スパニッシュ・オデッセイ

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Destrade 姓

2018-02-01 21:26:12 | 名前
 
  外堀の個人名 Orestes、内堀の母の父姓 Cucuas を片付けたので、いよいよ本丸の父の父姓である Destrade の攻略に取り掛かる。
 いつものように“Historia Apellidos”を調べてみるが、これまたヒットしない。母の父姓である Cucuas もヒットしなかったが、父母の父姓の両方ともヒットしなかったのは初めてである。
 いろいろと調べているうちに“Namespedia”というサイトに行き当たった。
 それによると、Destrade は姓ではなく、個人名としても使われているケースがある。ただし、それは1%で、残りの99%は姓として使われている。
 Destrade が姓として使われているのは5カ国である。“Historia Apellidos”ではヒットしなかったが、スペインにもほんの僅か、いるようである。
 

Destrade 姓のほとんどはフランスに見られる。ということは、Destrade 姓はフランス起源と見てよさそうである。フランス語読みすれば、「デストラード」だが、destrade という普通名詞は手元の辞書には見当たらない。しかしながら、estrade という言葉なら二つある。一つは「《古》道」で、これはスペイン語の estrada に相当する。もう一つは「(部屋・屋外などに設けた)壇、高座」という意味である。
 スペイン語の estrada は「野道、細道」という意味で、姓としても使われている。“Historia Apellidos”によれば、スペインでのランキングは399位で、多くはなくても、珍しくはない。絶対数ではメキシコ、人口比ではグアテマラに多い。そういえば、フィリピンの大統領にも元映画俳優で、「フィリピンの勝新太郎」とも呼ばれた Estrada がいた。
 
 Destrade に戻るが、どうもこれは Despaigne が D'Espaigne だったと推測されるのと同じように、もとは D'Estrade だったのではないだろうか。手元のフランス語辞典の estrade を見てみると、batteur d'estrade という熟語が見つかった。意味は次のとおり。
 1)【軍】斥候  2)《俗》放浪者  3)追いはぎ
 本来の意味は「斥候」で、「斥候」を任務としていた兵士がこれを姓にしたのではないだろうか。「放浪者」、「追いはぎ」を職業(?)としていたものが名乗ったとも考えにくい。ニックネームとして呼ばれていたのが姓になることはあるにはあるが。

 さて、フランス起源と考えられる Destrade 姓がキューバにあることについては、同じくフランス起源の Despaigne と同じルーツを辿ってキューバにたどり着いたものと考えられる。
 フランス人がフランス植民地であるハイチに渡り、奴隷を使って農園を経営していたが、革命勃発でキューバに逃れた。キューバで奴隷として使われていた黒人もその後 Destrade 姓を名乗るようになったのではないだろうか(「Despaigne 姓の起源」参照)。
 最後にフランス語の“batteur d'estrade”(斥候)に関連したスペイン語表現には“batir la estrada”(【軍】偵察する)というのがある。こちらはフランス語では“battre l'estrade”という。スペイン語の動詞 batir は英語の battle, combat の関連語である。 
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