どっと屋Mの續・鼓腹撃壌

引き続き⋯フリーCG屋のショーモナイ日常(笑)

ロング・ウェイ・ノース、鑑賞

2019年09月15日 23時39分00秒 | 映画
日本語吹き替え版にて。

字幕版にしようか迷ったのですが、アニメですし、ここはまず映像に集中したかったので。

海外のアニメーション作品って、いわゆるディズニー的なものか、前衛的で芸術くさいものって印象が強く、苦手意識もあって映画館まで観に行くってことはほとんどないんですが、本作はどこか引っかかりがあって一度はちゃんと鑑賞したいと思っていました。

3年かかってようやく一館...それも美術館ホールというかなり特殊な公開...現状多くが観たくても難しい状態ですが、かなり話題になってきているのもあって今後上映館が増えていくみたいです。

13時半の回を鑑賞しました。こちらのホールは指定席制ではありますが、ネットで事前予約はできず、当日受付で選ぶ独特の方法なので、30〜40分前に到着するようにし、割合と好きな席を選べました(Dー17、前から4列目の通路側。もう2〜3列後ろでも良かったかなという感じ)。

「ホール」の名のとおり、映画上映専用ではなく多目的施設で、舞台もあり、スクリーンはちょっと奥まっている構造。場内の雰囲気は落ち着いていて、公民館とか図書館みたいな公共施設の匂いがしました(^_^;

上映開始時の客入りも6割ほど、老若男女まんべんなくという感じで、アニメ好きというより色んな映画を観ているシブイ目線を持つ鑑賞者という感じ。

美術館の紹介映像や、当ホールでの上映予定作品数本の予告編のあと、本編上映開始...。

ネットでの冒頭18分を観た上でしたが、やはり吹き替えだと若干テイストが違いましたね。良いとか悪いとかではなく、親しみやすいけど、原語の異国感が薄れるみたいな?(^_^;

多目的ホールのため、ちょっと心配だった画質や音質も思った以上に鮮明で、音響なんか中音域が豊かで時に生々しい効果音にハッとさせられたり...。

本編ストーリーですが、19世紀の帝政ロシアの時代にいきる少女・サーシャのお話し。1年前に北極航路探検におもむき消息不明となった祖父...捜索されるも結果に納得がいかず、新任の科学大臣に直談判するも拒絶され、周囲の理解も協力も得られない彼女は家出同然に飛び出し、祖父の後を追う...。

これ以上はネタバレになるので控えますが、ストーリー性よりも映像や音効が素晴らしかった...アウトラインなし、単色塗りという大胆な描画は完全に背景との境をなくし、どのカット・コマを切り取っても美しい一枚のイラストレーションになるという...。

その中でいくつか印象に残ったのは...。

船着場での犇めく木造船がギイギイギシギシを唸り声のような軋み音...サラウンド効果もあって異様で不安も感じるけど、木造船の時代の雰囲気がよく出ていて、タイムスリップしたような気持ちに浸れました(*^o^*)

あとね...とにかく全編通じて、説明セリフが少なく、キャラクターの動作や表情で伝えようとする演出意図が素晴らしくて、なにか日本のアニメがどこかの時点で忘れてしまったものを見せつけられた気持ちになりましたね。

サーシャが航路の秘密を知る運命の階段を上るシーン、波止場の町で一ヶ月を過ごし世間知らずのお嬢様が地に足を付けていく成長ぶり、乗り込んだ船内での日常やうねる海との戦い、北極の氷山崩壊の恐ろしさ...などなど、揚げていったら切りがないほど演出と映像の作り込みを見せつけられました。

船長とその弟の諍いも重要なファクターになっていますが、崩壊する氷壁に船が押しつぶされ海中に没するシーンで通わせる兄弟の気持ちを描くシーンが凄かったです。印象としてですが、まったくセリフなしで心の動きと触れあいが微妙な表情変化だけで見せている。バカみたいに泣き叫ぶ方向に逃げず、冷静な演技を構築している監督の手腕に、思わず唸ってしまいました。

いろんな意味で高畑勲さんも感心しただろうなと思わせる作品でしたね...。

パンフレットには3年ほど前、同作を紹介する高畑さんの言葉が掲載されていました。

ウソがうまい作品...たしかにそう感じました。

どこか高畑さんが「良いよコレ、楽しんでみてよ」という気持ちも染みついた置き土産みたいな作品だなと思った次第です(^_^)

鑑賞後感としては...人によって色んな感想が出てきそう。個人的には物凄く感動して涙が...という感じではありません。テンポの良いストーリー展開と美しい映像が次から次へと繰り出し、巧みな演出に溜め息とか、溜飲下がりっぱなし...といったところでしょうか。本当に言葉が通じなくても映像だけで判るようにしようとする姿勢...映像表現の根本さえ問うような凄味が漂ってます。

テンションの波とか、感動曲線の持っていき方がやはり日本のそれとは違うなとも感じ、ヨーロッパ人の思想や考え方にちょっと触れたような気にもさせられたという感覚かな。

機会があれば、一人でも多くの肩に是非見て欲しいし、様々な感想を聞きたい...そんな作品です(^_^)




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