ある記憶

遥か遠くにいってしまった記憶たち

僕の周りで起きていること

2011-05-21 21:07:48 | 
この半年足らずのあいだ僕の周りで起きていること。

僕の3年間通っていた高校のある町が震災の津波により壊滅的打撃を受けたこと。
その惨状をこの目で見て茫然自失したこと。
同級生の何人かが犠牲になったこと。
子供の頃から目に馴染んだ風景のすべてがひとたまりもなく瓦礫と化していたこと。
ずっと昔に捨てたと思っていた“ふるさと”がとても愛おしく思えたこと。
十数年ぶりに実家の畑を耕運機で耕したこと。
両親がうんと年老いて見えたこと。
これからあの一帯がどのような復興の道をたどるのか心配になったこと。

いまここにいる自分はいつもの東京のしきたりや営みに戻っていること。
何事もなかったかのように仕事に従事し業績向上のため力を注いでいること。

人間としてのさまざまな欲望がどんどん薄れ僕は透明にさえなりつつあること。
今年に入り徐々に顕著になっていたその傾向が3・11を機に加速しているようであること。

週末はかかさずマラソンをしていること。
これだけは自分に課す唯一の制約、それを守り続けていること。

まだ多くの人が目覚める前の朝の早い時間に小高い丘の住宅の密集するあたりを疾走しながら、
昨夜もこの東京の何十万戸の住居のなかで愛の営みが行われ、ことによると生命の約束が成立し、
未来への弛みのない類の伝承がなされたのだろうなどと、やや勾配のきつい坂道にさしかかり
苦しい呼吸と酸欠に襲われぼんやりする頭の中で、特に羨望するわけでもないのに、
そんなことを考えていたこと。

進むべき道がわからないのだと思っていること。
半ばわかろうとすることを放棄しつつあること。
それは希望さえも捨ててしまうかもしれないと思っていること。

しかし未練がいっぱいあること。
だから走り続けることだけは止めてはいけないのだと、
僕の命の最後の部分が警鐘を鳴らし続けていること。