スパニッシュ・オデッセイ

スペイン語のトリビア
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パプア・ニューギニア、シンガポールのエピソード等

東北楽天イーグルスのペゲーロ選手(3)母の父姓 D'Oleo

2018-02-11 15:42:52 | 名前

  東北楽天イーグルスのペゲーロ選手(Carlos Angel Peguero D'Oleo)の母の父姓は D'Oleo であるが、全然スペイン語らしくない。一応、例の“Historia Apellidos”に当たってみたが、ヒットしない。そこで、Oleo で調べてみると、これはあった。スペインでは44274位。かなり珍しい。世界的な分布でみると、絶対数でも人口比でもドミニカ共和国が多い。ペゲーロ選手もドミニカ共和国出身である。
 De Oleo という姓もある。こちらも珍しいことは珍しいが、スペインでのランキングは21531位。世界的な分布でも Oleo 同様、絶対数でも人口比でもドミニカ共和国に多い。
 “genoom”という別のサイトがあったので、調べてみたが、D'Oleo はスペインには6、ドミニカ共和国には24とあった。説明には nacidos (出生)と viviendo (在住)とあるので、単位は「人」であろう。
 Oleo も De Oleo も D'Oleo のいずれも珍しいことには変わりはない。de がつく姓には貴族の出をあらわす場合もあるが、この場合はどうであろうか。
 D'Oleo は De Oleo の短縮形のようであるが、スペイン語ではこのような短縮形はない。フランス語なら、D'Espaigne や D'estrade などのような短縮形はある。そうすると、D'Oleo はフランス起源の性ではないかと思われる。
 ところで、スペイン語には óleo という普通名詞はある。「オリーブ油」が原義のようであるが、小学館『西和中辞典』から引用する。

 1.オリーブ油、油
 2.油絵(の具)
 3.《カト》聖油、聖香油:洗礼、秘跡の際に用いる
  los Santos Óleos / el Santo Óleo 聖油
 4.《ラ米》(コロンビア)洗礼
  同源同形のポルトガル語から3の意のキリシタン用語「オーレヨ」となる。

 どうやら、D'Oleo の Oleo は3の意味「聖油」ではなかろうか。いかにもカトリックらしい、ありがたい姓のようである。

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東北楽天イーグルスのペゲーロ選手(2)かっ飛ばせ、ペゲーロ

2018-02-10 15:37:08 | 名前
 東北楽天イーグルスのペゲーロ選手。フルネームは「カルロス・アンヘル・ペゲーロ・ドレオ」(Carlos Angel Peguero D'Oleo)。ドミニカ共和国の出身である。
 
 今回は父の父姓である Peguero について述べる。
 Peguero は普通名詞 peguero(松やに採集[加工・販売]業者)をそのまま姓にしたもので、ご先祖様の職業がしのばれる。いつもの“Historia Apellidos”によると、スペインでのランキングは2905位。あまり多くはない。世界的な分布では絶対数、人口比ともにドミニカ共和国に多い。
 Peguero はすでに取り上げた Guerrero、Caminero と同じく、-ero で終わる。pega という語に -ero がついた形である。
 pega とは何かというと、「接着、殴打、上塗り、悪ふざけ、障害」等の意味があるが、ここでは「接着」の意味である。peguero とは「接着する人、もの、ところ」という意味になる。松やには接着剤として利用されるので、peguero は「松やに採集[加工・販売]業者」を表すようになったのだろう。
 pega の動詞形は pegar で、「くっつける、点火する、殴る」等の意味のほかに「ボールを打つ」という意味もある。Peguero は「松やに取り扱い業者」ではなく、「ボールをひっぱたく」ホームランバッターにふさわしい名前といえるだろう。“Hit it”をスペイン語訳すると、“Péguelo”となるので、ペゲーロ選手が打席に立ったら、“Péguelo, Peguero”といって応援したら喜ばれることだろう。ただし、r と l の発音を正確に。

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東北楽天イーグルスのペゲーロ選手

2018-02-09 15:44:07 | 名前
  東北楽天イーグルスにはクルーズ選手とアマダー選手の他にもう一人、ラテンアメリカ出身のペゲーロ選手がいた。
 
 フルネームはウィキペディア「カルロス・ペゲーロ」によると、「カルロス・アンヘル・ペゲーロ・ドレオ」(Carlos Angel Peguero D'Oleo)である。出身はドミニカ共和国。
  個人名は Carlos と Angel の2つで、Carlos は典型的なスペイン男子名である。英語の Charles に相当する。Angel は見てのとおり、「天使」の意味の普通名詞 ángel を男子名としたものであるが、ペゲーロ選手の内面はいざ知らず、容貌は「天使」とは程遠い。Angel の女性形は Angela (アンヘラ)だが、イタリア語読み(英語読みも)すると「アンジェラ」である。日本にもこんな名前の歌手や芸能人がいたようである。
 さて、天使は何人もいる。ウィキペディア「天使の一覧」にはずらっと天使が並んでいる。有名な天使は「ミカエル」(西 Miguel)、「ラファエル」(西 Rafael)、「ガブリエル」(西 Gabriel)などだが、Carlos に相当する名前の天使は見当たらない。天使の中でも「ミカエル」が最強らしいので、ペゲーロ選手の個人名は Carlos Angel ではなく、Miguel Angel の方がよかったかと思う。Miguel Angel を縮めてイタリア語形にすると、Michelangelo(ミケランジェロ)になる。
 ところで、絵に描かれた天使はみんな標準体型である。人間と違うので、肥満ややせすぎということはないのだろう。
 スペイン語には増大辞というものがあるが、「大きいことはいいこと」ではなく、逆に「うどの大木」的な意味になることがある。ángel に増大辞をつけると angelón (アンヘロン)となるが、これを単独で使うことはないようで、angelón de retablo という熟語として使う。字義どおりには「(聖史などを題材にした)絵巻、彫刻の大きな天使」ということだが、「肥満した人」という意味で使われているようである。
 増大辞には -ón だけではなく、-ote という形のものもある。ángel に -ote をつけて、angelote という形にすると、「丸々太ったかわいい子供、純朴な人」という意味の言葉になる。angelón よりはずっとましである。
 ペゲーロ選手自信は肥満体形ではないので、angelón と呼ばれることはなさそうであるが、子供のころは angelote と呼ばれていたのだろうか。
 angelón (de retablo) の名前にふさわしいのはペゲーロ選手ではなく、同僚のアマダー選手ではないだろうか。

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東北楽天イーグルスのアマダー選手(3) Amador

2018-02-08 16:47:04 | 名前

【愛を与える人、Amador】
 東北楽天イーグルスのアマダー選手。「アマダー」のつづりは Amador である。「アマダー」は英語読みである。スペイン語では「アマドール」でなければならない。アマダー選手はメジャーリーグにも在籍していたので、Amador が英語読みされていたのだろう。その後、楽天イーグルスに入団してきたので、メジャーでの呼び方がそのまま引き継がれてきたということだろう。
Amador 姓のスペインでのランキングは、“Historia Apellidos”によると264位で、珍しい姓ではない。世界的な分布を見ると、絶対数でメキシコ、人口比ではニカラグアに多い。
 さて、Amador だが、これは普通名詞 amador が姓に使われている例である。語尾の -dor は接尾辞で、動詞(時には名詞)から形容詞及び「行為者、道具、場所」を表す名詞を作る。
 アマダー選手の個人名の1つ、Isidro は San Isidro Labrador に由来するようだが、Labrador も 動詞 labrar に接尾辞の -dor (この場合は、行為者を表す)がついたものである。
 動詞 labrar の意味は次のとおり。
 1.(木材・石・金属などに)彫る、彫り込む、加工する、細工する
 2.耕す、耕作する、鋤き起こす 
 3.刺繍する
 (4以下省略)
 比較的、日本人にもなじみのある -dor つきの言葉は matador(闘牛士)であろう。これは字義どおりには「matar (殺す)+人」であるが、殺し屋(killer)ではない。matador は最後の見せ場に登場する花形で、その前に牛の肩を槍で突き刺し、興奮させる役の picador(← picar「つつく」、英 pick の関連語)が登場する。
 本題の amador に戻る。小学館『西和中辞典』には次のようにある。

 形容詞「愛する、恋する」、名詞「愛する人、恋をする人」

 「愛する人」という訳語は誤解を招く。愛を「与える」側であって、愛を「受ける」側ではない。amador は amar (愛する、愛を与える。名詞形は amor)+ -dor (人)の意味であるが、愛を受ける側、つまり愛される側は amar の過去分詞形の amado (女性なら amada)である。amado は名詞にもなる。小学館『西和中辞典』には訳語として「愛する人、恋人」と書かれているが、日本語で「愛する人」というと、一般的には愛を「与える」側ではなく、「受ける」側であろう。
 amado は個人名としても使われる。男子なら Amado、女子なら Amada である。アヌーク・エーメ (Anouk Aimée )というフランスの女優がいたが、Aimée は Amada のフランス語形である。
 「愛される」とはいい名前だが、特に神様に愛されるというのがもともとの意味らしい。モーツァルトのミドルネームの「アマデウス」(Amadeus)は「ama(愛する)+ Deus(神)」に分解できるが、「神が愛する」のであって、「神を愛する」のではない。Amadeus のスペイン語形は Amadeo となる。
 そういうわけで、Amador は「愛を与える」人であって、「愛される」人ではない。愛されたければ、Amado Amador と改名してはどうだろうか。
 それにしても、ソフトバンク戦で乱闘騒ぎを起こした張本人なので、Amador という姓は似つかわしくない。
 Japhet という名とあわせて、全然名は体を表していないというほかない。 

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東北楽天イーグルスのアマダー選手(2)個人名 Japhet

2018-02-07 15:05:19 | 名前
  アマダー選手の個人名は2つあって、1つは Isidro で、前回紹介済みである。もう一つの個人名は Japhet であるが、こんな名前は初めてである。全然スペイン語らしくない。
 調べてみると、これは「ノアの箱舟」のノアの3人の息子の一人の名前だそうである。聖書には「ヤペテ」の名で登場する。ウィキペディア「ヤペテ」は簡単な記述で済ませている。全文引用する。

 ヤペテは、旧約聖書創世記に出てくる物語ノアの方舟のノアの3人の息子の一人であり、他の兄弟とともに人類の祖先の一人とされた。中世から近代までのヨーロッパやイスラム圏ではヤペテの子孫が今の白人であるとする説が広く信じられた。キリスト教原理主義では創造論とともに現在もこの説を踏襲する。
 創世記では父ノアからセムとともに祝福されている。

 ウィキペディア英語版にも当たってみたが、つづりは“Japhet”ではなく、“Japheth” である。こちらには画像も紹介されている。
 
 【16世紀。想像図だと思う。】
 アマダー選手のファーストネームはウィキペディア「ジャフェット・アマダー」によると、「ジャフェット」となっているが、「日本の一部メディアではヤペテ・アマドールとも表記される場合がある」とある。
 ところで、Japhet または Japheth はスペイン語でどう読むのだろうか。どちらも小学館『西和中辞典』には載っていない。いろいろ調べてみた結果、jafético (ハフェティコ)という語が見つかった。『西和中辞典』には次のように記されている。

 《形容詞》(1)【聖書】(ノア Noé の第3子)Jafet の (2)アーリア系の ◆ヤペテはアーリア系民族の祖とされる。

 Japhet(Japheth)はスペイン語では Jafet (ハフェッ)であるが、こんな名前も聞いたことがない。
 
 さて、アマダー選手の容貌は典型的なメキシコ人メスティソのようで、100%アーリア系とは言いがたい。となると、アーリア人の祖と言われる Japhet (Japheth)の名がアマダー選手にふさわしいのかどうか……。

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東北楽天イーグルスのアマダー選手

2018-02-06 14:20:58 | 名前
 2017年のシーズンに活躍したラテンアメリカ出身のプロ野球選手を数人残していた。
 まずは、東北楽天イーグルスのアマダー選手。体重135キロで、日本プロ野球史上最重量らしい(幕内力士の平均体重は164キロぐらいなので、135キロでは軽量である)。
 
 メキシコ出身で、フルネームはウィキペディア「ジャフェット・アマダー」によると、「ジャフェット・イシドロ・アマダー・エルナンデス」(Japhet Isidro Amador Hernández)。
 個人名は Japhet Isidro、父の父姓が Amador、母の父姓が Hernández である。母の父姓の Hernández については前回のペタジーニ選手の項で述べたので、ここでは触れない。
 個人名は Japhet と Isidro の2つであるが、まず Isidro について述べる。この名前はコスタリカでもペルーでもなじみがある。ただし、個人名としてではなく、地名としてである。Isidro の前に San がついた San Isidro という地名である。小学館『西和中辞典』には“San Isidro Labrador”(聖農夫イシドロ)についての説明が記載されている。それによると、この聖人は1070?-1130年の人で、スペイン Madrid の守護聖人で、その祝日は5月15日である。「Laudate 聖人カレンダー」にはより詳しく紹介されている。
 
 コスタリカでもお祭りがあるが、その様子については「サンホセ(4)サンホセ市郊外の祭り San Isidro Labrador」をご覧いただきたい。
 Labrador は形容詞としては「農業の、農民の、(牛・馬などが)労役に適した」という意味で用いられるが、名詞としては「農場主、自作農、農場労働者、農民」の意味になる。この語は、地名 Labrador(北米のラブラドル半島)として英語などで借用されている。犬好きの人には「ラブラドールレトリバー」としてなじみがあるだろう。
 Isidro を isidro と、小文字で始めると、普通名詞「お上りさん」の意味になる。スペイン Madrid で用いられて、祭日などに首都に出てくる地方の人を指すそうである(小学館『西和中辞典』。
 アマダー選手はバハ・カリフォルニア州の出身なので、メキシコシティーのお祭りを見に行けば、Madrid のスペイン人からは「お上りさん」(isidro)と呼ばれることになりそうである。 

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ヤクルト・スワローズや読売ジャイアンツなどで活躍したペタジーニ選手

2018-02-05 16:15:05 | 名前
  今回はヤクルト・スワローズ、読売ジャイアンツなどで活躍したペタジーニ選手。ずいぶん年上の奥さんがいたことでも話題になっていた。
 
 そのペタジーニ選手。ベネズエラ出身で、DeNAのラミレス監督、同じくDeNAのロペス選手、元西武などのカブレラ選手と同郷である。
 フルネームは「ロベルト・アントニオ・ペタジーニ・エルナンデス」(Roberto Antonio Petagine Hernández)。個人名が Roberto Antonio で、Petagine が父の父姓、Hernández が母の父姓である。
 個人名は2つともよくある名前で特に言及することもあるまい。父の父姓である Petagine は後回しにして、母の父姓の Hernández から片付けよう。
 シアトル・マリナーズのエースもベネズエラ出身の Hernández 選手で、こちらは「ヘルナンデス」とカタカナ表記されているが、これは英語読みで、スペイン語では h は発音しない。スペイン語としては「エルナンデス」が正しい。“Historia Apellidos”によると、Hernández 姓はスペインでは13位。世界的にみると、絶対数ではメキシコ、人口比ではニカラグアに多い。
Hernández は“hijo de Hernán o Hernando”(エルナンまたはエルナンドの息子)の意味である。よく似た姓に Fernández があるが、こちらの方が多く、スペインでは第4位である。
 さて、父の父姓である Petagine はカタカナ表記では「ペタジーニ」だが、これは英語読みである。スペイン語なら、「ペタヒーネ」と発音しなければならない。Petagine をいつものように“Historia Apellidos”で検索してみたが、ヒットしなかった。Destrade 同様、外国起源のようである。イタリア語っぽいので、イタリア語版の yahoo で検索したら、“CodiceInverso.it”というサイトに Petagine 姓が出てきた。イタリア語ならば、カタカナ標記は「ペタジーネ」が正しい。このサイトによると、イタリア全土で Petagine 姓の家族は32だそうで、珍しい部類ではなかろうか。
 中南米におけるイタリア移民はスペイン・ポルトガル系ほど多くはない。アルゼンチンには比較的イタリア系が多い。サッカーのメッシ(Messi)はイタリア系である。コスタリカにも「○○リーニ」というイタリア系の姓を持つ人もいた。ペタジーニ選手のご先祖様もイタリアからベネズエラに流れ着いたのであろう。
 ちなみにベネズエラ(Venezuela)という国名は「小ベネチア」という意味で、イタリアにゆかりがある。ただし、名づけたのはイタリア人ではなく、スペイン人だそうである。
 小学館『西和中辞典』には、「マラカイボ湖畔の町がイタリアのベネチアに似ているのでスペイン人が『小ベネチア』と名づけ、後に国名となる」とある。

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元西武ライオンズのカブレラ選手

2018-02-04 15:29:49 | 名前
 西武ライオンズ、オリックス・バッファローズ、ソフトバンク・ホークスで活躍したのはカブレラ選手。
 
 シルベスター・スタローン顔負けの腕っ節である。ウィキペディア「アレックス・カブレラ」によると、フルネームは「アレキサンダー・アルベルト・カブレラ」(Alexander Alberto "Alex" Cabrera)。個人名が Alexander Alberto で、愛称が Alex、姓が Cabrera ということだろうが、母の父姓が不明である。スペイン語版ウィキペディア“Álex Cabrera”に当たってみたが、やはり母の父姓は載っていない。
 カブレラ選手の出身はベネズエラであるが、母の父姓はあまり使われないのだろうか。
 個人名の Alexander は横浜DeNAベイスターズのラミレス監督と同じなので、ここでは触れない。
Alberto は英語の Albert に相当する名前で、こちらもごく一般的な名前である。姓の Cabrera は“Historia Apellidos”によれば、スペインにおける姓のランキングは60位。全然珍しい姓ではない。世界的な分布を見ると、絶対数ではメキシコ、人口比では北マリアナ諸島に多い。
 個人的には、野球選手に Cabrera 姓がやたらと多いような印象を持っている。
 Cabrera 姓は普通名詞 cabra 「雌ヤギ」に由来するようである。そこから cabrero (ヤギ飼い、ヤギの番人)という名詞が派生している。cabrera はその女性形である。Cabrera に関連する言葉については「雌ヤギ」を参照願いたいが、俳優の Leonardo DiCaprio の姓、DiCaprio も Cabrera と関連があるのである。
 cabra から派生した言葉に cabrón というのがある。本来は「雄ヤギ」の意味だが、「女房寝取られ男」の意味でよく使われている。間違ってもカブレラ選手に“Cabrera Cabrón”と、野次を飛ばしてはいけないことは「コキュ」の項でも触れてある。
 
 Cabrera が cabra に由来することは、某 Cabrera 家の紋章にヤギの絵が描かれていることからも分かるだろう。
 最後に、カブレラ選手についてのトリビアを。ウィキペディア「アレックス・カブレラ」によると、西武ドームの入り口横に「カブレラ地蔵」なるものが置かれていたそうな。
 
 ハマの大魔神にちなむ「大魔神社」が某駅の構内に設置されていたこともあるが、仏教または神道を信仰していなくても、日本では神様、仏様扱いされるのである。
 スペイン語版ウィキペディア“Alex Cabrera”によると、ニックネームは“el Samurái”で、国籍はベネズエラと日本の2つになっているが、日本版ウィキペディア「アレックス・カブレラ」ではベネズエラだけである。カブレラ選手が日本国籍を取得したという話は聞かないが、真相はどうなのだろうか。
 カブレラ選手はヒーローインタビューで英語で答えていたが、スペイン語訛りがひどくて閉口した記憶がある。そのころから、ラテンアメリカ出身の選手が多くなりかけていたが、通訳は英語だけだったのだろうか。 


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Destrade 姓

2018-02-01 21:26:12 | 名前
 
  外堀の個人名 Orestes、内堀の母の父姓 Cucuas を片付けたので、いよいよ本丸の父の父姓である Destrade の攻略に取り掛かる。
 いつものように“Historia Apellidos”を調べてみるが、これまたヒットしない。母の父姓である Cucuas もヒットしなかったが、父母の父姓の両方ともヒットしなかったのは初めてである。
 いろいろと調べているうちに“Namespedia”というサイトに行き当たった。
 それによると、Destrade は姓ではなく、個人名としても使われているケースがある。ただし、それは1%で、残りの99%は姓として使われている。
 Destrade が姓として使われているのは5カ国である。“Historia Apellidos”ではヒットしなかったが、スペインにもほんの僅か、いるようである。
 

Destrade 姓のほとんどはフランスに見られる。ということは、Destrade 姓はフランス起源と見てよさそうである。フランス語読みすれば、「デストラード」だが、destrade という普通名詞は手元の辞書には見当たらない。しかしながら、estrade という言葉なら二つある。一つは「《古》道」で、これはスペイン語の estrada に相当する。もう一つは「(部屋・屋外などに設けた)壇、高座」という意味である。
 スペイン語の estrada は「野道、細道」という意味で、姓としても使われている。“Historia Apellidos”によれば、スペインでのランキングは399位で、多くはなくても、珍しくはない。絶対数ではメキシコ、人口比ではグアテマラに多い。そういえば、フィリピンの大統領にも元映画俳優で、「フィリピンの勝新太郎」とも呼ばれた Estrada がいた。
 
 Destrade に戻るが、どうもこれは Despaigne が D'Espaigne だったと推測されるのと同じように、もとは D'Estrade だったのではないだろうか。手元のフランス語辞典の estrade を見てみると、batteur d'estrade という熟語が見つかった。意味は次のとおり。
 1)【軍】斥候  2)《俗》放浪者  3)追いはぎ
 本来の意味は「斥候」で、「斥候」を任務としていた兵士がこれを姓にしたのではないだろうか。「放浪者」、「追いはぎ」を職業(?)としていたものが名乗ったとも考えにくい。ニックネームとして呼ばれていたのが姓になることはあるにはあるが。

 さて、フランス起源と考えられる Destrade 姓がキューバにあることについては、同じくフランス起源の Despaigne と同じルーツを辿ってキューバにたどり着いたものと考えられる。
 フランス人がフランス植民地であるハイチに渡り、奴隷を使って農園を経営していたが、革命勃発でキューバに逃れた。キューバで奴隷として使われていた黒人もその後 Destrade 姓を名乗るようになったのではないだろうか(「Despaigne 姓の起源」参照)。
 最後にフランス語の“batteur d'estrade”(斥候)に関連したスペイン語表現には“batir la estrada”(【軍】偵察する)というのがある。こちらはフランス語では“battre l'estrade”という。スペイン語の動詞 batir は英語の battle, combat の関連語である。 
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