デューク・アドリブ帖

超絶変態ジャズマニア『デューク・M』の独断と偏見と毒舌のアドリブ帖です。縦横無尽、天衣無縫、支離滅裂な展開です。

洒落たアズナブールの「JAZZNAVOUR」

2018-10-07 09:11:38 | Weblog
 先週2日の北海道新聞に札幌の「ニトリ文化ホール」が老朽化のため9月末で閉館した記事が載っていた。最後に行ったのは昨年のベンチャーズのジャパンツアーだったろうか。1971年に「北海道厚生年金会館」としてオープンした施設である。半世紀に亘ってコンサートやミュージカル、イベントが開かれていたので、北海道にお住まいの方なら何度か足を運んだことだろう。

 同日の新聞にシャルル・アズナブールの訃報記事があった。1975年に、このホールでコンサートを開いたフランスを代表するシャンソン歌手だ。当時は道東に住んでいて、札幌の知人にチケットを手配してもらったものの、猛吹雪で断念した苦い思い出がある。今年の9月に「生誕94周年特別記念来日コンサート」と題された公演を終えたばかりだ。アズナブールは例えば1ヵ月間通しの公演だと、全く同じステージ衣装を30着用意するという。聴衆の目には同じにしか見えないが、毎日違うタキシードというわけだ。最高のエンターテーナーが観客を迎える最大の礼儀である。

 数あるアズナブールのアルバムから1998年にリリースされた「JAZZNAVOUR」を取り出した。2009年にクレイトン・ハミルトン・ジャズ・オーケストラをバックにしたアルバムを作っているが、こちらの方が洒落たタイトルといい、ミシェル・ペトルチアーニにリシャール・ガリアーノ、エディ・ルイスらの参加ミュージシャンといい、アズナブール自身が作曲した「She」をはじめ往年のヒット曲という選曲といい、親しみやすい作品になっている。ダイアン・リーヴスとのデュオはジャッキー・テラソンも参加した豪華版だ。ジャズファンをも唸らせたシンガーに感謝したい。

 2010年に「ニトリ文化ホール」と名称が変わったのは施設命名権によるものだ。命名権といえば、今年8月に札幌ドームの命名権を売却することが発表された。2023年に北海道日本ハムファイターズが北広島市に本拠地を移したあとはメディア露出が激減する施設に誰が命名するというのだろう。札幌市とドーム関係者の発想力の貧困さと浅知恵に開いた口が塞がらない。
コメント (3)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 秋吉敏子、88歳、88鍵を語る | トップ | 前田憲男さんがウエスト・ラ... »
最新の画像もっと見る

3 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
2箇月ぶりのアップです (duke)
2018-10-07 09:16:11
月に一度はと思っていたのですが、先月は地震で見送りました。
シャルル・アズナブールのステージをご覧になった方は是非ご感想をお聞かせください。
特にテーマはありませんので、自由にコメントをお寄せください。
返信する
シャルル・アズナブール (内間天馬)
2018-11-11 02:48:15
1968年か1969年だったか記憶が定かではありませんが、大阪のフェスティバルホールの一番前の真ん中、つまり、シャルル・アズナブールが唄う、まさにその目の前で彼を聴きました。
彼のことはまったく知らなかったんですが、たまたま友人に誘われてのコンサートでした。
最後のほうだったかなあ、<イザベル>という歌を唄い始めたら、何人もの女性が、彼が唄うすぐ前、つまり僕の前に立ち始めたんで、こりゃ何ごとや?と思ったんです。
ハンカチを握りしめながら<イザベル>を唄った彼ですが、唄い終わった瞬間、そのハンカチを投げ捨てたんです。僕の前に陣取っていた女性たちがそのハンカチを取ろうと、ちょっとした争いになったんですが、なんと、そのハンカチが宙を舞い、僕の手元に飛び込んで来たんです。
咄嗟の判断で、これは貴重なハンカチやと判断した僕は、お姉さん方の懇願にも拘わらず、そのハンカチを自分のものにしちゃったんです。今でもそのハンカチ、持ってますよ。
彼のジャズアルバム、素晴らしい!
返信する
お宝 (duke)
2018-11-12 14:39:48
内間天馬さん、コメントありがとうございます。

アズナブールを目の前でお聴きになったとは凄いですね。しかもファン垂涎のハンカチをキャッチしたとは大変幸運なことです。貴重なものですので、お姉さんたちに譲らずなくて正解です。私も札幌ドームでファウルボールの取り合いになることがよくありますが、譲るのは子どもと綺麗なお姉さんと決まっております(笑)
北海道厚生年金会館でアート・ブレイキーが投げたスティックを1本だけお持ちの方を知っていますが、周りがどよめいて何事かわからないうちにキャッチしたそうです。お宝は欲のない人に転がるのかもしれませんね。
話題にしたアルバムは素晴らしい内容です。これを聴くとジャズとかシャンソンとかポピュラーとか、そんなことはどうでもよくなってきます。
返信する

コメントを投稿

Weblog」カテゴリの最新記事