亡くなられた須田一政さんに頂いた年賀状が出て来た。この世代のちゃんとした方々を私のような雑な人間は見習わなくてはならない。月刊太陽の人形愛特集で撮影に見えたのが、須田さんでびっくりした話は亡くなられた時に書いた。写真家と言う物はこんな瞬間を撮れる物なのか、と自分が被写体となり恐れいった。撮影も終わり、お話しさせていただいた時に、発表して間がないオイルプリントをついお見せした。個展では、始めて目にする物に対してこれは一体何ですか?という、そこから先に進まない、来廊者の様子にかなり落胆していたので、須田さんなら、とつい調子に乗ってしまったが、とても面白がっていただき、その後個展の案内を頂くようになり、須田さんのチャレンジ精神に感服する事になる。 それから幾年月。被写体から陰影を無くした日本画的アプローチを始めた訳だが、これまたオイルプリントを発表した当時の状況と似かよっている。それになにより表現、手法は全く異なるが再び”これは絵なの写真なの?“である。そこで須田さんなら、と十年以上ぶりに『ピクトリアリズム3』のお知らせメールを差し上げたら「体調不良で最近は都心にも出ないが、面白そうなので行きます。」というメールをすぐに頂いた。やっぱり須田さんだ、と喜んだが、それきりになってしまった。今思うと来ていただいても青木画廊の階段は厳しかったかもしれない。
タウン誌深川】〝明日出来ること今日はせず〟連載第16回『トラウマ』