ある記憶

遥か遠くにいってしまった記憶たち

あらたなつながりをもとめて

2010-01-24 18:20:31 | 
本当に珍しい事なのだが、昼に実家に電話をした。
「なんか食いたいものでもないか」
それだけ聞きたかった。
なにか田舎に住む老夫婦が無性に可哀相に思えてきた。
申し訳ない。
潜在意識にずっとあった。
故意に打ち消し続けてきた感情。


電話に出た母は、「本家」の親父がまた入院したことや、
少し離れたとこに住む母の妹の近所で今年に亡くなった人がいつもより多いとか、
正月以来雪が降らずに助かっているとか、
そんな話をここぞとばかりに聞かされた。

次に親父が出て温泉に行きたいという話をされた。
お金出すから生きてるうちに夫婦でいい温泉にいってきたらい。
1泊7千円なんてみみっちい事いわないでいっそ2万円くらいのとこ行ってきなよ。
そう言った。



里心では決してないと思う。
「後ろめたさ」かも知れない。ずっと隠してきた。

いずれどうしようもない現実がやってくる。
順番は決まっていて、順番どおりに人は現世から消えていく。

ずっと曖昧にしてきたこと。
家族に限らずなるべく心の奥底で断ち切っていた繋がりの糸達を、
もう一度、浮かび上がらせようとしているよう。

逃れ様のない人と人との「絆」を今僕は再び可視化しようとしている。
家族、父母、兄妹、親類そのまわりの人々。
特にルーツに関わる紐を。


そうして僕は目黒どおり沿いにある、老舗の揚げ饅頭屋に足を運び、
いちばん高価な揚げ饅頭の詰め合せを送った。
実家には明日の夕方に着く。
そうでもしないと気が済まなかった。

わかっている。
こんな饅頭を食べたいわけでないことぐらい。
でも今日、今の今、僕にできる事はこれくらいしかない。

免罪符ではない。
長らく閉ざしてきたこころを真剣に開きつつある。
今度ばかりは本気だろう。
多分。