エコポイント&スマートグリッド

省エネ家電買い替え促進で有名となったエコポイントとスマートグリッドの動向を追跡し、低炭素社会の将来を展望します。

「スマートグリッド革命」(シリーズ;スマートグリッドビジネス総合戦略を展開する米GE)

2011-02-18 00:11:17 | Weblog
GEは、スマートグリッドに積極的なアメリカにおいても、もっとも早くからこのテーマに取り組んだ事業者の一つです。発電・送変電設備からエンドユーザ向け製品に至るまで、電力に関わるすべての領域においてフロントランナーである強みを生かした包括的なサービスの提供を推進しています。
 GEのスマートグリッド・サービスは、スマートメーター、制御・管理用ソフトウェア/ソリューション、モニタリング/センシング・システムの3つで構成されています。その中核であるスマートメーターは、様々な通信方式に対応したAMIソリューションとして、電力利用量、利用時間、電力消費サイクル・パターンなど、電力の利用状況をユーザが客観的に把握する数々のデータを提供するだけでなく、電力品質を監視するデータも取得することが出来ます。アメリカをはじめ、カナダ、中南米、オーストラリア、メキシコ、スウェーデン、イギリスなど、世界各国ですでに販売されており、着実に実績を上げています。
 09年7月GEは、10年に発売を予定しているスマートメーターと通信して電気をより安い料金で活用できる家電製品を発表しました。GEはまた「Home Energy Manager」も発表しました。このデバイスによって、消費者は電力消費量をより詳細に把握し、家電製品の設定をプログラムすることができます。例えば、電力会社がスマートメーターを介してピーク時価格適用中の信号を送ると、衣類乾燥機が「節約」モードに切り替わるといった設定が可能となります。GEは、こうした同社の需要応答家電製品のコストは10ドル程度高くなると予想していますが、市場性は十分あると見ています。
 09年8月GEは、「Net Zero Home Project」としてスマートグリッド対応製品を発表しました。これまでも展示会などでネットワークに接続されたアプライアンスが出展される例は日本を含め多々ありましたが、実際にスマートグリッドのサービスの提供が開始されただけに現実感があります。今後11年頃まで、少数の牽引者となるメーカーから少数機種のスマートグリッド対応製品が発表され、試行錯誤を経ながら機能が進化していくものと思われます。
 GEのスタートアップ企業に対する投資・提携戦略としては、GEは09年10月に、GEEnergy Servicesを通してGridnet に追加投資しました。Gridnetは、Wimax4Gを活用する次世代スマートメーターGE Wimax Smart Meter(IntelのWimax半導体チップセットを使用)に対してネットワークマネージメントのためのソフトウェアなどを提供している企業です。GE Energy Financial Servicesのほか、Intel Capital も出資しています。
08年以降Gridnetは、その技術をGE Energyにライセンスしています。Gridnetの活動はステルスモードですが、4つの電力会社との間でWimax4Gを活用するAMIの構築について協議を進めています。AMIのリード企業であるSilver SpringやTrilliantが使用している免許の必要のない900MHz帯の無線「メッシュ・ネットワーク」とは異なり、Wimaxは免許を取得した帯域で使用されるため、セキュリティ、信頼性に優れていると主張されています。また、他の無線方式に比して、消費電力が低いところが特徴です。
 GEは、この分野のスタートアップ企業であり、TREE(Tendrill Residential Energy Ecosystem;Zigbeeを活用したエネルギーマネージメントソフトを電力会社と消費者に提供するもの)で急速に市場に浸透しているTendrill Networksが行うエネルギー負荷制御やエネルギーマネージメントのアルゴリズム開発に関しても戦略提携を行っています。Tendril Networksは、スマートサーモスタット、スマートプラグなどのスマート機器を販売し、ウェブベースでiPhoneでも利用可能なHEMS表示サービスなどをも提供している会社です。GEのGridnetやTendrill Networksに対する投資・提携戦略は、多様なAMI通信方式が登場し、標準化、インターオペラビリティの確保が難しくなっている状況の下で、選択肢の多様化を図るものです。
GEは、クリーンエネルギー政策のロビー活動とスマートグリッド向けソフトウェアの開発でグーグルと協力関係にあります。GEとグーグルの技術連携のテーマのひとつは、地熱発電の中でも先端技術として注目されるEGS(Enhanced Geothermal Systems)関連技術の開発です。EGSは、地下にある高温の岩体を水圧で粉砕し、そこに水を送り込んで蒸気を得るというもので、熱水が乏しい場所でも発電が可能となるため、地熱発電の場所的制約を取り除く技術として期待されています。
技術面における連携の2つ目は、家庭のコンセントで充電可能なプラグイン電気自動車の実用化を促進することです。プラグイン自動車を電力ネットワークに統合する制御機器やソフトウェア、サービスの開発を目指しています。プラグイン自動車をソフトウェアによって管理し、オフピーク時を選んで充電するような賢い仕組みを作れば、電力供給の安定を保ったまま利用を拡大することができます。
発電・送変電の分野では、GEは,Hawaiian Electric Company(HECO)、Maui Electric Company(MECO)、Hawaii Natural Energy Institute(HNEI)、アメリカエネルギー省(DOE)と協力し,ハワイのマウイ島におけるスマートグリッドプロジェクトを手掛けています。現在、マウイ島のピーク電力需要は約200メガワット(MW)ですが、その内30メガワット(MW)をすでに風力発電で補うことに成功しています。同社は、このプロジェクトをさらに推し進め、再生可能エネルギーの効率的な活用技術の確立を目指していく予定です。
GEは海外でもスマートグリッド構築を推進しています。対象地域はインド、ノルウェー、アラブ首長国連邦と韓国などですが、このうちインドに関しては、GEはインドの電力会社North Delhi Power Limited(NDPL) に協力して、スマートグリッド構築に乗り出しています。またノルウェーでは、風力発電会社を買収し、洋上発電を戦力的に展開しようとしています。韓国では、大手通信事業者のNURitelecom Corp.と共同開発を行っています。

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