMSは「アーリーアダプター」(13.5%)段階)

2011-02-05 07:04:54 | Weblog
HEMSの分野で先行しているのはアメリカで、様々な企業がHEMS市場に参入しています。従来のホームオートメーションというのは,高所得者層に対するサービス提供が中心でした。それがHEMSというキラー・アプリケーションの登場によって、一気にローエンドに降りてきています。このときに宅内で必要になるのが、HANを安価に実現するための低消費電力の通信方式です。今アメリカでは,無線ではZigBeeやZ-Waveそして電力線通信ではHomePlugなどに大きな関心が集まっており,関連するベンチャー企業の取組みも活発です。
さらに期待が高まっている企業としては、HEMSのサービス事業を請け負う「サービスプロバイダー」という形態があります。サービスプロバイダー事業とは,家庭へのシステムの導入から始まり,課金処理,マネージメント,そしてHEMSシステムといったもので,これらを一貫して提供する企業も出てきています。グーグルとマイクロソフトがHEMSの世界に参入し、グーグルのGoogle Power MeterとマイクロソフトのMicrosoft Hohmが覇権を競い合っていますが、それは、両社ともこのようなHEMS市場の発展可能性に着目しているからです。
さらに、ホームコミュニケーション(Home Communication)、ホームケア(Home Care)とHEMSの統合へと展開しているのが、今のアメリカの状況です。HEMSがキラー・アプリケーションとなつており、「イノベーター」出現の段階(全体の市場の2.5%)から「アーリーアダプター」出現の段階(全体の市場の13.5%)に入っています。その後は、「アーリーマジョリティ」の段階(全体の市場の34%)へと発展していくでしょう。コミュニティをターゲットにしたマーケティング戦略が展開されたり、新しいネットワーク型省エネ家電が市場に投入されています。
ここでは、テレビに代わってコミュニケーション端末となりつつあるスマートフォンがHEMSの端末として使われるという構図も見えてきています。Andoroidを搭載したスマートフォンを端末にしたサービスプロバイダーのビジネスモデルの構築も進んでおり、Andoroidは家電、車載などさまざまな形態の端末に利用可能となっています。

「スマートグリッド革命」(シリーズ;米ベタープレイスはGE「ワットステーション」と提携)

2011-02-04 06:55:25 | Weblog
EVサービスプロバイダーのベタープレイスは、GEと提携しました。両社はこの提携を通じて、GEの「ワットステーション」と呼ばれるEV用の充電ステーションを、ベタープレイスのEVサービスやインフラソリューションと組み合わせて、EVインフラの整備を加速する計画です。
具体的には両社は、a.GEのワットステーションとベタープレイスのネットワーク間の相互運用性を確保する標準ベース技術の開発、b.イスラエルとデンマークで1万台のバッテリーを調達するためのファイナンスプログラムを立ち上げて1万台のEVの導入を進める、c.社用車のEV化を図るため、実証プロジェクトへの参加を企業に働き掛ける、d.EVとEVインフラの経済的・環境的価値に関する消費者の認知度の向上、の4つのテーマについて協力して、EVの普及と充電ステーションなどインフラ整備の促進を図ることとしています。

「スマートグリッド革命」(シリーズ;米国カリフォルニア州におけるEV普及のためのインフラ整備)

2011-02-03 06:59:07 | Weblog
シリコンバレーでは、プラグインハイブリッド車や電気自動車の普及のためのインフラ整備も進んでいます。例えば、07年にシリコンバレーで創立されたクーロン・テクノロジーは、09年の1月にはドイツのベンチャー・キャピタル会社エスタッグ・キャピタル(Estag Capital AG)などから350万ドルの資金調達を受け、チャージポイント・ネットワーク(ChargePoint Nework)というプラグイン車のためのチャージステーションのインフラの提供を開始しています。
すでにサンフランシスコ市は、一部でこのインフラを採用し始めています。このインフラはプラグイン車のユーザに対して、空いているチャージステーションへのナビゲーションなどの利便性を提供し、今後のEVの購入者の増加に寄与すると期待されています。

クーロン・テクノロジー社に対して、全く別考え方で電気自動車のインフラを提供しようとしているベンチャー企業がベタープレイスです。ベンチャー企業といっても、この会社はイスラエルのベンチャー・キャピタル、イスラエル・グリーンテック・ベンチャーズ(Israel Cleantech Ventures)、イスラエル・コープ(Israel Corp)、モーガンスタンレー(Morgan Stanley)などから2億ドルもの資金を得て07年に創業しました。

創業者はSAPの次期CEOと目されていたシャイ・アガシです。アガシの構想は、電気自動車のバッテリをリースで扱い、全自動で交換できるステーションを開発するというものです。開発競争が激しく最もコスト高のバッテリをリースにすることで電気自動車価格を下げ、ガソリンを買う代わりに充電されたバッテリを交換ステーションで入れ替えます。旧式となったバッテリは家庭用の電力貯蔵装置に使うという想定です。アガシの電気自動車に関する基本的な考え方は、100マイル未満の走行に対してはチャージステーション、100マイル以上に対してはバッテリの交換ステーションを設置しようというものです。