エコポイント&スマートグリッド

省エネ家電買い替え促進で有名となったエコポイントとスマートグリッドの動向を追跡し、低炭素社会の将来を展望します。

「スマートグリッド革命」(政策;ICTと環境の両立)

2011-02-15 07:01:47 | Weblog
ICTと環境の両立に関する包括的な政策パッケージを立案する上で参考になるものとしては、まず、08年8月に「The Climate Group(気候グループ)」(政府と産業界の連携により地球温暖化問題の改善を推進する国際NGOで04年に設立)と「GeSI:Global e-Sustainability Initiative (e-持続可能性・国際イニシアティブ)」(欧州のICT・テレコム企業が中心となって設立された国際NGO)が公表した報告書「SMART2020」があります。この報告書は、情報通信技術が地球温暖化防止に果たす役割を示す世界最初の包括的な研究報告書です。
「SMART2020」は、20年までに世界のCO2を15%削減することができ、エネルギー効率の改善により5000億ユーロを節約できると指摘しています。「SMART2020」で示されたマッキンゼー社の分析によると、世界全体のCO2排出量は、02年の40Gtに比して、20年には51.9Gtに増加します(放置ケース)。しかし、SMART構想を実現することにより30.0Gtにまで抑えることができるとしています(対応ケース)。  
放置ケースと対応ケースの差21・9Gtの内訳は、ICTによる直接削減分が7.8Gt(これだけでも、アメリカもしくは中国の年間排出量に相当)、新エネ、植林等分が14.1Gtです。「SMART2020」は、情報通信技術によるCO2排出削減分を前者に限定していますが(前記の15%や5000億ユーロもこれに対応しています)、後者のうち新エネに関しては、ICTの活用によるスマートグリッド等の進展により実現するものがかなりあります。また、ICTによる直接削減分が7.8Gtの内訳としては、①スマートモータシステム(2020年世界全体で9億7000万トン、680億ユーロの削減)、②スマート物流(2020年世界全体で15億2000万トン、2800億ユーロの削減)、③スマート建物(2020年世界全体で16億6000万トン、2160億ユーロの削減)、④スマートグリッド(2020年世界全体で20億3000万トン、790億ユーロの削減)となっています。
「SMART2020」が単なる分析ペーパーと異なるのは、低炭素経済社会への移行は、ICTパワーにより市民や企業が技術の利用方法を変えることが、根本的な解決策だと指摘していることです。ICTによるエネルギー消費に関する標準化(S:standerdization)、監視(M:monntoring)、会計・収支計算(A:accounting)を通じて、われわれがエネルギー効率の最適化の方法や低炭素経済社会における生活様式について再考・再検討(R:rethik)を行うことで、多分野において低炭素経済社会に向けたビジネスモデルの開発が進み、低炭素経済社会への転換・変革(T:transformation)が実現されると、「SMART2020」は主張しています。
また、10年3月にアメリカ情報労連を含む4団体が公表したスマートグリッドに関する報告書「Networking the Green Economy How Broadband and Related Technologies Can Build a Green Economic Future 」は、狭義のスマートグリッドだけではなく、スマートテクノロジーによる家庭・オフィスのエネルギーマネージメント、さらにブロードバンドを活用した遠隔医療、遠隔教育などにより、エネルギーやCO2を削減するという視点が重要なことを強調しています。原口ビジョンの「25%減のうち10%以上をICTで実現する」ためには、ICTと環境の両立という視点が必要でしょう。

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