デューク・アドリブ帖

超絶変態ジャズマニア『デューク・M』の独断と偏見と毒舌のアドリブ帖です。縦横無尽、天衣無縫、支離滅裂な展開です。

ユニクロのTシャツ「Somethin' Else」がかぶる確率

2024-08-04 08:29:09 | Weblog


 先週28日に「DAY BY DAY」のジャズ仲間と野球観戦に行ってきた。北広島エスコンフィールド行きのシャトルバスが出る新さっぽろ駅で待ち合わせたものの、先着で来場者プレゼントがあるらしく早い時間から長蛇の列だ。いつもは球場に着いてから青空の下で宴会をするのだが、ラインは更に伸び、雨も降っていたので、コンコースのベンチに陣取り早速缶ビールで乾杯だ。

 1時間ほど経って波が途切れたのでバスに乗り込む。満席になろうかという時、小生と同じTシャツを着た人が乗ってきた。3年前の夏にユニクロから発売されたブルーノート・シリーズで一番売れた「Somethin' Else」だ。「新宿ピット・イン」のTシャツが似合うベーシスト鈴木由一さんが、「ここでかぶる確率は一万分の一、もっとでしょうか?」と。ジャズ・フェスに向かう電車ならたまにあるケースだが、野球場に行く定員50人のバスとなれば一生に一度あるかないかの出会いだ。小生は応援グッズで膨らんだリュックを前に抱えていたのでその方は気付いていない。

 今更説明の要らない大名盤である。何百回聴いただろう。「枯葉」は千回を超えている。56年前に初めて聴いたときの感動と興奮は今も変わらない。これから何が始まるのかとドキドキする荘厳なイントロからマイルスのミュートが出てくる瞬間の美しいこと。聞き覚えのあるメロディを「♪C’est une chanson qui nous ressemble.」に沿って丁寧に紡いでいく。最近若手のミュージシャンがテーマを大きく崩したり、いきなりアドリブに入るのを聴いたが、面白くも楽しくもない。美しい曲はより美しくである。この「枯葉」がジャズ演奏の標準であり名演と呼ばれるのはそこにあるのだ。

 バスを降りその人を待つ。同じTシャツに驚いたようだが、ご家族の方共々笑顔で快く写真撮影に応じてくれた。小生と同じ世代なので、ジャズ喫茶の大音量でマイルスの洗礼を受けたに違いない。同じ服だと普通気まずいものだが、ジャズという連帯感が居心地を良くするのだろう。試合は9対0で贔屓のチームが勝った。「Somethin' Else」はスラングで、「今回は最高」である。
コメント (7)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 白石かずこ「聖なる淫者の季... | トップ | ジョージ・ウォーリントン・... »
最新の画像もっと見る

7 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
管理人敬白 (duke)
2024-08-04 08:36:58
いつもご覧いただきありがとうございます。

ジャズのTシャツがかぶった経験のある方はその時のことをお知らせください。

札幌円山のジャズ喫茶「GROOVY」のマスターはこの時期Tシャツでカウンターに立っています。マスターと同じTシャツを着てきた方はコーヒー2杯目無料です。
私のTシャツとかぶった人はコーヒー2杯目、私がご馳走します。私は毎週火曜日の午前中にいます。
「デューク・アドリブ帖を見た」と伝えてください。北海道の短い夏限定の企画です。
返信する
Unknown (azumino)
2024-08-04 22:34:31
dukeさん こんばんは

残念ながらTシャツが被ったことはないです。もっとも、最近まで、あまりTシャツは着なかったので、そのせいもあります。実は、この頃は、Tシャツが重宝で、よく着ています。

しかも、dukeさんからいただいた、ソニー・クラーク・トリオの図柄のものを愛用しています。その節は、ありがとうございました。デザインも着心地もよくて、これ着て札幌へ行きたいくらいです。

次回の札幌は、10月4日(金)~6日(日)の予定です。秋なので、Tシャツ姿は無理かと思いますが、dukeさんにお目にかかり、Groovyに寄りたいと、考えています。近くになったら、連絡いたします。

今年は、徹底的に長野も暑いです。先々週、先週と、標高2500~2600m級の山に行っていましたが、さすがにそこは過ごしやすかったです。しかし、標高1500mの上高地は人が多くて、いやになりました。涼しげで、しかも、賑やかな札幌へ移住したい人は多くいそうです。僕もそうですが、実現は無理かも(笑)。
返信する
ブルーノートTシャツ (duke)
2024-08-05 11:35:05
azumino さん、コメントありがとうございます。

かなり出回っているユニクロのブルーノートTシャツですが、ジャズの店でもかぶったことはないですね。街中で見かけたことはありますが、私がリー・モーガンで、すれ違った人はズート・シムズだったりします。

ソニー・クラークのTシャツを愛用されているようで何よりです。秀逸なジャケットデザインですので、Tシャツでも一段と映えますね。私はよくビールをこぼしますので滅多に白地は着ません。

札幌も暑いですが、長野ほどではないですよ。大通りビアガーデンでジョーキーがすすむ丁度いい気温です。札幌は住みたい街ランキングでいつも上位ですので移住される方は多いようです。大雪にうんざりすることもありますが、これに慣れれば一年中快適に過ごせます。

10月にお会いするのを楽しみにしております。話題にしたTシャツの写真はその時にご覧ください。「Somethin' Else」を着たオヤジのツーショットは見るたびにほっこりします。
返信する
Unknown (boohoowoo)
2024-08-06 03:36:40
duke様
以前からずっと過去ログを遡りながら気に入ったアルバムをCDやダウンロードメインで購入させてもらっています。
現在、2012年を読んでおります。
dukeさんのおすすめの名盤も良いですがコメント欄のゲストの皆さんのおすすめがまた楽しいです。
vito priceのswingin' the loopの明るい華麗なサックスに感動しました。
山中千尋のアフターアワーズ、武田和命など日本のJAZZにも興味を持つことができました。
これからの更新を楽しみにしております。
返信する
ジャズの羅針盤 (duke)
2024-08-06 06:33:28
boohoowoo さん、コメントありがとうございます。

拙稿を参考に購入されているとは嬉しいですね。ブログ冥利に尽きます。

今はアップ数も減り、コメント数も多くはありませんが、以前はプレイヤーのアルバム・ベストと曲のベストを募っていました。全国のジャズに一家言ある方にコメントをいただきましたので、多くの聴くべきアルバムが寄せられました。それぞれ好みはありますが、広く聴くことも大事です。知らないレコードや初めて聴く演奏は今でもドキドキワクワクします。

「swingin' the loop」はジャケットも素敵ですので、もしレコードで見つけたら購入することをお勧めします。壁にジャケットを1枚飾るだけで部屋は豪華なリスニングルームに変わります。

不定期ですが更新しますので、時折ご覧いただければ幸いです。
返信する
枯葉 (内間天馬)
2024-08-11 05:44:01
多くのジャズメンが「枯葉」をレコーディングしてるけど「SOMETHIN' ELSE」の「枯葉」が白眉ですね。1958年3月の録音だけど、マイルズが「死刑台のエレベーター」の音楽を担当する為にパリに赴いたのはそれ以前。つまり、ジュリエット・グレコと仲良く(ねんごろ?に)なったパリの想い出が「枯葉」のあのミュートに込められていたのでは?
あと、ビル・エヴァンス「PORTRAIT IN JAZZ」の「枯葉」…冒頭のインター・プレイのあとの三者一丸となって突き進む迫力はもう…
1967年、麻薬禍の療養を終え、夫婦で世界旅行に出たハンプトン・ホーズが、ドイツのMPSに残した「HAMP'S PIANO」の9分を超える「枯葉」は壮絶です。以上、ぼくの「枯葉」ベストスリーでした。ああ札幌に行きたいなあ!
返信する
もうすぐ枯葉の季節 (duke)
2024-08-11 07:13:18
内間天馬さん、コメントありがとうございます。

ジュリエット・グレコにマイルスとツーショットのジャンヌ・モロー、パリには色々と想いもあるのでしょう。ヌーヴェルヴァーグの作品にもはまるミュートは絶品です。55年に録音したアーマッド・ジャマルのイントロをパクったという声もありますが、その出だしを膨らませるアイデアはマイルスにしかできません。「ディア・オールド・ストックホルム」にしてもゲッツが持ち込んだ曲をジャズに仕上げたのもマイルス。エディ・ハリスの「フリーダム・ジャズ・ダンス」を面白くしたのもマイルスです。楽曲に対する嗅覚は凄いですね。

ビル・エヴァンスにハンプトン・ホーズ、ともに名演です。一度は演奏し、録音する曲ですので聴き比べは楽しいですね。そろそろ札幌も枯葉が似合う季節を迎えます。是非札幌にどうぞ。
返信する

コメントを投稿

Weblog」カテゴリの最新記事